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宇宙要塞アマテラス  作者: 川越トーマ
16/20

忘却

「はじめまして、ボクはフランカ・ホフマン。地球連邦宇宙軍の軍医だ。君は?」

 金属フレームのロイド型眼鏡をかけたフランカ・ホフマン中尉が、セシルさんに優しく話しかけた。まるで初対面のように。

 ドクター・ホフマンの薄茶色の瞳は、相変わらずセシルさんの翡翠の瞳を直視しておらず、ぼんやりと胸元あたりに視線を送っている。普段はコミュニケーションスキルに問題のある困った性癖のように思えていたが、こういう事態の場合は相手に細かい心の動きが知られないで済むというメリットが際立つ。

 通信装置で連絡はつかなかったが、この状況を予期していたかのようにドクター・ホフマンは俺たちのところに現れた。

 彼女だけではない。ある異変が発生したため、アシナ曹長やナザロフ軍曹、ブルドックのような下士官や痩せた兵士や小柄な兵士など、総勢十八人が、血で赤黒く汚れた反物質保管庫の扉の前に集まっていた。

 ある異変とは、セシルさんの記憶障害ではなく、宇宙要塞アマテラス全体に広がっているネットワーク障害だった。通信装置も使えなければ、要塞各所に設置した監視カメラやセンサーからの情報も取れない。

 いつもは下士官たちの肩にとまっている猛禽類タイプのメタルクリーチャーも軒並みスリープモードに移行していて、翼をたたみ身動きしなくなっている。そのため、下士官の多くが、仕方なく赤ん坊でも抱くようにメタルクリーチャーを胸に抱えていた。

 そうした異常に驚いた兵たちは、状況を把握しようと、とりあえず反物質保管庫前に集まってきたというわけだ。

 しかし、彼らは、ネットワーク障害とは別の深刻な事態に直面することになった。

「自分はセシル・ミュラー。地球連邦宇宙軍士官学校の一回生です。ここは宇宙要塞マリナではないのですか?」

 セシルさんが士官学校に入学したのは三年前の話だ。

 理由はわからないが、セシルさんは、ここ三年間の記憶を失っているらしい。

 俺たちは不安と絶望の淵に叩き落とされた。

「残念ながら違うよ。ここは地球から見ると太陽の向こう側、地球から最も遠い宇宙要塞アマテラスだ」

「なぜ、私は、そんなところに?」

「君は事故に遭ったんだよ。宇宙要塞マリナの宇宙港で、味方の宇宙駆逐艦に搭載する予定のミサイルの誤爆事故に」

「えっ?」

 驚いたのは、セシルさんだけではない。俺たちもだ。

 ちょうど俺が、この宇宙要塞アマテラスに赴任した頃、宇宙要塞マリナでそんな事故があったことは覚えている。宇宙港の作業員のほか、宇宙港を見学していた士官学校の学生数人が死傷した大事件だ。

「その事故で、君は頭部を負傷し、記憶障害を抱えることになったんだ。今は、あの事故から三年経っている。そして、あることがきっかけで、君は三年間の記憶を一時的に失っているんだ。本来は、みんなに聞こえるようなところで話すことじゃないんだけど、状況が状況だから勘弁してね」

「三年? 嘘ですよ。そんなこと……」

 セシルさんの瞳は、すっかり怯えの色に染まっていた。

 無理もない。

 優しそうな軍医は嘘を言っているようには見えないし、目の前をむさ苦しい兵士たちが取り囲んでいる。そして、見知らぬ場所は、床といい、壁といい、血で赤黒く汚れている。

「受け入れられないのは無理ないけど、セシル・ミュラー准尉は、今では宇宙要塞アマテラスの戦闘指揮官だよ」

「治るんですか? 軍医?」

 横から口を挟んだアシナ曹長の大きな目は、不安で曇っていた。

「彼女が、この三年間の記憶を取り戻せるかという意味なら、治るよ。彼女の不調の原因は、ネットワーク障害だ。それさえ復旧すれば……」

「なんで、ネットワーク障害が原因で記憶喪失になるんですか!」

 話の内容が理解できず、俺は思わず大きな声を出してしまった。

 セシルさんは人間だ。コンピューターじゃない!

 コンピューターネットワークの障害程度で俺のことを忘れてしまうなんて納得できなかった。

 俺が大声を上げたことで、セシルさんは、さらに怯えたように両手を握りしめ、背中を丸めてビクンと震えた。

 俺は自分のダメさ加減に嫌悪感をもよおした。

「ごめんなさい。大きな声を出して」

 俺はセシルさんに向かって頭を下げた。彼女も、おどおどと頭を下げる。

「頭部に重傷を負ったセシル・ミュラー准尉を救うためには、開発中の最新技術が必要だったんだよ。第四世代のブレインAIインターフェースという技術がね」

 俺の頭の中に、朝の訓練の最中にヤンが話していた内容が蘇った。

『今、開発中の第四世代ブレインAIインターフェースは、記憶の全てをクラウド上の量子コンピューターにバックアップできるようになるらしいじゃないか。手足を義手にしても人間だけど、脳を人工物に入れ替えても人間なのか?』

 俺の目の前に黒い幕が下りたようだった。

 周囲に視線を巡らせると、薄闇の中でヤンは哲学者のような気難しい顔に嫌悪の色を浮かべていた。

 アシナ曹長は太い眉の下の大きな目を見開き、黒いショートヘアのコーエン兵長は呆気にとられたような表情を隠さなかった。

「第四世代のブレインAIインターフェースは、まだ実用化されていないはずでは? 准尉はモルモットにされたんですか?」

 プラチナブロンドのナザロフ軍曹が静かな声でドクター・ホフマンを問い質した。青い瞳がドクター・ホフマンを非難するように、冷たい光を放っている。

「他に彼女を救う術がなかったらしいからね。彼女は脳の機能の一部を失い、エピソード記憶を長期保存できなくなったんだ。事故後の彼女のエピソード記憶は、軍の量子コンピューターネットワークの中だ」

 俺の記憶は、今ここにいる生身の女性の頭の中にはなく、別の場所に存在するコンピューターの中に電子データとしてしか存在しないということになる。そんなこと認められるか!

「で、ネットワーク障害の原因は何ですか?」

 ブルドックのような下士官が、俺の感傷などお構いなしに、苛立ちを押し殺して質問した。

 確かに、今、必要なのは、俺の感傷への配慮などではない。

 ホフマン中尉は目を伏せながら、すまなそうに応じた。

「ネットワーク障害の原因は敵の攻撃だよ。さっきの戦闘で我が軍のブレインAIインターフェースの現物が奪取された。それで我が軍のネットワークで使用している無線通信の暗号キーやら何やらが解析されたんだと思う。それについてはボクのコンピューター技術者としての能力が敵に及ばなかったせいだ。ごめん。ある程度、予測して対策してたんだけど防げなかった。死亡した兵士のノードはネットワークに入れないように個体識別符号をフィルタリングしてたんだけど……」

 ホフマン中尉は一気に発言すると、力なく俯いた。

 内容が難しいので、俺はホフマン中尉の話が正確には理解できなかった。

「わが軍のブレインAIインターフェースが奪取されたって、どうやって?」

 話の冒頭部分で引っかかったコーエン兵長が不思議そうに左右を見回した。

 それに答えたのはアシナ曹長だった。

「首だよ」

「へっ?」

 コーエン兵長が間抜けな声を漏らした。

「第二警備小隊のハミルトン中尉の首が見つからないって言ってただろ」

 言っていたのは、他ならぬコーエン兵長自身だ。

「あっ、あれかぁ。確かに頭の中にブレインAIインターフェースが入ってるよな」

 敵は、ハミルトン中尉の頭部を解剖し、ブレインAIインターフェースを取り出して、内部に保持している情報を解析したのだ。

 その行為を想像して胸が悪くなったが、あの時、ホフマン中尉が暗い表情をしていたのは、これを予想していたからだと、ようやく合点がいった。

「それで、ネットワーク障害の復旧見込みは?」

 ブルドックのような下士官が追い討ちをかけるように、ホフマン中尉に質問する。

「ボクとしても全力は尽くすけど。多分、ウィルスやワームといわれる不正プログラムが原因だから、ボクの能力じゃあ一時間や二時間では復旧できないと思う」

「先程、敵は六時間の猶予を与えると言っていたが、障害が復旧する前に敵が攻めてくる可能性が高い」

 ナザロフ軍曹が眉間にしわを寄せた。

「ネットワーク障害が原因で情報連携もできなければ、メタルクリーチャーも使えない。敵にしてみれば、確かに今が攻撃のチャンスだな」

 ブルドックのような下士官がうなり声を上げた。

「ホフマン中尉。ミュラー准尉が回復するまでの間、臨時で指揮を執ってもらえますか? ここで士官はあなただけだ」

 アシナ曹長が珍しく不安に押しつぶされそうな情けない表情を浮かべていた。

 ブレインAIインターフェースが不調に陥っている影響もあるのだろうか?

 ブルドックのような下士官や痩せた兵隊が、アシナ曹長とホフマン中尉の間で視線を行き来させている。

「それができないことは、アシナ曹長自身がよく知ってるはずだよ。軍の規則では、技術士官は戦闘における指揮官になることができないんだ。だいたいボクに戦闘指揮ができると思う? もし、できるんだったら、ミュラー准尉よりもボクの方が名目上階級が上なんだから、すでに指揮を執ってるはずだろ?」

「他に士官はいないから、下士官で最先任となると……」

 そう言いながら、コーエン兵長がアシナ曹長に視線を向けた。

「下士官は士官を補佐するのが仕事だ。みんなの命を預かるなんて、自分には荷が重すぎる」

 こんな情けない表情のアシナ曹長は初めて見た。

 俺にとってアシナ曹長は、今まで頼もしい父親のような存在だったのに。

「そんなこと言ってる場合ですか」

「じゃあ、どうすんだよ」

 他の小隊の連中が次々に不満を口にした。

「あの……」

 それまで、不安そうにしていたセシルさんが何かを覚悟したように顔を上げた。

 目には強い光が戻っている。

「私がやります。仕事を途中で投げ出したりしたら父に叱られます」

「えっ?」

「無理だろ!」

 コーエン兵長やヤンも懸念の声を漏らした。

 俺は、参謀本部長からもらったメッセージを思い出して胸が痛くなった。

 彼女はこんなにも父親の期待に応えようしているのに、その父親は、すでに今の彼女を人間とは認めていない。

「どう思います? ドクター」

 ナザロフ軍曹が青い瞳をドクター・ホフマンに向けた。

「引き継いだ話だと、ミュラー准尉の記憶障害は、エピソード記憶に限定されていて、意味記憶や手続き記憶は正常らしい。だから、ここ三年間の個人的な体験は思い出せないけど、士官学校で得た知識や身につけた技能、例えば剣術の腕前とかは失われてないはずだよ。問題は新たな長期記憶を獲得できないことだね。どれくらいの間隔かは正確にはわからないけど、現在の状況について、何度も同じことを教えなきゃいけなくなると思う」

 ホフマン中尉は、指揮官として務まるかどうかの評価は脇において、単純にセシルさんの状態を説明した。

「そんな状態じゃあ!」

 ブルドックのような下士官が不満げに大声を発した。

 しかし、彼が多くを語る前に、セシルさんが胸を張って彼の発言を遮った。

「皆さんの不安な気持ちはよくわかります。だから、アシナ曹長、私を全力で補佐しなさい」

「サー・イエス・サー!」

 アシナ曹長がよく響く声で見事な敬礼を返した。その勢いで周囲の不満のつぶやきを強引に押さえつける。

「では、改めて今の状況を教えてください」

 周囲が静まったタイミングで、セシルさんはアシナ曹長を促した。


「じゃあ、ボクはネットワークの復旧作業に専念するね」

「よろしくお願いします」

 ドクター・ホフマンが赤黒く血で汚れた反物質保管庫前から去っていった。

 反物質保管庫前で飛び道具は使わないというのは、俺たちのルールであって、敵が必ずしも、そのルールに則って戦ってくれるとは限らない。それはすでに先ほどの戦いで思い知っていた。

 元々は、鏡面装甲が施されたメタルクリーチャーを自律的に動く光学兵器用の盾として活用していたのだが、ネットワーク障害の影響で、今は全てスリープモードになってしまっている。豹、犬、狼、鷹、烏といった動物の彫像と化して付近の床に鎮座して動かない。

 そこで、俺たちは、最近はほとんど使用しなくなっていた大盾を武器庫から引っ張り出した。大盾は緩やかな曲面を鏡面コートした幅七〇センチ、縦一四〇センチほどの大きさで、レーザーガンを中心とした対人兵器から身を守るためのものだ。カーボンナノチューブ、磁性流体、ポリカーボネートを主な材料に、軽くて丈夫に仕上げてある。細いスリットのような覗き窓から正面の様子を窺うので、視界は狭い。

 セシルさんを含めた俺たち十七人は、前衛一〇人、後衛七人に分かれ、前衛が盾を持ち、反物質保管庫を背に弧を描いて立っていた。俺やヤンなど一般兵が前衛、士官・下士官・兵長が後衛だ。

 ナザロフ軍曹やブルドックのような下士官は、光学迷彩の兵隊に対応するため、ペイント弾を発射するハンドガンを構えている。

 そして、本当に最悪の場合に備えて、プラスチック爆弾を反物質保管庫の扉に張り付け、起爆装置をセシルさんが握っていた。もしも、敵が反物質を手中に収めるようなことがあれば、自爆するためだ。

 敵の戦力、戦術を想定して、考え得る準備は全て整えていたが、やはり、一番の問題は相手がいつ攻めてくるかわからないことだった。

 ネットワーク障害の影響で、宇宙輸送艦ケープタウンとの通信、要塞内での兵員間の通信、監視カメラの映像の入手など、およそ情報という情報が遮断された状態だ。

 今、この場で目に見えるもの、聞こえるもの、それが俺たちの把握できるすべてだった。

 ネットワーク障害が回復すれば、監視カメラの映像を入手したりできるようになるので、とりあえず、それまでは集中力を切らさないようにして凌ぐしかない。辛い時間だ。

 俺は、前衛の中央付近で、大盾を床に立て、ヤンの右側に並んでいた。俺の右側は別の小隊出身の痩せた兵隊だ。

 とりあえず、やることがないと、どうしてもいろいろなことに思いを馳せてしまう。

 そして、やはり俺の心を占領するのは、俺の後ろに佇んでいるセシルさんだった。

 今日、出会ったばかりなのに、いろいろなことがあった。二人きりで話したこともあるし、プライベートな部分に踏み込んだりもしている。彼女にとって、どうせ俺は部下の一人にすぎないだろうが、俺にとっては特別な存在になっていた。だから、彼女の頭の中から俺の存在がきれいさっぱり、なくなってしまったのは、正直とてもつらかった。

 だが、彼女は死んだわけでもないし、軍医の話によれば回復する見込みもあるということだ。最悪、記憶が戻らなかったとしても、たかだか一日分の記憶だ。忘れられてしまったのは残念だが、また、一から覚えてもらえばいいと俺は、必死で自分に言い聞かせた。

 それにつけても記憶を失った後の彼女の言動に触れ、俺が改めて認識したのは、セシルさんは、かわいらしい女の子というより、魅力的な人間、敬慕するに足る上官だということだった。きっと本人が一番不安であるに違いない。それなのに彼女は誰に依存するでもなく、自分の務めを必死で果たそうとしていた。

 俺は元々の感情もあり、セシルさんの指揮に完全に従うつもりでいたが、兵たち全員が同じ思いを抱いていたのかといえば、そうではなかった。

「はぁ~、准尉が指揮を継続とか、いくらなんでも、無理がありすぎだろ」

 鏡のように光を反射する大きな盾を抱えながら、俺の左隣に立っていたヤンが、俺にだけ聞こえるように小さな声でつぶやいた。

 ヤンは元々、ブレインAIインターフェースに良い印象を抱いていない。こうして問題が顕在化してしまうと、悪感情は増幅しているに違いない。

「曹長が補佐するから、大丈夫だ」

 そう言って、俺はヤンのみならず自分自身をも励ましたが、俺のアシナ曹長に対する信頼は揺らいでいた。あの時、彼がもっと積極的であれば、直近の記憶を失った状態のセシルさんが指揮を執るとは言わなかったはずだ。

「あ~あ、早く来ねえかな」

 俺とヤンが小さな声でブツブツとつぶやいていると、背後からコーエン兵長の大きな声が聞こえてきた。相変わらず、不敵な発言だ。

「まぁ、どうせ来るんなら早く来てほしいという気持ちはわかるな」

 意外なことに、普段寡黙で真面目なナザロフ軍曹が、コーエン兵長の大きな独り言に応じた。

 考えすぎかもしれないが、二人とも兵たちの緊張を解こうとしているような気もする。

「そう言えば、軍曹。レベル六はどうでした?」

 コーエン兵長は突然、今日の訓練の様子をナザロフ軍曹に尋ねた。

 実際に見ていないので仕方ないが、なんて聞きづらいことを平然と聞くのだろうと俺は内心ヒヤヒヤした。なにせ、軍曹はレベル六の相手に瞬殺されているのだ。

「ダメだったよ。結局、あの人を超えられなかった。あの人を超えるために双剣を選んで剣術に励んできたのにな」

 珍しくナザロフ軍曹は嫌な顔もせずに応じているようだ。

 そして、口ぶりから察するに、彼はレベル六の一般兵のモデルを知っている。

「まあ、いいじゃないですか。自分たちはアスリートじゃなく軍人ですから。試合よりも実戦の結果で歴史に名を刻みましょうや」

 やっぱりというか、コーエン兵長は立派な『武人』だった。

「そうだな。何人の敵を倒せるか、挑戦してみよう」

「おっ、いいっすね」

 とても近代戦とは思えない。まるで中世の武将の様な会話だ。

 だが、それはある意味俺たちの状況を正確に反映しているものとも言えた。

 俺たちが自分たちの強みを生かし、相手が戦力を十分発揮できないように、反物質保管庫前を戦場に設定しているため、敵の装甲擲弾兵は、高出力レーザーライフルや電磁誘導ライフル、小型ミサイルなどの強力な火器は使用できないはずだ。

 使用される可能性がある火器は威力の弱いレーザーガンだが、それは盾で防ぐ予定になっている。そのため、戦いの様相は、銃や爆弾を主体とした近代戦ではなく、中世の合戦を思わせる斬り合いになるはずだ。

「キーン少尉たち、どうなったかな」

 コーエン兵長からの連想で思い出したのか、ヤンが宇宙輸送艦ケープタウンの乗員の安否を気にしてつぶやいた。

「きっと、元気だろ。ある意味大切な人質だし」

 敵の仕掛けた攻撃でネットワーク障害が発生したことにより、メタルクリーチャーの無力化や情報連携の破綻など、俺たちは大幅に戦力が低下していた。

 しかし、敵も通信機器を使用して、俺たちを脅迫することができなくなっている。これはある意味、敵の誤算だったろう。

 もっとも、俺たちも、敵が目の前に来るまで、『自爆してやる』と脅すことができなくなったので、お互い様だということもできる。

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