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三話 再会

 教室に戻り席に戻ると武から様子を聞かれる。


「大丈夫だったか? 何かされたのか?」

 おちゃらけたやつだが友達を気にかけることが出来る、割と良いやつである。松下さんと接するとそこらに落ちているイガグリになるんだが。


「なんか僕が松下さんの悪口を言っていたのを聞いたらしくて、問い詰められたよ。全く心当たりは無かったんだけど、謝ったらとりあえずは許してくれた」


「ほへ~災難だな。なんか他の女子の気に障るようなことしたんじゃないか? まぁ素直に謝っといて正解だろうな、何されるか分かったもんじゃない」


「話すのはやめろ。HR(ホームルーム)を始める」

 担任の声で会話が終わる。

 だいぶ余裕を持って学校に来ていたが、いつの間にかそんな時間になっていたらしい。

 担任の先生は今年でちょうど三十歳になる女性教師だ。

 美人だがいつも淡々としていて生徒に興味が無いかのよう。生徒間の問題にもあまり取り合わず、そのため松下さんのような女性天下が平然と成り立っている。


「~~。そうだ、今日から委員会が始まるから放課後、各々の場所へ移動するように、以上」

 話し終えると、すぐに教室を出ていく。無駄にダラダラと話して時間を使わないところは助かっている。


 玄斗は図書委員に入っている。これは押し付けられたわけではなく、元々読書が好きなためやってもいいかと思ったためだ。

 好きな作家は西野圭吾や山川悠介ら。後はライトノベルが大好きである。

 ラノベの新刊を図書委員という立場を利用して、先に借りるのに利用する算段だ。


『キーンコーンカーンコーン』

 本日の最後の授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。

 玄斗は教室を出て、初めての委員会のため図書室へと向かう。


「集まったようですね、では始めます」

 図書委員担当の教師により普段どんな仕事があるのか説明される。

 先輩たちの見本を見せられたりしながら淡々と進んでいく。


 説明の途中で玄斗は周りを見ると、ある存在がいることに気付いた。

 長髪の綺麗な黒髪、少しつり目で何を考えているのか分からない表情。

 そう、あれは玄斗が保育園に通っていた頃に突然告白された班目鏡子(まだらめきょうこ)である。


 昔は玄斗が今よりはるかに女性という存在を怖がっていたのもあり、その突然の告白を断った。

 昔の鏡子は前髪で目が隠れていて表情が見えず、貞子のような見た目をしていた。

 それが今では前髪は目元辺りに切りそろえられ、キリっとした目が覗いて見える。


 あの断った日が最初で最後の会話だったが、玄斗の知っている限りでは今のスタイルになったのは、高校生になってからだったように思う。最初見た時はあまりの変化に驚いたものだ。


「あっ」


 鏡子のほうを見ていた玄斗だが、鏡子も視線に気づいたのか玄斗のほうを向き、目が合ってしまい声を出してしまった。

 見ていたことを気まずく思ってすぐ目をそらしてしまったが、鏡子は玄斗が目をそらす間際、ウインクをしてきた。

 てっきりあんな逃げるように告白を断った自分は嫌われていると思っていたため、その行動にどんな意味が込められているのか分からず動揺した。


「では一通りの業務はこんな感じです。カウンターの当番は週替わりで回していきますので、よろしくお願いします」

 どうやら考え事をしている間に委員の説明が終わってしまったらしい。

 みんな一斉に図書室を出ていく。玄斗は流れが落ち着くのを待つようにその場にとどまった。


「久し振りね、元気にしているかしら?」

 横から玄斗に呼びかけるように発した声に振り向く。

 そこには鏡子がいた。


「あ、え、っと、久し振り……」

 気まずさと動揺でたどたどしく返事をする。


「ふっ、変なの。まぁ考えていることは大体分かるけれど。昔のことは忘れて同じ図書委員同士よろしくね?」

 昔からは想像できない発言量と柔らかな物腰に、本当に鏡子か??と思わされる。


「分かった。よろしく」

 つい素っ気ない返事になってしまったが、鏡子はそれで満足したのか目線を外し、図書室の出口へと歩き出す。


「……ちょっと待って!」


「? なにかしら」

 まさか引き止められるとは思っていなかった様子で、ビックリしながらも足を止め振り向く。


 玄斗はあの時の松下さんの言葉が気になり、こんな機会はなかなか無いと思い、もしもの可能性を考えて一応確認しておく。


「班目さんって松下さんと友達だったりする?」


「鏡子って呼んでいいのよ。んーそっかぁ、なるほどね……どうしようかしら」

 なんてことない質問のはずなのに考える素振りを見せる鏡子。


「私すらも成長の糧にするのも面白いか」

 独り言を少しの間言い、考え終わったのか頷くと再び玄斗に返す。


「そうね、絵莉花とは友達よ。じゃあね」


 考えていた割に、言い終えると鏡子は玄斗が続けて聞く暇もなく、小走りで図書室を出ていってしまった。


「マジか。なんか変な反応も込みで班目さんが松下さんに言った可能性が上がってしまった。だけど僕を恨んでいるような感じでも無かったしどういうことなんだろ……そもそもあの対応すら演技なのか??」


 自分のことを悪く伝えた犯人が見つかったと思ったが、なぜなのかだったり更に疑問が増してしまった。

 今度会った時はちゃんと確認したほうがいいんだろうか、などまた悩まされるのだった。

 





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