二十一話 キョウ
五万字ほどで完結させると言ってから数か月経ってしまいました。
遅くなってしまいましたがGW中にそれを実行する、そう思っていたのですが別のことに時間を取られ申し訳程度の最終日に一話だけ書きあげ。。。
「キョウが班目さんだって!? いやいやいや……なんで知ってるのかは分からないけど、キョウは男の子だし無理があるよっ」
懐かしい名前と玄斗自身が実際に体験し、覚えている大切な思い出の記憶を出され信じてしまいそうになったが、そもそもの性別が違った。
それに本当にそれが事実なのであれば、告白の前に自分がキョウであることを打ち明けるはず。
「まぁ口だけで言っても信じてもらえないわよね……。これでどう? あれから随分と時間も経ったから面影は薄いかもしれないけれど、変わっていない部分もあるはずよ」
鏡子の実際にあった過去のように感情も交えて上手く話せてはいたが、一番の矛盾は言葉だけでは受け入れられなかった。
そこで鏡子はあの時のキョウのように、長い髪を手で持って全て後ろに流して顔のパーツを露わにする。
あの時のような帽子は無いが、髪で半分隠れていた目と眉毛やおでこ。そして、好きな本を思い浮かべて楽し気な表情を作って――。
「っ!?」
玄斗はその目と表情を見て分かった、分かってしまった――。本当に玄斗が知っているままのキョウが、そのまま体を大きくしただけの存在が目の前にいたから。
同じ趣味について語り合い、お互いがあの時唯一の友達として過ごした大切な大切な三か月間。
玄斗はある日から突然図書館へ姿を現さなくなったキョウを心配していた。もしかしたら嫌われるようなことを何かしたか……心当たりは無かったがキョウは友達に何も言わずそのまま消えてしまうような、非情な人物では無かった。
そのため自分を責め、キョウの身に何か起きたのではと心配し、やがて半年も会えず情報も得られないと、キョウを忘れることにした。
それはこれ以上自分が傷つかないための逃げ道。この時の玄斗は大好きな読書をしていても全く頭に入ってこないほど、そのことで頭が一杯で心も弱っていた。
「どうやら信じてもらえたみたいね、良かったわ」
玄斗の驚いた表情を見て、無邪気な笑顔から安心しホッとした笑顔へと表情を変えた。
「確かにキョウだ……忘れようとしたはずだけど忘れられる訳がないっ。じゃああの日から姿を見せなくなったのは、僕が告白から逃げて気まずくなったから……」
「まぁ……そうね」
玄斗は会いたかった相手に会えて嬉しいという感情よりも、自分がきちんと話を聞かなかったせいで本来得られるはずだった時間を捨てることになった罪悪感が勝っていた。
陰で悪口を言っていた相手が鏡子だと判明したが、それも玄斗の女性恐怖症を治すため。
急に押し寄せてきた情報に頭が追いつかない。
「ご、ごめん、僕……」
「そんなに気にしなくてもいいのよ。私もあの時はパニックになっちゃって、自分がキョウであることを打ち明けるつもりが急に告白しちゃって。話したことも無い女から突然告白されれば動揺するのは当たり前よ、あの時はごめんなさい」
鏡子も自身のミスを謝ったが、今の玄斗にはその言葉も上手く入っていなかった。
「急に頭痛がしてきたから帰らせて……。一度落ち着いて考えさせて欲しい……本当にごめんっ」
「玄斗君!?」「玄斗っ!」
鏡子と絵莉花と委員長の南海、三人をその場に残して玄斗は走り去って行ってしまった。
「あークソッ、落ち着けっての。とりあえず今のは全部が本当の話……でいいんだよな鏡子?」
「えぇ。だからいつぞやの玄斗君が悪口を言ってたってのは嘘だったの、絵莉花と南海さんには迷惑をかけてしまったわ。謝らせて」
絵莉花の問いかけに玄斗の為とはいえ、嘘で二人を傷つけてしまっていたことを反省し、九十度よりも深く頭を下げ謝罪する。
「まーそれはいいんだけどよ」
「私も結果的に良い出会いになったから大丈夫。頭を上げて班目さん」
「ありがとう……二人とも」
何も知らない生徒が見れば間違いなく目を疑ってしまうような光景。
この学校の悪女的立ち位置で何を考えているのすら分からない鏡子の謝罪だが、絵莉花は元々仲が良かったし委員長は玄斗との過去の話などを聞きすんなり受け入れられた。
「鏡子は玄斗のことが今でも好きってことか?」
絵莉花にとってそれが何より、今一番聞きたいことだった。委員長もそれを黙って……だが真剣な顔で返答を待っている。
「そうよ。あの時からずっと……玄斗君のことだけ考えて過ごしてた」
「……なるほどな、よく分かった。とりあえず主役も帰っちゃったし私も帰るわ」
「私も。だけど出来ればまた改めて四人で話す時間が欲しい気がするけど」
「そんな気がするわね。じゃあ……また休み明けに学校で」
残された三人も解散した。それぞれの想いを胸に――。
今日球技大会があったこと、そして蔵前に怒ったこと、そんなことはこの場にいる全員忘れていた。




