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十九話 黒幕

「班目さん?」

「鏡子っ」

 

 玄斗と絵莉花の二人は驚き、委員長はどういうことなんだろうと様子を見ている。


「その噂話に関しては私が説明するわ。悪いのだけれど蔵前君はもう帰ってもらっていいかしら?」


「えっ、でも」


「帰ってもらっていいかしら?」

 笑顔だが圧力を感じる話し方に、蔵前は耐えられず頷いてしまう。

 まだ言いたいことがあったのか未練がましく委員長のほうをチラチラと何度か見るが、やがてとぼとぼと離れていった。


「さて、玄斗君と絵莉花はいいとして南海さんは初めましてね。私は班目鏡子、さっきちょっと触れていたことに関して私が詳しいから説明させてもらうわね」


「あ、はい。えっと、お願いします班目さん」

 よくわからない展開に委員長はとりあえずそう返す。


「そうね、どこから話せばいいのかしら。実は今回蔵前君に、玄斗君が南海さんをたぶらかしているといった様なことを伝えたのは私なの」


『なっ!?』

「どういうことだよ鏡子!」


「それどころか前に玄斗君が絵莉花の悪口を言っていたと伝えたのも嘘だし、南海さんへ玄斗君の名前を書いて手紙を出したのも私だったの、色々とごめんなさいね」


 予想できていなかった事実に三人とも唖然としてしまうが、しばらくすると絵莉花が話し出す。


「鏡子、お前なにがしたかったんだよ。(ウチ)らを騙して弄んで笑ってたのか? 友達だと思ってたのは私だけだったのか? いや友達だったとしても許すわけにはいかねぇぞ」


 鏡子の言ったことを理解すると、絵莉花は怒りの表情で問い詰める。今にも手が出てしまいそうな勢いだ。


「うん怒るのも無理がないと思う。そのせいでこんな事になっちゃったしね。でもこれは玄斗君のためを思ってのことだったの」


 一度深呼吸してから続ける。


「私は玄斗君とは保育園の頃から知り合いだった、それから高校に入るまでは一度も話すことは無かったけれど、私はずっと玄斗君を見ていたわ」


「えーっと?」


「私は保育園の頃に玄斗君に告白したわ。でも断られてしまった。その時のことを玄斗君は詳細に覚えているかしら?」


「い、いや、ごめん」

 その当時は玄斗の女性恐怖症がピークだった時で、女子と話すことは全くできなかった。そんな玄斗だったため鏡子からの告白からも、逃げ出すように断ったのだけ覚えている。


「こ、告白?! 鏡子が!?」

 さっきまでの怒りはどこへやら、絵莉花は別のことが気になりそれどころではないようだ。


「えぇ。おかしいかしら?」


「おかしいってか、想像がつかないっていうか……」


「ふふふ、昔は今の私とは全く違っていたからね。で、その告白を断られた時の言葉が、怖いんですっだったの。私はもちろん怖がられるようなことをしていない、話すような人もいなかったしね。だけど普段から玄斗君を見ていた私はすぐ分かったわ、女性自体が怖いんだって」


「確かにそうだったかも……ごめん」

 断ったことは覚えているが、女性からの告白を詳しく覚えていなかったことを悪く思い謝る。


「でもそれがどう繋がるんだよ」


「私は断られてからも諦めきれず、玄斗君がずっと好きだった。それから私は玄斗君には関わらず、玄斗君が女性と自然に話せるようになるのを待ってたの。多少マシになったけれど、それでも中学を卒業する頃になってもどこかまだビクビクしていて、意識が完全に変わることは無かった。そこで私は荒療治に出ることにした。絵莉花や南海さんを玄斗君にぶつけてどうにか自信をつけられないかって。二人には迷惑をかけてしまったわ、ごめんなさい」


 どう返せばいいのか分からず、数秒の沈黙が流れる。


「僕のことを思ってやった行為だってのはとりあえず理解はしたよ。でもなんで僕のことをそんなに好きでいてくれたの? 高校生になって話すまで、あの告白の時が最初で最後の会話だったよね?」


「ううん、その前に私たちは二人で遊んだりもしたわ、友達もいなかった私の大切な思い出よ」


 必死に思い出そうとするも、全く心当たりがなく焦る玄斗を優しい眼差しで見つめてから、鏡子は過去について語り始めた。






 


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