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十話 モヤモヤ

「はぁ…………」


「おいおい、どうしたよ玄斗」


「これ見てよ」

 委員長から叩きつけられた手紙を見せる。


「玄斗、お前……」

 疑うような目で見てくる。


「いや、違うからね!? これ僕が書いたわけじゃないから」


「分かってるって、冗談だよ笑。いやでもイタズラにしては、どっちに対してもちょっとやりすぎな感じはするけどな」

 一転して真剣な顔で言う。普段はお馬鹿でもこういう切り替えが出来るのが武の良いところだ。


「そうだよね……委員長が悪いって訳じゃなく、誰かの悪意ある行動で勘違いしてるだけだもんね。なんか本当に武と松下さんの時と似たような感じだよね、対象が違うだけで」

 もしやその時と同じ犯人か?とも思うがされる心当たりももちろん無いため、深く考えるのをやめる。

 解決法として絵莉花の時のことを思い出すが、たまたま上手くいっただけで参考にはならない。それに、委員長のことを何も知らない。


 話しの途中で先生の声が聞こえ、授業が開始したためそこで終わる。



「じゃあな玄斗。まぁ委員長なら説明すれば分かってくれるでしょ、誰かさんと違って常識あるし」

 また聞かれたら怒られそうなことを堂々と言う武。もう何か言われたりされたりするのが癖になっているのかもしれない。

 つい一昨日まであんなに落ち込んでいたのに凄いやつだ。


「うん、そうだね。取りあえず言ってみるよ」

 最後の授業だったため帰り支度を始める。終わって委員長のほうを見ると、教室を出ていくところだったので追いかける。


「なんかちょっと急いでる様子だな……早めに終わらせないとそれで怒らせてしまうかも」

 委員長が普段はあまり使うことのない教室のあるほうへ行くのを不思議に思いながらも、角を曲がったところで急いで声を掛けようとする。


「ちゃんと大人しくしているみたいだね。南海さんも高校生になって環境が変わって、また悪いことを考えてたらいけないと思っていたけど、無駄なことだって理解したのかな?」

 委員長が知らない女子生徒と話していた。同じ学年だろうか。

 変な空気を感じて委員長に話しかけるタイミングを逃し、玄斗は盗み聞きするような形になってしまっていた。


「それは……」

 委員長をよく見ると、困っている表情をしながら、拳を強く握り込んでいた。


「そうでも無さそう……か。まぁ南海さんの考えが少数派で、しかも私たち女子のほとんどが望んでないし、迷惑するしで困るわけ。何度も言ってるけど。あなたもその女子なんだし、過去の一つに囚われて意味のない茨の道を進もうとするのはやめるように。じゃあね」

 そう一方的に言い切った女子が去っていき、見えないところまで行くのを確認すると、玄斗は今来ましたの(てい)で出ていく。


「委員長! 探してたんだ」


「椎名君っ、もしかして話を聞いていた?」

 焦った様子で聞いてくる。


「ん? 今来たところだけど……今日なんか誤解があったみたいだから、それを解こうかなって委員長を探してたらここにたどり着いて」


「そう……。あの時はいきなり怒鳴ってごめんなさい。わざわざ名前を書くのもおかしいし、反応で違うってこともなんとなく分かってはいたけど、つい感情が高ぶってコントロールできなくて。もう一度言います、ごめんなさいっ!」


「あっ、そう? いいよいいよ、そういう時もあるよね! うん」

 説明する間もなく委員長に謝られてしまったため、思っていたのと違う展開であたふたしてしまう。


「ありがとう、じゃあこれで解決ってことで。他に私に用事があったりする?」


「いや、大丈夫かな」


「そう、じゃあ私は帰るわね」


「うん、また明日」

 委員長は会話中平静を装っていたが、表情が時折普段と違う、なんだか悔しいような表情を浮かべていたのが気になった。

 あの話していた女生徒が関係しているのかもしれないが、玄斗は自分が関わるのも違うかなとモヤモヤした気持ちでいた。


 


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