採取のおっさん
久々に拙い文章を書いてみました。
よろしくお願いします。
毎日、毎日薬草採取依頼を受け、それをこなしていく。
冒険者だが、冒険はしない。
ただ淡々と作業的にこなして積み重ねていく。
たまに魔物や獣に出くわす事もあるが、それさえも毎日の作業の一部だ。
疲れが溜まってきたと思えば、たまに休む。
そうする事でまた同じ毎日を繰り返すことができる。
そうやって気が付けば、俺はおっさんになっていた。
「すまないが採取依頼の検品を頼む」
ギルドの受付カウンターに依頼書と納品物が入った袋を置く。
「はい。確認して参りますので、少々お待ち下さい」
受付嬢がいつもと同じ言葉を落とし納品物が入った袋と共に奥へ引っ込む。
「おい、おっさん」
突然後ろから声をかけられたので、振り向くと真新しい装備に身を包んだ冒険者になりたてであろう少年が不機嫌そうな表情を隠しもせずに、こちらを睨んでいた。
はて、こんな知り合い居たっけかな?
もし忘れでもしていたら相手に失礼になると思い、自然体を心掛けて返事を返す。
「あぁ、どうも、お久しぶりです」
「いや、初対面だし」
「………」
どうやら知り合いでは無かったらしい。
未来ある若者がこんなしょぼくれたおっさんに何の用があるのだろうかと訝しんでいると彼の方から用件を切り出してくれた。
「なぁ、おっさん、お前なんで採取依頼とか受けてんの?」
「ん?いや、何でと言われても……」
初対面で年上をお前呼ばわりとは中々豪胆な若者だ。まぁ、その豪胆さは嫌いではない。
「あのさー、お前が採取依頼みたいな初心者依頼受けっとさー、俺みたいな初級の冒険者は困るわけよー」
彼は口調とは裏腹に眉間に深いシワを作りながら訴えてくる。
ん?なに?オコなの?オコなの?
「それとも何?おっさん、アンタその歳で自分も初級冒険者だとか?」
「い、いや、初級では無いな……」
なんだろうか、もし俺に息子がいたらこれくらいの年齢であろうか?そんな彼に何故か今、噛みつかれている。
「だったらさー、初級は初級。中級は中級で依頼の棲み分けが必要なんじゃねーの?」
「え?あぁ、そのとうりだ」
あー、なるほど。なぜ彼が噛み付いてきたのかが分かった。
彼は俺がゴリ押しで初級の依頼を掻っ攫っていったと勘違いしているんだ。
「だったらさー」「失礼します」
彼の言葉を遮るように受付嬢が声をかけてきた。
彼はまだまだ言い足りない顔をしていたが優先順位はこちらの方が大事だ。
「あぁ、どうでしたか?」
検品結果を伺う。
「マンゴラドラ五株確認いたしました。これで特級の採取依頼を完了とさせて頂きます。お疲れ様でした」
「あぁ、はい。ありがとう」
この受付嬢はいつもクールで無駄話を挟まずに淡々と仕事をしてくれる。
人と話すのが苦手なおっさんには非常にありがたかった。
さて、俺の用事は終わった。後ろで勘違いをしている少年にひと声かけてから列を離れるとしますか。
「すまないな少年、待たせた。俺はそこのベンチで待っているから君の用事が終わったらゆっくり話を聞こう」
「!」
ビクっと一瞬身体を強張らせる少年を横目に俺は壁際のベンチへと移動して腰を下ろす。
少年はすぐさまカウンターへと向かい、前のめりになりながら受付嬢へと話しかけてた。
が、少年の声が少々……いや、かなりデカイ。まぁ、それだけ少年が焦っているのだろう。
「特級依頼ってなんだよ!?」「あのおっさん、特級冒険者なのか?」「マンゴラドラって抜いたら死ぬ奴?」
と、まぁ、にぎやかなことになっているみたいだ。
採取依頼を受け続けているせいで初級や下級冒険者と勘違いされる事も、喧嘩っ早い奴らに絡まれる事もある。
だが実は、それすらも当たり前の毎日の一部だったりする。
ありがとうございました。