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閑話 現実逃避(ミシュリーヌ視点)

「シェリフィー来たわよ!」

「ミシュリーヌ!? つい最近帰ったところじゃない。地球から連れていった魂の子はどうなったの?」

「レオンね。ミルソユーテに戻ったはいいけど、やっぱり神力もないし何もできることが思いつかないから、しばらくはいいかなと思って」

「確かに何もできることはないかもしれないけど……せめて見守ってあげなさいよ!」

「……でもできることないんだから、見守っててもしょうがないでしょ? 見守るにも神力が必要なのよ。それよりも日本のお菓子が食べたいわ!」


 日本のお菓子は本当に美味しいのよ。どら焼きも饅頭も大福も、どれも絶品だわ! このお菓子を自分の世界で食べたいから日本にできる限り似せた世界にしたのに……

 前の使徒のせいで日本っぽくなくなっちゃったし、それはいいにしても魔物に滅ぼされそうになってるし、なんでこんなことになっちゃったのかしら。

 どうにか助けたいけど今はできることもないし……とりあえず甘いものを食べてから考えればいいわよね!


「甘いものを食べれば、いい考えも思い浮かぶと思うのよ!」

「もうあなたって人は……はぁ〜、まあいいわ。甘いものを食べたら帰るのよ!」

「もちろんよ。シェリフィー大好き! 私どら焼きと饅頭と大福が食べたいわ! あとわらび餅も!」

「そんなにたくさん取り寄せたら、神力を消費するじゃない」

「消費すると言っても微々たるものでしょ。それにシェリフィーは神力が有り余ってるじゃない」


 自分の世界のものを神界に取り寄せるには神力が必要だけど、本当に少ない神力で取り寄せられる。私は日本が大好きだから、私の世界にも日本と似せた国を作って、日本の娯楽に埋もれた暮らしをしたいのよね。

 それを実現したいだけなのに、なんで上手くいかないのかしら? 今は地球の神界に来て、シェリフィーに頼むしかないから凄く不便だわ……


「確かに神力は余ってるけど……まあいいわ。どら焼きと饅頭と大福とわらび餅ね。はいどうぞ」

「シェリフィーありがと〜! あと漫画もお願いしていい? この前一巻読んだやつの続き!」

「それを食べたら帰るんじゃなかったの!」

「食べながら読むのよ」

「もう分かったわよ。これで最後だからね!」

「うん! シェリフィーありがとう!」


 この漫画の続きが気になってたのよ! この前一巻だけ読んだら凄く面白くて、シェリフィーに聞いたら完結してるって言うから、最後まで読みたかったのよね。

 おやつもあるし。うふふ……幸せだわ。


 う〜ん、どら焼き最高! 中のあんこも美味しいし、外側の皮も最高に美味しい。それから私は漫画の世界に入り込んだ。美味しいお菓子と漫画、最高の組み合わせね。




「ミ……リーヌ……ミシュ……ヌ…………ミシュリーヌ!」

「はぇ、あれ? あ、シェリフィー? どうしたの?」


 今ちょうどいいところだったのに。敵の本拠地に乗り込むところよ。


「あなたいつまでいるつもり!? 何度呼びかけても反応しないんだから!」

「いつまでって、漫画を読み終わるまでだけど?」

「もうとっくに読み終わってるでしょ! それ五回目よ」


 え、五回目? 確かに何回も読んだかも……でも面白いから何回読んでも初めて読んだみたいに、ハラハラドキドキするのよね。漫画って文化は素晴らしいわ。


「そろそろ帰りなさい」

「でも今いいところなんだけど……」

「もう五回も読んでるんだからいいでしょ! 私も一緒に行くから帰るわよ!」


 シェリフィーは私の手を引いて、ミルソユーテに向かって飛び始めてしまった。


「ちょっ、ちょっと、そんなに強く手を引かないで」

「そうでもしないと帰らないでしょ」


 そうしてシェリフィーに引っ張られて、私はミルソユーテに帰ってきた。


「ミシュリーヌ、レオンの様子を見るくらいの神力はあるんでしょう? レオンの様子を映して」

「なんで?」

「なんでって、私の世界から連れていった魂でしょ! 転生させるのを失敗したからって、放置しないで見守りなさいよ!」

「は、はいっ!」


 シェリフィーが怖い、鬼の形相だわ。私は少ない神力を使ってレオンの様子を映した。


「ここはどこなの?」

「あれ……これって、王立学校の入学試験よ! なんでレオンがこんなところに?」


 王都の外れにある食堂の息子に転生したはずなのに、何故か王立学校の入学試験を受けている。

 どういうことなの?


「ミシュリーヌ、王立学校ってなんなの?」

「この国に一つだけある学校よ。貴族とお金を持ってる一握りの平民しか通えないのよ」

「なんでそんな学校の入学試験を受けてるのよ? 確か失敗して貧しい平民に転生したのよね?」

「分からないけど……多分、優秀さから受験することになったのよ。さすが私の使徒ね!」


 やっぱり私が能力を付与すると違うのね。さすが私の使徒、優秀だわ!


「あなたは結局何もできてないでしょ。全属性魔法と全言語理解の能力を付与しただけじゃない。あなたの使徒だからじゃなくて、私の世界の魂はやっぱり優秀なのよ」

「そうじゃないわよ、私のおかげよ!」

「ミシュリーヌ、まだレオンと話せてもいないんでしょう? あなたのおかげってことはありえないわ」


 うぅ……確かに何もできてないけど、辛うじて能力の付与はしたんだからね。それのおかげかもしれないじゃない。


「とりあえず誰のおかげかは置いといて、レオンが少しでも高い地位に近づいてるのは良かったじゃない。この世界を救ってくれる可能性が、一%くらいは上がったんじゃない?」

「たった一%なの?」

「だってそうでしょ。レオンはこの世界がどんなに危機的状況かも知らないし、どうすればそれを防げるのかも知らないんだもの。この状況で世界を救ってくれたら奇跡ね」

「うっ……まあ、そうなんだけど……」


 どうにかレオンに知らせる方法はないかしら。私が前にこの世界に落とした神物を手に持ってくれれば、連絡できるのに。確か別の世界との穴を塞ぐ杖と本は、この国の王宮にあるのよね? どうにか王宮でそれを手にしてくれればいいんだけど……


 一回神託できるほどの神力ならあるけど、神域である中心街の教会にいる人に一人限定くらいしか無理。そうすると適当な人に神託しても、気のせいだと思われて終わる可能性が高いし……その人が信じても周りの人に信じて貰えない可能性もあるし。

 神託するなら王様がいいけど、中心街の教会に来てるところなんて見たことないわよね……やっぱりどうしようもないわ。


「シェリフィー、いくら考えてもいい方法が思いつかないのよ……王宮にある神物を手にしてくれれば連絡できるんだけど、それをどうやって伝えるかが問題なの。神託は中央教会にいる人に一度が限界だし……」

「一番の問題はあなたの神力が少なすぎることよ。もう諦めて、レオンが王宮に行って神物を手にしてくれるのを待つしかないんじゃない? その時が来るまでずっとレオンを見守ってなさい。その瞬間を逃したら最悪よ」

「そうよね……」

「地球に来てたら、レオンが神物に触れても気づけないでしょ? これからミシュリーヌはこの世界から出るの禁止よ」

「そんなぁ〜」


 これから地球に行けないなんて……漫画が、お菓子が、私の大好きなものがぁ〜!


「人々の信仰心が上がれば神力の回復も早まるんだから、信仰心回復に努めたほうがいいんじゃない? 少ない神力を使って、信仰心回復のために頑張りなさい」


 そんな簡単に言うけど、信仰心を高めるのって凄く大変なのよ! 基本的に私への信仰心がすごく薄いか、別の勝手に作った神を信仰してるかなんだから。


 でもレオンがいる国は私への信仰心は一応残ってるみたいなのよね……それなら、頑張ればまだ可能性はある?


 神託は神力を消費しすぎるから他のことを考えないと。今の神力だと……中央教会にある私の女神像を光らせるくらいなら、できるかしら?

 あの女神像と教会の一部は私が作ったものだから光らせることはできるけど……光らせるくらいで何かが変わるのかしら。


 でも、やらないよりはマシよね。人間の世界をまた魔物に壊されるのは見たくないわ。魔物は野蛮で嫌いなのよ。なんとか頑張らないと!


「シェリフィー、私頑張ってみるわ!」

「ミシュリーヌ、いい顔になったじゃない。頑張るのよ。たまにはお菓子を差し入れに来てあげるから」

「本当に!? シェリフィー大好き!」


 よしっ、私の世界を救うために頑張ろう!

このお話で第一章完結です!

次のお話から第二章になりますが、第二章開始まで一週間ほど投稿はお休みします。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。これからもよろしくお願いします!


ちなみに第二章は王立学校編です!!

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― 新着の感想 ―
>一% 3年前に指摘されて、それに答えてるのに直ってない ということは、叙述トリックなのか? 誰も1%なんて言ってない。あれは伏字だと言い出すのか 実際、X%と同義だと思ったし(Xの値は不明の意)
駄女神が駄目な理由が酷すぎるなw 最初から信仰を集めてこういった物を作って欲しいとかやればいいのに、自分はよその世界に遊びに行って一回だけ他世界の人間を連れてきたじゃ環境も大きく違う状態で根付くはずも…
[一言] 一%は1%…? %に漢数字は読みにく過ぎて…
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