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167、魔法の検証 後編

「さむっ」


 急に寒気がしてきた。さっき水でびしょ濡れになったことと、アイテムボックスの怖い性能の為だ。

 どうしよう、この服乾かさないと。火魔法と風魔法で乾かすか……。それまで全裸とか嫌だけどしょうがないな。

 そう考えて服を脱ごうとしたところで、ふと思いつくことがあった。


 そういえば、ウォーターボールを川の水で作れるんだから、服の水気を取り出すこともできるんじゃないか?

 というか、火魔法も火があればその火を使ってファイヤーボールを作れるんだよね? それなら、例えば火事になったとして、火を制御して消すこととかできるんじゃないのかな?


 なんか俺って、全属性のことや馬鹿みたいな魔力量がバレないように気をつけてるから、魔法のことをちゃんと探究したことってなかったかも。こうしていざ、魔法の検証をしていると、次々と疑問が浮かんでくる。

 回復魔法だけは使えるから色々な魔法を作り出したけど、他の属性は殆ど手付かずだったよな。ついでだから、思いついたことは色々試してみよう。


 そう考えて、とりあえず服の水分を集めるようにイメージして、魔法を使ってみることにした。

 服に含まれた水分を、一箇所に集めるイメージで……


 ……うん、出来るみたい。


 めちゃくちゃ簡単にできてびっくりした。今着ている服は完全に乾いていて、空中には服から集めた水が小さなウォーターボールとなって浮かんでいる。

 髪の毛も乾かせるかな? そう思って髪の毛にも同じように魔法を使ってみる。すると髪の毛も簡単に乾かせた。

 この魔法、めちゃくちゃ便利じゃん。髪の毛を乾かすのに手間取ってた今までは何だったんだ。冬とかかなり寒かったのに。


 でも、こんな魔法のこと一般的に知られてないよね? 公爵家でも聞いたことないし、王立学校でも聞いたことない。何でだろう……?

 まあ確かに、細かい魔法だから魔力の消費量は多い。だから他の人にはできないのかな? 

 うーん、最近は自分の魔力量が増えすぎて、一般の人の魔力量がよくわからなくなってるんだよね。俺にとっては微々たる魔力でも、普通の人にとっては不可能な魔力だったりする。

 そう考えると、他の人にはできない可能性もあるな。


 あと考えられるのは、わざわざ魔法で乾かす必要はないっていうのもありそう。干しておけば自然に乾くのに、そんなに沢山の魔力を使う必要はないよね。

 普通の人にとって魔力は貴重だから、魔法を使わなくても簡単に代用できることには魔法を使わないのが普通だ。

 そう考えると、この使い方は普及しないのかも。

 でもこの魔法、魔力量が馬鹿みたいに多い俺にとっては、かなり便利な魔法だ。とりあえず、髪の毛を乾かすのには毎日使おう。


 そう結論づけて、服から取り出した水分を川に戻した。

そして次は火魔法の検証をしよう、そう思ったところでふと、川を泳いでいる魚が目に入った。

 そして、少し怖いことを思いついてしまう。いや、かなり怖いことかも。

 

 ……さっきの魔法なんだけど、もしかして、もしかして何だけど、生き物の水分も取り出せたりする?


 そう思いついてしまった。

 もしできたら……凄く怖い魔法になりそう。何でこんなこと思いついちゃったんだ! でも、怖いけど試さないわけにはいかない。一度思いついちゃったら気になるし……

 と、とりあえず、まずは植物で試してみよう。俺はそう思って、近くにあった木に手をかざして、木の中の水分を取り除くイメージで魔法を使ってみた。すると魔法が発動しない。


 はぁ〜、とりあえず良かった。また怖い魔法を生み出したかと思った。

 その後色々と試してみた結果、切られた木の枝や葉っぱ、死んだ魚や虫などの水分は取り出すことができた。

 もちろん血も取り出すことができたよ。うん、やっぱり怖い魔法かもしれない。でもまあ、生き物に使えないなら良いよね。逆に倒した動物の血抜きとかは簡単に出来るし、ポジティブに考えよう。


 とりあえず水魔法の検証は終わり! もう水魔法怖い。水魔法ってかなり色々出来るんだな。というか、こんなに色々出来るのに、何で水魔法で温かいお湯が作り出せないのか不思議だ。

 前に水魔法で常温以上の水を作り出せなくて、なんとか試行錯誤したけど、火属性の魔力も使えば熱湯を作り出すことはできた。

 でもそれって俺が全属性だからできることで、他の人にはできない方法だからな……。魔法って便利なのか便利じゃないのかよくわからない。

 まあ、便利なのは確かなんだけど、融通がきかないところも結構ある。


 俺の予想では、水属性は温度を下げることはできるけど上げることはできない。逆に火属性は温度を上げることはできるけど下げることはできない。

 でもこの法則なら水魔法で氷を作れても良いと思うけど、水魔法で作り出せるのはあくまでも液体なんだ。やっぱり融通がきかない。


 本当に魔法ってわからないことだらけだよね。まあ俺からしたら、こんな不思議な力があること自体がおかしいから、深く考えるだけ無駄なのかもしれないけど。

 だってイメージで魔力消費量が減るとか、普通に考えておかしいよね。最初はこの法則を発見してテンション上がってたけど、考えれば考えるほどイメージで魔力消費量が減るとか曖昧な基準すぎる。

 そもそも魔法がある世界なのに、日本の知識がここまで使えるのも不思議だ。そもそも空気中に酸素があるのかどうか、火が燃える時に酸素が必要なのかどうか、そもそも人間は酸素を吸っているのか、その辺が実際のところどうなっているのかさえわからないんだ。

 魔力なんてものがあるし、人は魔素を吸って生きています、火も魔素を使って燃えていますとか言われても驚かない。

 まあ、空気中の酸素をイメージすると火魔法の消費魔力量が減るから、多分酸素はあるんだろうけど……。もしかしたら酸素と思ってるものが酸素じゃない可能性もあるよね。どこまで地球と同じなのかは疑問だ。


 こうして考え始めたら、魔法って疑問だらけで考えれば考えるほどドツボにハマる。正解なんてわからない。

 もう深く考えるだけ無駄だよなぁ。調べることもできないし、自分で究明しようってほどの熱意もないし。

 結局俺にとって重要なのは、何故そうなるかの理由じゃなくて、これをしたらこうなるという事実だけなんだよね。

 だから、うん……、とりあえず考えるのをやめよう。俺にこの疑問の答えを見つけることは不可能だ。それこそ神のみぞ知るだな。



 俺はそう結論づけて、とりあえず魔法の検証に戻ることにした。後は火魔法の検証だけだな。火をコントロールできるのかどうか、もしこれができたら火事の時に使えて、被害を減らせるはずだ。

 俺はまず、近くの枝や枯れ草をかき集めてそこに火魔法で火をつけた。そして火がついたら魔力の供給を止める。

 火魔法で火をつけても、魔力供給を止めた後は魔力は消費していないので、今現在枝が燃えているのは純粋に魔法とは関係ない火となる。

 よってこれをコントロールできれば、火事の時に使える魔法になるはずだ。


 そう思って俺は今燃えてる火を使って、ファイヤーボールを作り出してみた。するとファイヤーボールは簡単に作り出せる。しかし枝が燃えているのはそのままに、もう一つファイヤーボールが作り出されただけだ。

 一瞬火の勢いは弱まったけど、すぐにまた燃え上がってしまう。

 うーん、このやり方じゃダメなのかな。次はファイヤーボールを作るんじゃなくて、魔力でコントロールして火そのものを消滅させてみよう。そう考えてしばらく頑張ってみたけど、全く出来ない。

 火を動かすことはできるけど、火を消すことはできないのだ。


 うーん、何でだろ。でもよく考えてみると、実際の土を使って魔力で作った石は消せないけど、魔力だけで作った石は消せる。水も同じだ。川の水で作ったウォーターボールは消せないけど、魔力で作ったウォーターボールは消せる。そう考えると、火を消すことはできないのかもしれないな。

 じゃあ、やっぱり火事の時は水で消すしかないんだな。


 魔法も万能のように見えて万能じゃない。そこが面白いけど面倒くさいところでもある。まあ、なんでもイメージ通りに魔力さえあればできたら、それは魔法最強すぎるか。ちょっとは不便なところがあるぐらいの方が面白いよね。



 とりあえず色々検証したから、忘れないように今日のまとめを書いておこう。

 俺はそう思ってアイテムボックスからペンと紙を取り出した。


 まずはアイテムボックス。

 今日の成果としては生き物を入れることが可能、しかし入れた生き物は死んでしまう。自分はアイテムボックスに一定以上入ることはできない。

 今後の課題は魔物と人を入れられるのか。とりあえず魔物を入れられるのか検証する。


 次は転移魔法。

 今日の成果としては魔力さえあれば長距離転移も可能。大きな物も沢山の物も一緒に転移可能。しかし物だけを転移させることは不可能。また、生き物と一緒に転移することは可能。

 今後の課題は、人と一緒に転移できるかどうか。


 後はその他の魔法属性について。

 とりあえず今日わかったことは、土魔法で鉄が作り出せること。水魔法で物に含まれた水分や、死んだ生物の水分などを取り出すことが出来ること。しかし生き物の水分を取り出すことはできないこと。


 これぐらいかな。うん、予想外に怖い検証結果のものもあったけど、かなり有益な検証ができたと思う。

 これからはもっと魔法も使って、魔法で色々と試してみよう。俺の魔力量があればかなり便利な使い方ができそうだ。


 そこまで書いたところで、ペンと紙はアイテムボックスに仕舞い、俺は思いっきり伸びをして息を吐き出した。疲れたし、もう暗くなってきたから帰るかな。

 家に直接転移したいけど、突然俺が家の中に現れたら不審に思われるだろう。ここは走って帰るか。

 そう考えて、俺はまた体力作りのランニングをしつつ家に帰った。


 もうこんなに魔法が使えれば、体力作りなんて必要ないんじゃないかと思いつつも、とりあえずは続ける予定だ。もしかしたら、そこが生死を分けることもあるかもしれないし、剣で戦う可能性もあるからね。

 まあバリアと魔法が、あれば負ける気はしないんだけど。でも魔物の森とか何がいるかわからないし、俺が予想もつかない敵がいるかもしれない。

 とりあえず鍛錬は続けよう。そんなことを考えながら、家まで走り続けた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 異世界ものの魔法と物理法則は気になり始めると設定が難しいですよね。 生き物の水分、血液は取れないってのも怪我からの流れている血液はどうなのか?とか。 アイテムボックスへの生物もどこま…
[一言] うわああびっくりした! いきなり髪の毛の水分吸い出し始めるから、うっかりコントロールミスって頭皮の水分まで吸ったらとんでもないことだと思った! 生物は吸えないとのことで、一安心……。 レオ…
[良い点] 水魔法の応用で魚の干物や干肉などが作りやすそうなところ。 新鮮なドライフルーツという、普通の方法ではできない品質のものが作れそう。 [気になる点] 水をスプレー状にして使ったりも出来るのか…
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