第四の壁もしくは神の視点から
女が部屋に入ってきた
少し見えにくいが髪はベージュ系の色が少し抜けた感じでボブより少し伸びているあたりここ最近美容院には行っていない感じはわかった
顔は少し見えにくいがまぁ後でよく見ればいい
続いて彼が部屋に帰ってきた
ワタシは彼の神様だ
ここ数日間監視して彼の審判をしている
特になにもない日々だったが今日ついに女を連れてきた
さてどうなるのかしっかり見ていこう
「お酒もうちょっとあってもよかったかな」
「いや、別にこれくらいでいいんじゃない?さっきも結構飲んだし十分だろ」
なるほど既に居酒屋かどこかへ行って来たのだろう
それにこの子はお酒が強いのか、彼もそれなり飲む方だから気が合いそうだ
「まぁそうだねー、てかありがとうね奢ってもらって荷物も持ってくれて」
「別にそんな気にする事じゃないよ」
はぁーーー
普段の彼からは想像もできないような優しさだ
どうやらこの女は彼にとって特別と見える
「お礼になんか作ってあげようか?さっきそんな食べなかったでしょ」
「あーまぁいいよ八分目くらいだし、変に残すと面倒だしさ」
「そう?じゃあ気持ちだけ受け取っといてね」
そう言いつつリビングへやって来た彼女は結構可愛い感じだ
話し方にも茶目っ気が窺える
彼のタイプは今までどちらかと言えば綺麗系だと思ってたワタシからすれば少し意外だった
いやー色々とわかっているつもりだったが知らないことも多いものだな
「映画なに見る?」
「ホラーだったらなんでもいいよ」
「えーホラー??私苦手なんだけどー」
「苦手なのわかってて言ってるんじゃん」
…なんだそれ
「えー絶対目隠しちゃう」
「じゃあ俺が隠してあげるよ」
なんだそれ
「…なら頑張って見る」
なんだこの蜂蜜と砂糖を煮詰めてガムシロップを加えてテンプレートにぶっかけたような甘ったるい会話正直吐きそうになる
「まぁ先にシャワー浴びておいでよ」
「わかったーシャンプー前と一緒のやつ?」
「そうそうあのいかにも髪の毛ツルツルにしますって感じの見た目のやつ」
「なにその言い方wわかったー」
なるほどこの女は前にも来たことあるのか
まぁ部屋に入ってからのくつろぎ方かたらして少しそんな気はしていた
なるほどなるほど
この女の子をもう少しよく観察してみるか
カバンは少しハイブランドだが一昨年の春モデルのものだから2年くらいは使っているようだ
物持ちがいいのだろう好感が持てる
靴も戻って見てみるか
靴は少しビールが入ってるパンプスだ
思えばこの女は彼より結構身長が小さかった
そういうところも彼からしたらいいのかもしれない
女がシャワーから帰ってきた
少しこの女からしたら大きめのパジャマを袖と裾を巻くって出てきたそういうところも彼からしたら可愛いのだろう
「ちょっとでかいの可愛いね」
ほらな?言っただろ?
「まぁのんびりしといてよ」
と言って今度は彼がシャワーに向かった
彼のシャワーシーンなんて今更微塵も興味がないな
「テレビ付けててもいい?」
「いいよー」
別に何も聞かずに付けてもいいのに、礼儀正しい子なのかもしれない
女は少しソワソワしながらもよくあるバラエティを楽しくもつまらなくもなく見ながら髪を乾かしていた
なんだかここまで見るとこの女は結構いいやつだと思えてきた
女の髪が乾きテレビに飽きてかケータイを触り出した頃
「じゃあ何見るー?」
彼がケータイを触りながら帰ってきた
返事を返しているようだ
少しケータイがうるさいが内容はまぁ別に見なくてもいいだろう
「あんまり怖くないやつ」
「えーまぁいいでしょう」
「何その言い方ー!」
またこんなのが始まるのかと思って少し聞くのをやめた
こうやって見ていると結構いい2人なのかもしれない
ワタシがガタガタ言うのはお門違いな気がしてきた
まぁ建前は置いといて最後まで2人を見て判断しよう
なんの映画を見るか決めるところを聞いていなかったけれどよくあるモンスター映画が始まったようだ
2人は見てるのか見ていないのかってゆうくらいな感じで画面を見ていたお酒も割と早くに飲み切ってしまったようだ
半分くらい経った頃だろうか2人が少し近づきゆっくり重なり出した
キスをしだしもはや映画には目がいっていないようで頑張って爪を振り回して人を殺すモンスターが可哀想になるくらいだ
まぁ正直ゆえば最初からそうだろうとは思っていたが映画はやはり口実だったのだろう
「ねぇ映画止めない?」
「いいよ彼女だったらいっつも映画終わってからって言われるけどこっちの方が好きなんだよね」
「彼女の話しない約束でしょ」
私はパソコンをそっと閉じた
途中からはむしろ冷静に楽しんで見れらようにまでなったことに驚きもある
とりあえず私は車から降りゆっくりと向かっていった
彼女が部屋に帰ってきた
手には包丁を持ち表情は見えないがきっと笑顔だろう
これが彼女の神様としては最後の務めだ