命の限り
青空の下、太陽に照らされた数十メートル程の外壁と
赤い雨避けのコントラストがまぶしく光る中
「ピィー」という号令の中群集が拍手し子供は飛び跳ねる
今日は三国の騎士達を招いての武術大会の日だ
きらびやかな表舞台から少し外れた路地裏で衛兵達があわてた様子で話す
「おい・・・いたか!?」
「いない!」
「仕方ないもう大会は始まってしまったんだ」
「あんな没落寸前の貴族達などほっておけばいい」
「え?でもいいんですか?あいつ等は盗賊とも繋がっているという噂のですよ?」
「俺は思うんだがな・・・王もそのことはご存知だから今回の武術大会をお開きになったのではないのか?・・・と」
「なるほど確かに、今悪事を働けば犬より鼻の効く三国の騎士団長に滅多刺しにされてしまいますもんね」
「うむ・・・その遍歴の達の中でも特に破壊力のある
ロゼリスの豪傑タルク団長は魔法で鍛えたという
ミスリルの剣を持ち竜を頭から尻尾まで真っ二つにし
地盤ごと切裂いたという、更に正確は実直で・・・貴様聞いているのか!?」
「はいはい・・・先輩の話長いんだもん仕事なくなったんなら俺は兵舎で寝ますよそれじゃ」
「・・・最近の若いやつは・・・」
「くっ!何だ貴様!」
「声を出すな!」
路地の更に暗がりから子供が若い衛兵の喉に灰色の棒を突き立て、かすれた声で脅す
「金目の物と食い物を寄越せ断れば斬る!」
「わっわかった!このナイフを離せ!」
子供はニヤッとすると衛兵の剣をうばい側溝投げ捨て携行ポーチを剥ぎ取る
「もうもってねえだろうな?」
「ああ、好きなだけもっていけ」
「おい!お前!そこでなにしてる!」
老徳の衛兵が若い衛兵に駆け寄る、急いで逃げようとして武器を落としたまま暗がりに逃げおおせる
「はあ・・・ありがとうございますもう少しで殺される所でした」
「こいつでか?」
落としていった灰色の木の棒を拾い上げ嘲笑する
「あのガキ!」
子供は走る海洋の国ラエクの潮風を一身に浴び衛兵や大会の存在など忘れて下街までひた走る命の限り
デズモンド・ニコラスこれは俺の物語だ