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ダンジョン暮らし!スキル【ダンジョン図鑑】で楽々攻略?  作者: 夢・風魔
第1章:ダンジョン生成に巻き込まれまして
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4:あぁ、鞭が欲しい。

 お腹がいっぱいになれば人は眠くなる。

 いや、でもまだ昼寝の時間にも早いぐらいだぞ?


 そう思うのだが、大戸島さんはソファーに座ったまま爆睡状態。

 まぁ精神的な疲れがあるんだろうな。そのまま寝かせてやろう。


「ちょっと俺、売り場の方に行ってくるよ。いろいろ準備したいからさ」

「準備?」

「うん。モンスターと戦うための準備だよ」


 武器が無ければ戦えない。無いなら作ればいい。

 そもそも俺の鞭は全部お手製で、材料はホームセンターで買い揃えた物だ。

 くっくっく。お金に糸目をつけず、好きな素材が使えるんだぞ。こんなに嬉しい事は無いね!


 用意するのはステンレスの細い棒。本革生地。そして極細ワイヤーだ。

 他にももろもろを集め、ついでに作業の合間に食べるおやつを持ってバックヤードへと戻った。


「浅蔵さん、それで何を作ると?」


 バックヤードに戻って早速作業に取り掛かったのだが――。


 持って来たおやつ――たけのこの里を食べながら、セリスさんが興味津々な様子で覗き込んでくる。


「攻撃力強化型鞭をね」

「攻撃力強化? ていうか、鞭って手作りなんですか!?」

「うん。お手製だと自分好みにカスタマイズできるからね」


 今回はワイヤーを仕込んで殺傷力を上げてみようと思う。

 材料はいくらでもあるからな。思うような威力が得られなくとも、作り直しが何度でも出来る。


 てきぱきと作業をする俺の横で、セリスさんがじぃっと見つめる。


「やっぱり元冒険家さんは違いますね。変な話ですけど、私、浅蔵さんが居てくれてよかったって思うんです」

「そ、そう? 期待に添えられるよう頑張るよ」


 弾むような彼女の声に、ちょっとだけ罪悪感を抱く。

 モンスターと戦ったことが無い訳じゃない。でも、そんなに多い訳でもないんだなこれが。

 俺は感知で仲間にモンスターの存在を知らせる役だった。

 まだ見えない位置から、あっちからこっちから来るモンスターに怯え、友人らに守られていた。

 冒険家を止めたいと思い始めた、一か月を過ぎた頃からほとんど戦闘には参加してない。

 それだけ当時は辛かったんだ。


 でもこの状況じゃ辛いなんて言っても居られないからな。

 ここが何階層なのか分からない以上、暫くはここで様子を見るしかないんだ。

 だけど救助が来るまでの間、ここでじっとしている訳にもいかない。

 万が一救助が来ないときは、自力で脱出しなきゃならないのだから。


 何より――。


「鞭が無いと落ち着かないんだよ」

「え?」


 全体の半分ほどを編み終えた鞭を抱きしめる。

 あぁ、落ち着く。


「あれ? セリスさん、何で後ろに下がってるの?」

「え……いや、あの……」


 彼女の表情……なんかドン引きされてるような?

 今の若い子にはわからないかなぁ。

 いや、実際古い映画だよ。会社でその話しても、50代の人にすら「良くそんな古い映画のことを」って驚かれるぐらいさ。

 でもな。インディーは凄いんだ! 英雄なんだ! 俺にとっての。


 セリスさんにはインディー・ジョーンズの映画内容を、熱く語って聞かせた。

 その結果――何故か再びドン引きされた。


 くっ。若い子にはインディーの渋さが分からないようだ。

 いいんだいいんだ。

 今回作った鞭は、実際ここでは大事な武器なんだから。

 攻撃スキルの無い俺にとって、これが無くては地上に出るなんて無理だ。


 そういえば……二人は今回が初めてのダンジョンなのだろうか?

 イレギュラーな入場の仕方だけど、スキルの付与は行われているのかな?


「セリスさんはここに落ちたとき、何かこう……電子音的な女の子の声はしなかったかい?」

「女の子の? ど、どうだったかな。そもそも気絶しとったけん」


 そうだった。


「その声がどうかしたんですか?」

「あぁ。ダンジョンに初めて入るとスキルが貰えるってのは?」


 セリスさんが頷く。

 この辺りは世間でもよく知られた情報だしね。

 ダンジョンでモンスターと戦うつもりはないけどスキルは欲しい。そう言ってダンジョンに数メートルだけ入る人はかなり居るからなぁ。


「で、このスキルを貰う時に、頭の中でアナウンスが流れるんだ。その声が某ボーカロイドの声っていうね」


 なんでボーカロイドなんだよと、当時各所で騒がれたけど。

 今では完全スルーされる案件だ。

 ダンジョンってのはそんな所だ。これで片付けられる。


「スキルって、どうやったら分かるんです?」

「うん。えっとね、スキルの確認方法にはいくつかあるけど……まぁここでは無理だろうな」

「無理なんですか?」

「二人のうち、どちらかが『鑑定』スキルを付与されたりしていれば別だけど」


 ダンジョンで取れる物のアイテム名を調べたり、モンスターの事を調べることも出来る。

 もちろん人間に対しても同じだ。

 名前、年齢、性別、そしてステータスが見れる。

 ただし目視する必要があるけどね。


「もう一つの方法は、ダンジョンの各階層入り口にある石板に触れることなんだ。ステータス板って呼ぶ人も居る」

「鑑定スキルはどうやって使うんです?」

「鑑定したい対象を目視して、あとは『鑑定』って呟けばいい。鑑定したいっていう気持ちも忘れずにね」

「か、『鑑定』」


 お、さっそく試したようだ。だけど何の反応も無いと言う。

 まぁそう都合よく行くわけないよな。

 無かったということは、別のスキルだってことだ。


「この階の上りでも下りでもいい、階段を見つけなきゃ分からないようだね」


 石板にスキルも明記されているから、そこで確認するしかない。

 あとは眠っている大戸島さんがどうかだな。

 

 そういえば、車から降りたときにもスキルがどうのとアナウンス出ていたな。なんだっけ?。

 ボス討伐報酬は『順応力』だったな。それとは別にもう一つ……。


「図鑑……だったかな」

「図鑑? なんの図鑑ですか?」

「あぁ。『ダンジョン図鑑』だ――うわっ!?」


 口にした途端、俺の目の前に分厚い本が現れた。

 光り輝くその本は、ページがパラパラと勝手に捲れ――消えた。


「い、今のなんですか!?」

「いや、何っていうか……ダンジョン図鑑?」


 また出て来た。

 じっと見ていたら、また消えた。

 どうしろって言うんだ!!

 見る時間すら与えられない図鑑とか、ただの鈍器ですから!


 あ、鈍器か。

 あれだけ分厚いなら、武器になるんじゃないか?


「『ダンジョン図鑑』」


 再び出て来た図鑑を手に持ち、振り回してみる。

 うん。なかなか重量感があっていい。

 表紙の四隅には装飾された鉄の飾りなんかもあって、見た目もゴージャスだ。

 でもすぐ消えるんじゃ、呼び出すタイミングが難しい――ん? 消えないな。


「もしかして、手に持たないと消えちゃうとかじゃ?」

「あ……そうかも。えっと、じゃあこのまま持った状態で中を確認しよう」


 表紙を捲ると、そこにはダンジョン図鑑に関して書かれていた。

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