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 五日後。

 26階の表ボスイエティがリポップした。

 索敵に協力してくれたのは、福岡02ダンジョンでも共闘したパーティーたち。


 あの日から宇佐の冒険家支援協会の指示で、信頼のおけるパーティー以外の入場を禁止にしている。

 反発する冒険家もいたが、数日後にはスタンピードが発生する。

 自称神から聞いた、上層階から順に潰れるという話も、すでに冒険家の間では噂になっていたようで、強気に出る者はいなかった。


 そして――


「同行の承諾、おおきに」

「いえいえ。大阪そちらもどんな流れか知っておいた方がいいでしょうし」


 大阪の名実ともにトップランカーのひとりを加え、俺たちは表ボスの討伐に向かった。


 芳樹たちのパーティーと俺たちのパーティーは、合わせて11人。

 パーティーの最大人数は12人なので、大阪から来た松田さんを加えられる。


 図鑑で26階に転移して、まずは索敵班と合流した。


「寒い中お疲れさんです」

「お、来たか。今は地図の――このあたりだ」


 福岡02ダンジョンで顔なじみになっていた冒険家パーティーだ。

『マーカー』というスキルをゲットした人がいて、ハズレスキルだと思ったらとんでもない。

 マークを付けた対象を、同一空間にいればその位置をずっと認識し続けられるというものだったらしい。

 で、イエティにマークを付けて、今は寒さをしのげる階段で俺たちが到着するのを待っていた――と。


「上の準備は?」

「出来てます。近県はもちろんやけど、大阪とか広島からも応援が駆け付けてくれとるんで」

「応援もやけど、スタンピードの流れを把握しときたいさかい」


 松田さん他、大阪広島から駆け付けた冒険家は、みんなその県でも有名な冒険家パーティーだ。

 彼の言う通り、ただ応援に来たんじゃない。

 今後は各県でも、ダンジョンをどうするかの選択に迫られることになる。


 選択といっても、大きく分ければ二つだ。

 ダンジョンを失くすのか、それそも存続させるのか。

 まぁそれも全てのダンジョンで二択を決める訳じゃない。個々で選択すればいいわけだ。


 その選択をするために、スタンピードがどんな規模なのか、危険性はどうなのか、それを事前に見るために各県から冒険家、それに協会職員、さらには自衛隊が集まってきている。


「お、上に残してきた分身からの連絡だ。地上の準備は整ったから、作戦を開始してくれってさ」

「作戦っていうか、まぁボスを倒すだけなんだがな」

「自衛隊のお偉いさんだろ、それ指示したの」

「芳樹、当たりだ。ま、行こうか」

「ちゃっちゃと終わらせて、温泉にでも連れてってーや」

「お、いいですねぇ松田さん。ぜひ行きましょう」


 それを合図に26階層へと足を踏み出した。

 途端に冷気が俺たちを襲う。

 索敵班に案内されながらイエティの場所まで移動し、事前情報もあったのでこちらは難なく撃破。まぁ索敵班との共闘もあったし、なんたって松田さんが強い。

 前衛攻撃型だが、この人は芳樹と省吾を足したようなスキル構成だ。

 防御も出来、攻撃も出来る。

 しかも本人がもともと、幼少期から空手を習ってたっていう。

 

【大分宇佐ダンジョンの真なる最下層ボスモンスター『大分宇佐ダンジョン雪男イエティ』を討伐したよ】

【討伐パーティーをこれより裏マップに転送するよ】


 そんな声が聞こえて、視界がぐにゃんと揺れた。

 次の瞬間には景色が氷雪から洞窟に変化し、気温もガラっと変わる。


「あっちぃな」

「索敵範囲にモンスターの気配なし」

「防寒着を脱ごう」

「保冷剤ジャケットだすよぉ」


 保冷剤を入れるポケットのついた、作業用ジャケットを持って来てある。

 それを着込んでいざ裏ボス捜査開始――と思ったら。


【まぁた君たちか。まぁ人選としては最適かぁ】

【新しい人がいるようだけど、説明いる?】

「いらん」

【そ。じゃ、よーいどんっ】


 なんかいちいち腹立つなぁ。


 けっきょく、ボスの情報はない。

 ただ裏ステージにボス以外のモンスターもいないので、


『じゃ、俺あっちの通路な』

『俺こっちいくばい』

『向こうは任せろ』


 と、分身の俺がひとりで先行してボスを探す。

 洞窟内はひろーい空間同士を、わりと幅の広い通路が結ぶ構図になっていた。

 広い空間は、たぶんフック丘ドームぐらいあるだろうか。通路の幅も25メートルぐらいはある。


 こう広くて、そのうえ迷路状になってると探すのに時間がかかりそうだ。


『見つけた。案外近い所にいたんだな』

「……えっと、分身がボスを見つけた」

「お、早かったな。まだ十分も経ってないだろ」

「福岡ではあんなに苦労したのに、拍子抜けだねぇ」


 まったくだ。


 分身の位置をコピーした地図で確かめながら進み、見つけたのはぐつぐつと煮えたぎる双頭の犬。


「浅蔵さん、あれケルベロスなん?」

「溶岩で出来たケルベロスか……とりあえず図鑑っと」


 まだこちらには気づいていないようだ。

 頭の高さは、ゆうに俺たちの二倍はある。


「あった。溶岩ケルベロス……ひねりないのかよ」


 見たまんまのネーミングだ。

 そして見たまんま、触れると火傷では済まないらしい。


「溶岩、かぁ……どうやって戦うよ」


 俺たちは手持ちの武器を見つめ、大きなため息を吐いた。


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