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191-極寒

 30分探索しては図鑑転移で自宅に戻って30分休憩。

 図鑑転移でさっきの場所から再スタートして、また30分で帰宅を繰り返す。

 分身もその時は同様に解除して、再びダンジョンに戻って来たら再使用からの左右に分かれての探索だ。

 

 昼は虎鉄のスキル上げメンバーも回収して、のんびりと昼食。

 午後の探索を再開させたが──


「や、やっぱり、前回倒してから、ああ、あんまり経ってないし、出ない、み、みたいだね」

「そうだな。けどそろそろではあるよな」

「しょ、省吾はなんで、そ、そんなに、滑らかにしゃ、喋れるの?」

「気合だ」


 気合でどうにかなるのか。

 

 省吾の言う通りなんだよな。

 前回ここのボスが倒されたのは三日前になるんだっけか。

 階層ボスはだいたい2、3日から、長くても一週間ぐらいで再登場する。


 早ければそろそろ出てくるはずなんだ。

 まぁ気持ち的には一週間後ぐらいの方がいいんだけどな。


 地上の準備に余裕を持たせたいってのもあるし。


 そうして何度目かの探索、休憩を繰り返し、分身から連絡が入った。


『見つけた』

『と言ってもテント。たぶん階段で陣取ってた奴らのだろう』

『こんな所でテント張って休憩しても、体は温まらないんじゃないか?』

「分身から連絡。奴らのテントを見つけたんだってさ」

「どっちだ?」


 どっちの方角に行ったグループなんだ?


『左。えぇっと西でいいのか?』

『テント未発見グループは動くなー。俺たちだけぐるぐる回るからさ』


 いや、俺の図鑑だとお前たちの位置が分からないんだけど……あぁ分かったよ。コピーすればいいんだろ。

 ほぼ未完成の地図のコピーって、もったいない……まぁいいか。この階は迷路タイプでもないし。寧ろ自分が地図上のどのあたりを歩いているか分かればそれでいいんだしな。


 コピーした地図には、黄色い点がいっぱいあった。

 確かに左側の点々が細かく動いている。


「浅蔵。ま、また黄色か」

「言うな甲斐斗」

「え、またなのぉ? やっぱり浅蔵は黄色なんだぁ」

「翔太、りゅ、り、流暢じゃねえか」


 にへらと笑う翔太。


「ち、近くに、ボスは?」

「聞いてみる」


 テントで休憩しているのは、見つからなくて休憩なのか、それとも──


『いや、近くにそれらしい姿は見えない』

『むしろテントにも動きが全然見えないんだよ』

『テントの中で明かりをつけている様子もないし』

『まるで気配がない』


 人の気配がない?

 もしかして途中でボスを見つけて追いかけたとか?


「ボス、見当たらない、らしい。けど、人の気配というか、明かりもない、そうだ。どうする? 行かせてみるか?」

「そう、だな。そうしてくれ。うぅ、さみーっ」


 ってことで、テントを調べてくれないか?


『『おけ』』


 待つ間、じっとしている方が寒いのでこちらも移動を続ける。

 暫くして分身たちの声が頭に届いた。


『あぁ……』

『あのさ……ダメだった』


 ダメ?

 何がダメなん……まさかボスを見つけられてしまっていたのか!?


『そうじゃないんだよ。そうじゃ……』

『なんでこんなになるまで、こいつらここにいたんだろう』


 こいつらってことは、テントの中にいたのか?


『あぁ……全員……凍死……してる。8人だ』

「凍死!?」


 思わず叫んだ声に、甲斐斗たちがギョっとした顔で振り向いた。

 そしてすぐに理解したんだろうな。


 芳樹は悔しそうに。

 翔太は俯き。

 甲斐斗は無言で西を見つめ。

 春雄は手を顔を覆い。

 省吾は歩き出す。分身がいる南寄りの西に向かって。


「遺体の回収。無理でも、身元が分かるものを」

「浅蔵の図鑑転移って、浅蔵に触れていればいいだけなんだよね? じゃあ浅蔵が触れているならどう?」

「どう、だろうな。片手で図鑑持って、もう片手で転移したい場所を地図上で示さなきゃいけないし」

「あぁそうか……」


 体の一部に触れていればいい……というなら、足でというのもある。

 けど、触れるだけとはいえ、足で遺体にというのはちょっとな……。


「俺が片手で抱える。もう片方の手で豊を掴む。たぶんそれで行けるだろう」

「抱えなくても触れていればいけるかもな。どちらにしろ何往復かしなきゃならないだろうけど」

「宇佐の地上に運ぶか?」


 いや……。

 階段にいた奴らの所にまず連れて行こう。

 

 きっと仲間のためにって、階段に引き返さず、無理して進んだ結果なんだろうから。

 それがどんなに危険なことか、しっかり分からせなければ。



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