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177/207

177-拡声器の覚醒。

 翌朝、図鑑転移でまずは地下一階へ。それから地上にあがり、模写した地図を届けた。

 芳樹たちは帰ってきてないってことで、まだ14階か15階にいるかもしれない。

 急いで15階入り口の階段に向かうと、案の定そこにいた。


「おはようお前ら」

「お、浅蔵。昨日のあれはいったいなんなんだ?」

「昨日?」


 何故か全員の視線が俺に集中する。俺がいったい何をしたっていうんだ。


「浅蔵先輩。一昨日ダンジョンに響き渡る声で喋ってましたよね」

「は? 木下さん、何言ってんだ?」

「何って、こうして使うとか、これスキルなんだとか、言ってましたよね?」


 何のことなのかサッパリだ。


『にゃー。あさくにゃー、拡声器で喋ってたにゃねぇ』

「そういえば、拡声器出してそんなこと言うとったね」

「言ってましたね」

「うるさかったな」

「え、じゃあ芳樹たちって、近くにいたのか?」


 さぁ? ──と、芳樹たちは首を傾げる。

 まぁ近くにいても、姿が見えなきゃ分からないよな。


「あの声を聞いたのは14階だったが、お前らも今から15階の攻略か?」

「は? 何言ってるんだ芳樹。俺が拡声器使ったのは15階のボスを倒した時だぞ」

「何をって、お前こそ……え、15階で?」

「でもボクらが浅蔵の声聞いたのは、確かに14階だったんだよ」


 ……どういうこと?


 試しに俺ひとりで16階に続く階段へと転移する。


「"拡声器"」


 掴んだ拡声器の電源を入れ、「あいうえお」と喋った。

 それから15階入り口階段へと戻り──


「あいうえおだな」

「あいうえおですね」

「もっと他に無かったの浅蔵ぁ?」

『あおいうえにゃ~。なんの呪文なんにゃ?』


 ──と。


 へ?

 き、聞こえるのか、この距離で。


「あの、私、転移で一階に行きます。浅蔵さん、5分後にもう一度拡声器使ってください」

「万が一のことを考えて俺も行こう」

「甲斐斗さんが来てくれるなら安全ですね。では──"階層転移"」


 上田さんと甲斐斗が転移した。

 それから5分後、


「"拡声器"。『甲斐斗、よかったな』」

『にゃ~』

「『お、よかったってどういうことだよ。なんか甲斐斗の奴、ずいぶん積極的に上田さんだっけ? 一緒にいるじゃねーか』」

「『ふっふっふ。気づいたか芳樹。実はなー、甲斐斗の奴──あ、スイッチ入ったままだった』」

「え、なになに? 甲斐斗ってもしかしてあの上田さんって子のこと?」

「おい、嘘だろ。いつも告られる方だった甲斐斗が、遂に告る方になったのか!?」

「えぇ!? か、甲斐斗先輩がっ」

「わぁ、嶋田先輩のほうから人を好きになるって、初めてじゃないですかぁ?」


 全員が興味津々だ。


「うわぁあぁぁぁぁっ。浅蔵あぁぁぁ、芳樹いぃぃぃぃっ!」

「「ひぃっ」」


 甲斐斗と上田さんが帰ってきた。

 放電バリバリで甲斐斗が走って来る。


 待て、死ぬ。

 それ食らったら死ぬからあぁぁぁっ!






「え、芳樹の声も聞こえた?」

「は、はい。それに虎鉄ちゃんの声も」

「拡声器の持ち主だけじゃなく、周囲の声も拾うのか」

「階層無視して、ダンジョン内全域に響かせるとは。騒音以外のなにものでもないな」

「つまりさっきの会話ってば、今ダンジョンにいる人全員が聞いちゃったってことだね」

「うあああああぁあぁぁぁぁぁぁっ」


 甲斐斗が吠える。

 こんなことになるとは思わなかったんだ。いや考えたら分かったことか。

 上田さんに申し訳ないことをしたなぁ。


「で、甲斐斗。どんな風に告白したんだ?」

「……ない……」

「ん?」

「してないんだよクソオォッ」

「「あー……」」


 全員が俺と芳樹を責めるような目で見る。

 いや、止めてくれっ。そんな目で見ないでくれよっ。


「……か、甲斐斗。悪かったよ」


 俺だって芳樹たちに弄られて、恥ずかしい思いをした。俺はあの時の芳樹たちと同じことをしてしまったんだな。

 甲斐斗のやつ、深刻そうな顔してるじゃないか。


「ごめん、甲斐──」

「上田さん!!」

「は、はい」


 あれ?


「上田さん。俺とお付き合いしてくださいっ」


 突然告白しやがったぞこいつ!


「は、はい。ふ、不束者ですが、よろしくお願いします」


 なんだこれ。なんなんだこれーっ!?


「とりあえず胴上げしとく?」

「しとくか」

「最後落とすんだよね?」

「相変わらず鬼だな翔太は」

「おい止めろ。聞こえるように言うのは止めろっ」


 その後、俺たちは15階の階段踊り場で、甲斐斗を胴上げした。

 かわいそうなので落とすのはやめておいた。

 

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