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(6)ぬめぬめなんなの!?

「ぎいいいいいいいいやああああああああああ!!!」


 落下する!

 落下する!!

 落下するぅ!


 風切る弾丸、空舞う美少女!

 今私は落下している!


 マジで無理無理無理無理カタツムリ!!!

 こんな所で一生を終えるなんてやああああだあああああ!!!


 ズドオオオオオオオオオオン!


 ドラゴンは既に地面に激突し、ちょっとしたクレーターが出来ている。

 死んでいるのかいないのかそんなことはどうでもいい。

 今が私が死ぬかどうかの一大事である。


「|ぐううぶぶげぇぇっぇろぉぢゃあああああぁぁぁぁん《ゲロちゃん》!!!|ぬううわんとくぁわぁずぃなざああいよおおお《なんとかしなさいよ》!!」


 落下でうまく叫べない。

 ゲロちゃんでもゴブムラでもいいからなんとかしてええええ!


 カチカチカチカチカチカチカチカチ


 ブレスレットもだぁぁめぇぇだぁぁしぃぃ!!


 下を見ると地面はもうすぐそこに近づいている。

 だが、ゴブリンたちが大きな布を広げて待ち構えている!!!

 やるじゃんゴブリン!!

 愛してるゴブリン!!


 しかし、よく見ると辺りが暗いせいか落下場所を特定するのに苦戦しているようだ。

 こちらからは月明かりでそこそこ見えるのだが、向こうからは見えにくいらしい。

 私が落ちるであろう場所へもたもた走ってはいるが、到底間に合いそうにはない。


「こんの役立たずどもがああああああああ!!!」


 飛び散る涙、踊り狂う鼻水。

 世界は私を殺しにかかっている。


 あ、もう駄目だ……。

 おわ、終わりでぇす……。

 次回作にご期待くださぁい……。

 そう思って諦めかけた時だった。


 ボヨ~ン  ヌリュッ  グッチャ  ドスン!


 何かの上に落ちた。

 やわらかいクッションのような。

 それに弾き返され、地面へと落下した。

 だが、衝撃は和らいでくれたらしく、軽く顔面をうっただけで済んだ。


「へブッ……なんで顔面なのよ……」


 それになんなのだろう。

 この体にまとわりつく、ベチョンベチョンのぬめぬめのスライムみたいなドロッとした液体は。


「小夜ちゃん! よかったケロ! ハイパーマッスルマッチョ少女モードその壱は、その体をも変貌させるから魔力の消費が激しいケロよ! だから変身時間が短いケロ!」


 遠くへ吹っ飛ばしたはずのゲロちゃんが、小躍りしながら近寄ってきた。

 短いっつっても通常モードとの差が激しすぎない!?

 この世界でこの短さだったら、元の世界だとドンだけ短いのよ!

 ジャブ一発で終わるんじゃないのシュッって!! 一発!

 てか、その壱って何!?

 その弐があんの!?


「いやー、飛ばされた先でスライムの泉にドボンして抜けるの大変だったケロよ。でも、急いで戻ってきて正解だったケロ!」


 まさか、私の体にまとわりついてるのはそのスライム……。


「ゲロちゃんが助けてくれたの?」


「そうだケロよ! 僕以外に誰がいるって言うケロ! ほら、こうやって」


 そう言うと、ゲロちゃんの下あごが風船の様に大きく膨らみだした。

 まとわりついたスライムが月に照らされキラキラと輝いている。

 それはどんどん膨らみ、瞬く間に100人が乗っても大丈夫そうな物置くらいの大きさになった。


 きもっ


 私が無表情で冷たい視線を向けていると、しゅるしゅるとそのキモイ物体はしぼんでいった。


「どうケロ! 僕も役に立つだケロ! 僕の膨らんだ下顎は、小夜ちゃんのない胸よりプルンプルンだケr……」


 反射的にすかさずかましたアッパーカットがクリーンヒットする。


「ぐべぇ!!」


 宙を舞うゲロちゃん。

 この両生類はいつも一言多いのだ。

 月をバックに黒い影が美しい。

 そしてゲロちゃんは弧を描き地面に激突……しなかった。


 ゴブムラたちが運んできた大きな布により激突は阻止されたのだ!!!

 にっくきゴブリンどもめ……。


「い、痛いけど助かったケロ……許してカンパニュラ……」


 怒りに身を震わせる私を見てゴブリンたちは後ずさりしている。


「あんたら来んのが遅いのよ!!! もうちょっとで死ぬところだったじゃない!!」


「それ、どうでもいい! デガラシ! ドラゴン倒した! よくやった!」


 前にゴブリン〔多分ゴブムラ〕が一匹躍り出て嬉しそうに私を見ている。


「どうでもいいことねーよ!!」


「宴だ! 今夜は宴! デガラシも飲む! 食う!」


 私の言葉は耳に入っていないようだ。

 よっぽどドラゴンを倒した事が嬉しいらしい。

 でも、よかった。

 魔法少女として、人ではないけど困っている誰かを助ける事が出来た。

 それは私としても嬉しい事だった。

 だた、こいつ等が人を襲うゴブリンだったら容赦なくぶっ放すけど♪


「レッツパーリーだケロ!! ご馳走にありつけるケロよ! 小夜ちゃん!」


「そうね。おなかペッコペコだわ! 早く戻ってご馳走いただきましょう!!」


 そして私達はゴブリンのアジトへと足を向けた。

 なんだか私、この世界でもやっていけるようなきがする~―――。

 あると思います。

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