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(2)この生物、なんなの!?

 私の名前は五十嵐小夜いがらしさよ

 花も恥らう女子高生の乙女16歳!

 え? 表現が古いって?

 書いてるのがおっさんなんだから仕方ないじゃない♪


 そして、今日は憂鬱月曜日。

 学校への登校は一人が多い。

 無言で早足いそげいそげ!

 でもでも、学校に行けば友達いるし、そんな暗い気分も吹っ飛ぶかも!


「あ゛~~~~遅刻する~~~~!!!」


 私の走る姿を見て、いつもすれ違うオバハンがクスクス笑う。

 チクショウ。

 目覚ましの電池切れてるなんて聞いてないって! なんなの!?

 珍しく宿題ちゃんとやったのに遅刻とか!

 暗い気分が余計暗くなるわ!


 いつも見る曲がり角が見える。

 ここを曲がれば学校!

 時計を見るとギリギリだ。

 いける!

 いけるぞ小夜!

 私は将来有望なランナーだと思い込むんだ!!!


 ビターン!!


 ダッシュで曲がり角を曲がった瞬間だった。

 誰にとぶつかり跳ね返された。

 そしてこけた。


「いでぇ!! どこ見とんじゃあ!!」


 思わず素の声が出る。


「何? 君からぶつかってきたんじゃないか。気をつけたまえよ」


 何!?

 結構イケボじゃない!

 パンはくわえてないけど、もしかして運命の出会い!?


 ………………。


 輝く眼鏡に鏡餅のような体!

 吹き出る汗に染み出る臭い!

 チェックの上着にアニメシャツ、そしてデニムのズボン!

 見れば見るほど前世紀に流行ったヲタクスタイル!


「何をまじまじと見ているんだい? さては僕に一目ぼれしちゃったかな?」


「ありえねーよっ!!!!」


 こんなデブに構っていられない。

 時計を見るとあと2分。

 学校はすぐそこ走れば何とか……!

 立ち上がると埃を払いデブを横目に走り抜ける。


「おいおい、謝りもしないなんて失礼な女子だね。そんな女子にはお仕置きだ!」


 何言ってんだか。

 私は忙しいのよ。


「大反射油テカリ眼鏡ビーム!!!!」


 あれはかかわらない方がいい人種だわ!

 早く学校に!


「ぎゃあああああああああ」


 強烈な光と共に全身に走る痛みと痺れ。

 何!?

 まさかマジでビーム出したの!?

 地面に両手両膝をつきつつも後ろを見る。

 眼鏡からは湯気が出ている。

 マジか! マジなのか!


 見ているその時だった。

 さっき私が曲がってきた曲がり角から、頭がハゲで回りに髪の毛が残っている白髪のいかにも悪の博士ですって言う格好をしたジジイが出てきた。


「ヨヒョーッヒョッヒョ! いいぞヲタク怪人! 人体改造は成功したようじゃな!!」


 悪の博士だ! 間違いない!


「手始めにこの小娘を大回転超反射油テカリ眼鏡ビームでヲタクの格好にしてやるのじゃ!! そしてゆくゆくは日本中の人間をヲタクの格好にしてやるのじゃあああああ!! ヒョーッヒョ……ゲホッゲホッ」


「イエッサー! プロフェッサー!」


 だ、駄目だわ……このままじゃ可愛い制服姿の女子高生から、地味な眼鏡のヲタク姿に……!

 でも、どうする事も出来ない!

 誰か助けて!(イケメン求む)


「大回転超反射油テカリ眼鏡ビー……」


 ヲタク怪人が体をひねらせ眼鏡を光らせ、そこまで言いかけた時だった。


「あぶなーい!!!ケロ」


 その掛け声と共に誰かがヲタク怪人に蹴りを入れる。


「うぐおあ!!!」


 吹っ飛ばされるヲタク怪人。

 吹っ飛ばされた怪人の下敷きになる悪のジジイ。


「な、なにやつじゃ!! まさか、わがあるじワルスルゾー様の邪魔をする、魔法結社プゥリンテンの手先か!?」


 何!?

 助けてくれたの!?

 どこのイケメン!?

 しかしこのジジイ、別に聞いてない事をいちいち説明するな!


「そうだケロ! これ以上の悪事は許さないケロ!」


 目の前にはちんちくりんの微妙にリアルなカエル。

 それが喋っている。


「じゃ、後は任せた」


 すぐさま立ち上がり走る準備。

 こういう変態どもかまっている暇はない。

 逃げるが吉だ。

 逃げるが勝ちだ。

 と言うか既に遅刻だ。


「ま、まつケロ。小夜ちゃん!」


「なぜ私の名前を!?」


 こんな変体な変態に知り合いなぞいない!


「僕の名前はゲロちゃん! 魔法結社プゥリンテンの作り出した妖精だケロ! 小夜ちゃんの魔法少女の適正を図る為に小夜ちゃんの事はストー……色々と調べて色々と知ってるケロ!」


 ストーカーかよ!

 ストーカーしてたのかよ!

 いつから!?

 と言うか妖精!?

 キモッ!

 キモいんすけど!!


「小夜ちゃんは適正があるケロ! さぁ、魔法少女になって世界に巣食う悪を倒して人々を魔の手から救うケロ~!」


 ゲロちゃんと名乗るキモい生物が、謎のブレスレットを差し出してきた。

 デザインは……いかにも魔法少女っぽくハートとか星とかついている。

 あまり私の趣味ではない。


 しかし、魔法少女。

 それは誰しもが少女の時に憧れる存在。

 なれるの?

 もしかして今『はい』の選択肢を選べばなれるの!?

 いや、でも学校が……。


「ほい!」


 私が悩んでいると両生類がすかさずブレスレットを私の腕にはめてきた。


「ちょ、ちょっと! まだ魔法少女になるなんていってないわよ!」


「小夜ちゃん、これは運命なんだケロ!」


「何言ってんのよ! 勝手に決めんな!」


 ブレスレットをはずそうとする。

 だが、がっちりはまっていてビクともしない。


「ちょ、何これ!? 外れないんだけど!」


「運命に選ばれし者は運命に逆らえないケロ!」


「呪いのアイテムかよ!」


 私達がそんなやり取りをしている間に、怪人とジジイはよろよろと立ち上がっていた。

 あんなよろよろするほどの蹴りを入れれるならこの両生類が戦えばいいじゃない!


「さぁ! そのブレスレットのハートの形をしたボタンを押すケロ!」


 でも、このままヲタクの格好にされるのなんて嫌だわ!

 えーいままよ!!


 ハート型のボタンをポチッと押す。

 するとブレスレットから謎の暖かい光の粒子が噴出し、私を包み込んでいく。


 こ、これが魔法少女!

 つよい!

 なんだか知らないけど分かるわ!

 つよい!!


 次々と変わっていく私の衣装。

 これがあればあんな怪人……。


「させるかー!」


 その時だった。

 ジジイの叫び声がする。

 え!? まだ変身途中よ!?

 こういう時って皆変身に見とれて時間が止まるのがお決まりじゃないの!?


「こういう時の為に開発した『スーパー異次元バイバイ光線銃』! とくとその効力を見るがいい!!」


 ちょ、ちょっと!


 ズビビビビビ~!


 目の前で放たれる光線。

 変身途中でかわせるはずもなく直撃する。

 目の前の空間がゆがむ。


「うわ~ケロ~!」


 両生類も巻き添えを食らったらしく叫び声が聞こえる。

 次第にあたりが暗くなる。

 どこかに吸い込まれる感覚。

 え、どうなるの?

 私どうなるの?


「ヒョーッヒョッヒョッヒョ! 成功じゃ! 成功したぞ! よし、日本中をいにしえのヲタクの姿に……」


 聞こえた声はそこまでだった。

 何も聞こえなくなる。

 暗い。

 真っ暗。


 ………………。

 …………。

 ……。


 ドスン


「ぎゃあ!」


 どこかに落ちた。

 何かがクッションになって痛みが抑えられたものの、思いっきりお尻から地面に落ちた。


「いったーい!!」


「僕の方が痛いケロ!」


 尻の下から声が聞こえる。

 両生類がクッションになったらしい。


「どこ? ここ……。学校の近くにいたはずじゃ……」


 辺りを見回すも、辺り一面植物。

 どこかの森だろうか。

 明らかに見た事のない植物もちらほらとある。


「分からないケロ……」


 下から這い出てきた両生類も辺りを見回す。

 しばらく、分けも分からずボーっとしていると、木々の隙間からなにやら珍妙なモノが這い出てきた。

 それは緑色の液体のような固体のようなグニグニと動くモノ。


「ス、スライムだけろ! 襲われる前にやっつけるケロ!」


 両生類が何か言っている。

 ス、スライム?

 ゲームとかに出てくるあれ?

 見ると確かにそれっぽい。

 しかも結構大量に出てきている。

 それがこちらにじわりじわりと近づいてきているのだ。


「や、やっつけるって言ったってどうやって!?」


 少女趣味の可愛い服に、手には魔法のステッキっぽい物。

 自分の姿を見ると、変身はしているようだ。

 だが、戦い方が分からない。


「攻撃の魔法をイメージしてステッキを振りかざすケロ!」


「そ、そんなんでいけるの? イメージって言ったって難しいけど」


「物は試しにやってみるケロ!」


「えーい! なるように、なれぇえええ!」


 そうして私はステッキを振りかざした。


◆◆◆◆◆◆


「と言うわけなのよ。わかった? ゴブムラ君」


 目の前には焚き火。

 ゴブリンたちが狩って来た獣が目の前で丸焼きにされている。

 さほど大きな獣ではないが、ウサギのようなイノシシのような、これまた珍妙な生物である。

 ぱちぱちと音を立てて時折弾ける様を見つめながら語る。

 歩いているうちにすっかり夜が更けてしまった。

 空を見上げると星がすごく綺麗だ。

 出ている月は紫と言うか青と言うか、不思議な色をしている。

 やっぱり、違う世界に飛ばされちゃったのかなぁ。

 お腹すいたなぁ。


 目の前のゴブリンはというとヘラヘラしているだけで聞いているのか聞いていないのか分からない。

 他のゴブリンは私とゴブムラを囲むようにして円陣を組んでいる。

 なにやら夜の森には凶暴な生物が出るらしく、私を守ってくれているらしい。

 私の方が強いんだけど。


「俺、よく分からない。ボスと話す、分かる。うへへ」


 長々話した私が馬鹿だった。

ご意見ご感想などお待ちしております!

最後まで読んでいただけた方、ブックマークや感想、評価の方もよろしくお願いいたします。

ブクマや感想、評価が次へのモチベーションに大きくつながります!

評価は最終話の最下部にあります。


遅筆ではございますが何卒よろしくお願いいたします!

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