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(1)スマホもねぇ!ゲームもねぇ!なんなの!?

「なあああああーーーーーーんでなーーーのよおおおおおおおおお!!!!!!!!」


 ちゅどーん……


 私の声と爆発音がこだまする。

 今いるのはどこだか分からない森の中。

 地球じゃないと言えるのは確か。


 ギャーーギャーーギャーーバサバサバサ……


 私の声と爆発音に驚いた鳥が飛んでいく。

 いや、鳥といっていいのだろうか。

 何かモンスターかもしれない。

 見たことのない生物ばかりが目に入る。


 今、目に入るのは倒したモンスター(たぶんゴブリン?)の山。

 今さっき私がちょちょいのちょいとやっつけたモンスターだ。


「小夜ちゃん、落ち着くケロよ!」


 そして私の横にいるこいつは、私を魔法少女にしてくれ……しやがった謎の生物。

 見た目はカエルである。

 地味にリアルさがある。


「なんでカエルなのよ! 普通犬とか猫とか熊とか羊とか、可愛い動物でしょうがぁ!!」


 ハァハァハァ……

 魔法を使うよりこっちの方がストレスが大きい。


「そ、そんなの僕に言われてもわからないケロ!」


 それにこのケロ口調、微妙にむかつく。


「あんた言ったわよねぇ! 魔法少女になって世界に巣食う悪を倒して人々を魔の手から救うケロ~とか! それがなによこれ!? どこよこれ!?」


 辺りを見回しても木、木、木。

 もうここに飛ばされて半日くらい立つだろうか。

 出くわすのは気色の悪いモンスターばかりで人にすら会えやしない。


「ぼ、僕もわからないケロ! 人を見つけて聞くしかないケロ!」


「人? どこよ! もう何時間たってんのよ! 全然人いないじゃない! 人どころか人が住んでそうな建物も!」


 いい加減、叫ぶのも歩くのも疲れてくる。

 だが、疲れるたびに「頑張るケロ!」「もうちょっとだケロ!」とか言ってこの両生類がヒーリングの魔法とかかけてきて延々歩かされている。


「でも、この魔力漂う雰囲気、普通より変身の持続時間が断然長いし、強力な魔法も使えているケロよ!」


「って事はこの世界に人がいるとしたら皆魔法とか使えるって事でしょ!? 意味無いじゃん! せっかく魔法少女になって特別な存在になれたと思ったのに!」


「ふ、普通は魔法ってすごい修行とか試練を乗り越えて覚えるケロよ! それを僕の一言で使えるようになったんだから得はしてるはずケロ!」


「ま、まぁ、それはそうかもしれないけど……」


 ああ、こいつの提案を受け入れてなければ今頃何をしていたのだろうか。

 友達と楽しくお話してたのかな。

 それとも家でゲームに明け暮れてたのかな。

 あ、今日月曜日か。

 じゃあ学校かな?

 ……。


「スマホもねぇ! ゲームもねぇ! 私は何すりゃいいんだよ!!」


 持っていた魔法のステッキを地面に放り出すも、何も起こらない。

 カランカランと軽い音をたてて転がるステッキ。


「何って、悪を討つケロ! ステッキを粗末に扱っちゃ駄目ケロよ!」


 宙に浮かぶ両生類がステッキを拾い上げ私の頬にぐいぐいと押し付けてくる。

 それを取り上げぐいぐいやり返す。


「悪!? 悪って何なの!? 戦闘員とか怪人とか!? 違うじゃん! 全然違うじゃーん! さっきからゴブリンとかオークとかゾンビとかスライムとか!! 魔法少女物っていうかファンタジーRPGのモンスターばっかじゃん!?」


 倒せる。

 倒せるのはいい。

 だけど、思っていたのと違う。

 魔法少女になって人々から感謝を受けて、彼氏作って実はその彼氏が私を助けてくれていた仮面の味方だったり、ずっと親友だった女の子が実は悪の手先でライバルだったりとか、そんな妄想していたのに、完全に打ち砕かれた。


「ちょっと、ホントに元の世界に帰る方法知らないの?」


 両生類をヒッ捕まえて両頬を引っ張る。

 ぐんにょり伸びるその頬がまた気持ち悪い。


「痛いケロ! 帰る方法なんて知らないケロ! カエルだけに……」


 ベチン!


 無言で思いっきり地面に叩きつける。

 ピクピクはしているが大丈夫そうだ。


「と、とにかく人を探すしかないケロ……」


 人、人、人……。

 人って言ったってどうやって探せば……。

 さっきから色々と試しているけど、私が使えるのは攻撃魔法だけのようだ。

 当り一体燃やし尽くして建物を探すわけにも行かないし。


「小夜ちゃん! 見るケロ!」


「ああん?」


 両生類の指差した方向を見ると、ゴブリンが一匹立ち上がりこちらをじっと見つめている。


「仲間になりたそうにこっちを見ているケロよ! 仲間にしたら何か分かるかもしれないケロ!」


 さっきからー。

 さっきからあああああ!


「さっきからさー!! オークとかゾンビとかスライムとか!! イケメン剣士とかクールな魔術師ややんちゃで可愛いシーフならまだしも、モンスターよモンスター! それにみんな起き上がった奴に話しかけたら言葉通じないで私の顔見て逃げたでしょおおおおおおお!!! それに私の職業は何!? 何なの!? モンスター使い!? 違うでしょ! 魔法少女よ!! ま・ほ・う・しょ・う・じょおおおお!!!」


 再び両頬をつねる。

 両生類は涙目で手足をじたばたさせている。


「そ、それは小夜ちゃんがすごい剣幕で睨むからだケロ……」


 そんな掛け合いをしていたらゴブリンが近寄ってきた。

 何? また私とやろうっての?

 両生類を地面に叩きつけてステッキを構える。

 だが、私の予想は外れていた。


「オレ、人の言葉わかる。オレ仲間にする、オマエ得する」


 それは頭のいいゴブリンだった。

 なんと人の言葉を話せるのだ。

「これは仲間にするしかない! 仲間にして情報を得るしかない!」


 …………。


「私の頭の中を勝手にナレーションすんな!!!!」


 バチーン…………。


 ………………。

 …………。

 ……。


「(´△`;)」


「何ケロ? それは」


「私の今の表情を表してんのよ!!!」


 森の中を適当に歩く。

 私の背後には宙を漂う人語を喋る両生類の自称ゲロちゃん、そして、今しがた仲間になったばかりのゴブリンのゴブムラ。こちらも人語を話す。

 装備は石の斧と革の腰巻。

 ゴブムラはゴブリン族の中でもとにかく明るいと評判らしい。


「そんなんどうでもいい情報な・の・よ!!!!」


 ステッキを地面に叩きつける。

 地面に跳ね返されたステッキはゲロちゃんの腹部にクリーンヒットする。


「な、なんの魔法を使ったケロ……」


 地面に落ちて悶えるゲロちゃん。


「オレのボス、人の言葉話せる。 オレのボス会う、何かわかる。オレのボス、物知り。うへへ」


 ゴブムラがなにやら提案をしてきた。

 とにかく藁にもすがりたいこの状況。

 ゴブムラの仲介があるなら襲ってこないかもしれないし、提案を受け入れるのも悪くなさそうだ。


 立ち止まり後ろを見る。

 ザッザッっと大量の足音が止まる音が聞こえる。

 背後の背後には先ほど倒したゴブリンの群れ。

 皆同じ顔で私についてきている。

 まるで集団ストーカーだ。

 私はこれからどうなってしまうのだろうか。

ご意見ご感想などお待ちしております!

最後まで読んでいただけた方、ブックマークや感想、評価の方もよろしくお願いいたします。

ブクマや感想、評価が次へのモチベーションに大きくつながります!

評価は最終話の最下部にあります。


遅筆ではございますが何卒よろしくお願いいたします!

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