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ゲームの中で魔王から世界を救おうと思ったらジョブが魔王軍のスパイだった  作者: うちうち


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釣り上げられたのにまた水の中に戻された、みたいな

 もう隠せない、と思い、僕はステータス偽装を解除する。遅ればせながら気がついたんだけど、ナズナの今の感情は、どうもそこまで確信があった訳でもない、という風に読み取れた。つまり、僕の反応で真偽を判別した、ということ、だろう。追い詰められるとどうも……。


 ナズナは偽装を解かれた僕のステータスをじっと見て、一言だけ。


「うん」


 と一度頷いた後は、何も言わなかった。どうしてこうなったのか、とも、魔族ならやっぱりNPCじゃないの?とも。その反応に、ちょっと拍子抜けする。


「……何も聞かないんですか?」


「うん、今はね。事情は気になるけど、それはサロナちゃんが自分から話してくれるまで待とうかなって。いきなり全部はしんどいだろうから、ゆっくりの方がいいでしょ?今はそれより、私に隠さなかった、っていうのが大事だから。……ふふ、見せてくれて嬉しいな」


「あの、なんでそんなに知りたいんですか」


「うーん、やっぱり大事な人のことは全部知りたいから。……それに、前に洞窟で離ればなれになった時、あったじゃない。あの時、もう二度と見失わないって、誓ったからかなあ。そのためにはちゃんと全部把握しときたいし。……ごめんね、わがまま言って」


 何となく、手錠の理由が分かった気がした。でも、あれはできたら遠慮してほしい……。という、僕の視線を理解してくれたのか、ナズナがにっこり笑った。あ、これは伝わってない、そんな雰囲気。わがままを謝るならまず拘束すべきじゃないんじゃないか、と思うけど、今は責め立てられなかったことを感謝しているので、僕はあんまり言わないこととする。


「……それで、まだ隠してること、ない?私そういうの、結構分かっちゃうんだけど」


 この状態で、現実では違う姿です、って言ったらどうなるんだろう。何種類もの、ホラーでスプラッタな光景が僕の脳裏に広がり、体がプルプル震える。そのやたら赤色が目立つ想像の中でも、ナズナはずっと笑顔だった。偏見かな。……でもひょっとして、想像してるようなことは何も起こらずに。今回みたいに何も責めずにただ聞いてくれるだけかもしれないな、と僕は何となく、思った。






 宿に帰ると、手をつないで帰ってきた僕たちの姿を見て、ヴィートが疲れたような声をあげる。


「お前らいつも連結してんな」


「その表現、やめてください」


 連結て。レアコイルか何か?……ナズナはすぐに手錠をしようとするところからは脱出できたようで、何より。なんか社会性、という点で成長を感じる。ちょっとだけ。




 そして部屋に戻った後。ナズナがちょっと待っておいて、と言い残して僕以外の全員は部屋を出て行った。



 バレたらその時点で即何らかの対応を迫られることになるとずっと思っていたので、なんだかちょっと力が抜けてしまった。ぽすんとベッドに横になって、もやもやした気分のまま、上を見上げる。……きっと、戻った後もみんなと繋がっていたいと思うなら。全部話すことが必要だろう。戻れるなら、だけど。


 ……こんなことなら、もっと早い時点で白状しておけばよかった。後になればなるほど、言いにくい。僕はいつものように迷うが、決心はいつものように定まらず。いつもと違うのは、……きっとこれで悩むのも最後だと、急にそんな予感がして、僕はそっと目をつぶる。……たぶん、もう残り時間は多くない。どちらにせよ、方位磁石みたいなアイテムが出た時点で、ここから先は……。



 バタン、と扉が開いて、皆が戻ってくる。そして、しばらくたって、戻ってきたときには。さっきの話の続き、僕の種族や装備については誰も何も言わなかった。ナズナが何か話してくれたらしい。その話した内容が何だったのかは、結局最後まで、分からなかったけど。







「作戦会議といこう。とりあえず、プレイヤーを死なせたくない、と。でも街から出ないのは安全じゃなくなる可能性があるから、他の方法を考えとかないといけない、ってことだな」


「HPが0になった時に復帰できるアイテムとか、あったらいいんですけど……」


「一応あるぞ」


「あるんかい!!……え、あるんですか?だったらそれ使えばいいじゃないですか。大人買いして全員に配りましょうよ」


 ヴィートの答えに叫んだあと、ベッドに顔から倒れる僕。あるんだったらもっと早く……ああ、たぶん対策になり得ない理由があるんだろうね。わかります。


「サロナちゃん、言葉遣いが」


「……めちゃくちゃ高いぞ。復帰の効果があるのは「お守り」ってアイテムなんだけど、1回しか復帰できないのに、1個5万ゴールドするからな。ここの宿代が一晩で50ゴールドとかだから、およそ1000泊分だな」


「たっか!」


「サロナちゃん」


「はい」


 ああ、でもそれなら配れないし、配っても所詮効果が1回だけじゃねえ……。魔王城を荒らしまわった僕でも3個買うのが限度ってどうよ?……あ、それなら、ほら、ちょっと前考えてたあれ。魔法の属性を込められる石に防御呪文を込めてそれを配る、というのはどう?


「駄目だな。あの石、非売品なんだよ。そもそもあの海辺のイベントでしか貰えてないから、配れない」


「そうですか……そういえばあの石って、魔法の効果は永続なんですか?」


「いや、込めた魔力がなくなったら補充しないといけない。まあ、バッテリーみたいに市販の魔石をつけることは可能みたいだけどな」


 まあないなら聞いてもしょうがないんだけど。そもそもさ、プレイヤーを守るために装備を整えさせるって言っても、ちょっと無理がある。500人近くいるんだし。……そして、街を滅ぼされたという話。あれの真偽を確かめるためにも、直接会って話したいけど、誰だっけ?あれ言ってたの……。確か、海辺の……?







 結局話はまとまらずに、僕が多人数相手の幻聴をみんな相手に練習した後、部屋の明かりを消して僕らは床につく。明かりの消えたその天井を眺めながら、僕はそっと掲示板をもう一度見直した。……尋ね人のスレを見た限り、戻って来れていない人は、そこまで多くない。情報があれば連絡ください、と探している側の名前や連絡先を載せているものだけを拾っていくと、行方が分からなくなっているのは、合計10人もいなかった。10/500で、2%か……。多いのか、少ないのか。戻ってくる人、来ない人。その両者には、一体どんな違いがあるんだろう。

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