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ゲームの中で魔王から世界を救おうと思ったらジョブが魔王軍のスパイだった  作者: うちうち


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意外なところにレシーバーは潜んでいるもの

 20分ほど物陰で息をひそめ、追っ手を撒いたと判断した後、誰もいない草むらでこっそり着替える。もはや抵抗が全くなくなったエプロンに着替え、僕は今帰ったような顔をして堂々と宿の部屋に戻った。

 そう、ナース服でうろついていたとかいう、都合の悪い現実はなかった。いいね?今頃「さっきのはひょっとしたら幻だったのでは……」とみんなが思ってるかもしれないし。あとはそれを後押しするだけだね。……いろいろ考えたいことはあるけど、とりあえずいつも通りに。







「ただいま帰りましたー」


 扉を開け、笑顔で挨拶すると、中には皆揃っていた。なんだかこっちを見て全員がほっとしたような表情を浮かべる。「?」と疑問を浮かべる僕に、ヴィートが焦ったような声で尋ねてきた。


「お前、飛び出してどこ行ってたんだ。あとさっきの格好……」


「え、私、出先から今帰ったところですよ」


 しらばっくれ作戦発動。しかしヴィートはさっきのことと服装をまだ覚えていたらしく、反論してくる。まあそりゃそうだよね。本当は「さっきここに俺と同じ顔の奴が来なかったか!?」とか言ってみたいところだけど、そういうの通じなさそうなのがそろそろはっきりしたので自重する。


「いや、お前さっき帰ってきたじゃ」


 ええい、強引に行ったれ。僕は口に手をあてて、目を丸くし、びっくりしたという完璧な演技に入った。


「ええー!おかしいですね!今初めて!帰ってきたのにー!」


「え、いや、明らかにさっき」


「ええー!おかしいですね!今初めて!!帰ってきたのに!!」


「そう、おかしいだろ、だから、」


「ええー!おかしいですね!今初めて!!帰ってきたのにぃ!」


「……わかった、わかったよ、もうそれでいい。そんな頑張らなくていい。恥ずかしかったから無かったことにしたいんだよな。こっちも追いかけて悪かったし。立ってないで座れよ」


 やばいこれ超便利!さすが副町長だぜ。でもこの方法、人間関係めっちゃ悪くなりそう。もうやめとこう。容疑を回避し安心して僕が座ると、ナズナが笑ってカルテとキャップを手渡してくる。


「サロナちゃん、これ忘れ物だよ」


「あ、ありが……!」


 お礼を言って受け取ろうとした瞬間、さりげない罠に気づいた。ナズナは気づかれたことを悟ったようで、「惜しい」という表情をする。可愛い顔して、正面切って尋ねてくるヴィートよりよっぽど狡猾だった。やっぱり女性って怖い。僕は澄ました顔で、なんだろこれ、と言いながら受け取る。


「私は知らないですけど、くれるというなら貰います」


「……そうだね、キャップだけあってもなー。残りはどこなのかな」


「ねー。そんなことより、ほら、この絵。かわいいカニですよ。きっとこれの持ち主は心が綺麗です」


「え!?このごちゃごちゃした物体、カニだったんだ……」


 そのまま話をそらしてごまかす。……なんとか無事逃げ切れた。やれやれだぜ。







「とりあえず、報酬は貰えたな」


「はい、でもこれってどういう……?」


 僕は手に持っている小指の先くらいの大きさの宝石をじっと眺める。トマトジュースが固まったみたいな色してる。ちょっとおいしそう。……はっ!?いやいや、食べ物じゃないな。OKOK。落ち着いていこう。


「何でも好きな魔法を込めることができるらしくてな。それを武器に組み込むとその魔法の属性を得られる、らしい。ただ、そのために武器を店に預けて改造してもらう必要があるが」


「ふーん……」


 ……これ、あってもなぁ。想像してみる。僕のメイン武器にこの宝石を埋め込んでください!と店のおじさんに言う→毒ナイフ差し出す→触った相手は死ぬ→投獄。最短ルートでバッドエンド直行な気がする。……あ、でも魔王城の武器マニアに相談するという手もあるな。とりあえず、取っておこうか。


「ちょっと考えさせてください」


「おう、わかった。……それで、これからなんだけど」







 これからの方針について話を聞いてみると、どうも僕らが昨日機械と戦っていた場所の近くにあった、小さな町は、鍛冶の町らしかった。今はお祭りがやってて、バザーとか出てるらしい。そこをのぞいてみないか、という話。



 ……いいね!楽しそう。そうそう、ゲームでこういうのがしたかったんだよ。役に立ってるのかいまいち不明なスパイ活動(という名の単なるお喋り)とか、魔王城でのサバイバルホラーとかね、誰得って話だよ。うんうん、と僕は笑顔のまま上下に頷いて同意の意思を示した。両手も高々と上がる。


「ぜひ行きましょう!!」


「あら、乗り気ねー!やっぱりバザーが気になるわよね!」


「はい、私、気になります!」


「一緒に回ろうね!」


「回ります!何周もしましょうね。バターになるくらい」


「そんなに早くは回らねぇだろ」


 いいんだよ、雰囲気。やる気。こういうテンションの時に発言した内容が翌日黒歴史になるということを僕はよく知っていたが、気にせず話す。……あれ、でもギャレスにバターの話を拾われるとは思わなかった。これは、意外に他のも通じたかもしれん。……今度試してみよう。

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[一言] 女装少年に塩をまけ!
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