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ゲームの中で魔王から世界を救おうと思ったらジョブが魔王軍のスパイだった  作者: うちうち


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うっかり運営のおかげで僕の立場がなんだかヤバイ

 次の日。そろそろゲーム内で何日目かさっぱりわからなくなってきた中で、僕らはまた朝を迎えた。今日は午前は街にいる予言者という怪しさ100%な人のところに行き、おすすめジョブを聞く。午後は狩り。という予定。




 ヴィートが先導しながら予言者について話をしてくれた。何でもその人のアドバイスを聞くと、自分自身がどんな存在かっていうのと、これから進むべき先(多分ジョブのことだね)がちょっとはっきりするらしい。きっとジョブの推薦以外にも、ストーリーに詰まった時に次の街のアドバイスをくれるような、そういう存在なんじゃないかなあ。……第五の力だよ、とか言い出す人だったらどうしよう。結論がいつも世界滅亡不可避。





「その予言者が未来を占えるのは、勇者、つまりプレイヤーだけなんだとさ」


「うわー、私占ってもらえるんでしょうかー。心配になってきましたあー」


 絶対僕のこと判別するために行こうって言ったろ。ただ、ちょっとこの行動はアレだけど、ヴィートは自分で出した案に多分引っ込みがつかなくなってるんだと思う。だって、ヴィートが僕をNPCに認定したがる理由なんて、ないもんね。もう少しだけ大人になって自分の過ちを認められるようになるまで、温かい目で見守ってあげよう。

 僕は優しい顔でヴィートの方を見て、にこにこ笑う。するとそれがかえって気になったようで、ヴィートが僕に向かって話しかけてきた。


「何だよ、俺が疑ってるのがそんなに嬉しいのか?……正直あんまり気分いいもんじゃないだろ。……ただな。俺はお前がどっちであっても、仲間だって扱いを変えるつもりはないからな」


「いえいえ、いいんです。なんでヴィートがNPCとか言いたがるのか、私はよくわかってますから」


 間違いを認めまいと意地になってるから。でもそれは言わないでおいてあげよう。それが優しさ。僕がうんうん、とうなずいていると、ヴィートはなんだか焦ったような顔で突っかかってくる。


「ちょっ、お前、……違うぞ!絶対そんな訳ないからな!!変な勘違いするなよ!!」


「その反応が既に答えになってるような気がするんですけどねー。私をそんなにNPCにしたいのはなぜか、自分自身の胸によく聞いてみたらいいのではないでしょうか」


 と僕は言い残して、前を歩くギャレスの方へ走っていった。後ろの方でヴィートが何かをわめいていたけど気にしない。卑怯者に優しくする時間はとても短いのだ。この際、予言者とやらに自分の弱さと向き合わせられるといい。






 そしてたどり着いた予言者の館(仮)は、小さな一軒家だった。しばらく待合室みたいなところで待たされて前の利用者が終わった後、予言をしてくれるという別の部屋に案内される。


 そこは暗い部屋の中、カウンターの上に乗った水晶玉と、フードを被った黒ずくめの若い女の子が僕らを迎えた。フードに一瞬、あれ?、とよく見たけど、この前広場で会ったのとは別だ、ちゃんと顔が見える。あ、この人髪も目も銀だ。色素薄くて綺麗。


「ここではこの世界でのあなた自身が何者かを振り返るとともに、これから進むべき道について、神からのお導きのお言葉をお伝えします。この水晶玉を通して見ると、あなたがどんな存在なのかがわかります」


「じゃあ、誰から行く?」


 ヴィートが僕の方を見ながら聞いてくるけど、僕はこういうのはいろいろ考える時間が事前に欲しいので、一番最後が好き。伊達に最初二時間もキャラメイクで時間を使っていない。お先にどうぞ、と手で示すと、ヴィートが一番先に水晶玉の前に立った。……あれ、これみんなで聞く感じ?


「ヴィート、職業は僧侶ですね。あなたはとてもバランス感覚に優れています。判断も概ね的確で冷静なあなたですが、その一方、感情的になった時の自身のコントロールにはいまだ不十分なところがあると、実感しておられるのでは?この先進むのが良いと出ている道は……司祭、いや、神官でしょうか」


 ふふふ、言われてやんのー。でもこういうの、できたら人前で聞きたくない。自分一人でこっそり詳しく聞きたいわ。

 その後、ユウさんはお人好しでやや大ざっぱ、お勧めジョブはソードマスター。ナズナは芯が強い反面依存的、お勧めジョブは魔法使い。ギャレスはまっすぐだけど考えなしで我が道を行く、おすすめジョブはストライカー、と続いた。

 ジョブは何がどうなのか正直よくわからない。運営様、これって改善すべきじゃないのかな、説明が足りませんよ。……魔術師より魔法使いの方が上なのか。なんか全般的に性格もシビアな判定じゃない?ちょっと緊張しちゃう。





 そして最後に僕が水晶玉の前に立った。できるだけ姿勢を良くして、あとはせめて愛想よくしよう。……あ、そういえば。


「私って占ってもらえますか?」


「はい、あなたも勇者ですので、大丈夫です」


 ふふふ、見たか、これが運営の力よ。僕はすました顔で後ろを振り返り、ヴィートの複雑な顔をしばし堪能する。反省したまえ。ではでは、性格分析とおすすめジョブ、聞いちゃおうかな。どきどき。あらためて水晶玉に向き合って胸を張る。


「じゃあ、お願いします!」


「はい、あなたは…………えっ?」


 予言者の女の子は水晶玉を見ながらぽかん、とした顔をして、僕の顔と水晶玉を何度も見比べた。なんだなんだ。


「あなたの名前は、サロナ、ですか……?」


「はい!」


「えっ……何、何これ……それだけじゃない……今のジョブも……えっ……?これ……って」


 あ、これまずい、魔族的な本質がなんだか透視されている気がする。運営様、隠蔽工作はどうしたんですか。手落ちにも程がありますけど。そういえば、偽装ジョブのおすすめ聞いても意味ないし、本来のジョブが見えてしまうならそれはもっとやばい。確か「魔王軍のスパイ」とかいうモロな名前だった気がする。僕はとりあえず目の前の女の子にえへへ、と笑って無害をアピールしてみた。


「ひゃああああああああああ!」


 駄目だった。ばたばたと走って逃げる女の子に、僕たちはただ、茫然として見送ることしかできなかった。






「さっきのあれは、なんだ」


「いやあの私に聞かれても……ひょっとして、私の徳がちょっと高過ぎたんじゃ」


 現状めちゃくちゃやばいけどどうしたらいいかわからないので、とりあえず意味不明な言動でごまかす。こんなことになるならNPCですって言って逃げたらよかった。NPC疑惑と今、深刻度が段違い。


「いやいや明らかにおかしかっただろ。なんで徳が高過ぎて逃げるんだよ」


「たぶん自分が恥ずかしくなって、滝にでも打たれに行ったんでしょうねえ」


「その変な発想、普段何を食べてたら出てくるんだ!?」


 するとナズナが一歩前に出て、腰に手をあてて反論する。


「サロナちゃんをNPCと疑ってた人が変な発想とか言わないでください!」


「まあまあ、みんな、落ち着いていきましょう。……こうしてこの場をうまく収めたら、私が大ざっぱじゃないってこと、証明できるかしら……?」


「……実はあんた、気にしてたんだな……」


 うわ、ギャレスがユウさんを慰める(?)場面って初めて見たかも。でも今はそれどころじゃなかった。とりあえず部屋の外に出て、占いの館スタッフに聞いたところ、予言者は体調を崩したため、今日はもう終わりだと、言われてしまい。僕にはその「終わり」がなんだか違う意味に聞こえてしょうがなかった。

すみません、明日も帰りがなんだか遅くなりそうなので、お休みですm(__)mもし意外に早く帰ってこれたら、普段通り書きます。

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