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ゲームの中で魔王から世界を救おうと思ったらジョブが魔王軍のスパイだった  作者: うちうち


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論戦は話の最後を持って行った人がだいたい勝ち

「私をのけ者にして、そういう話をしてたんですねー」


 とりあえず僕=NPCでもいいんだけど、一応抵抗してみよう。負けても損はなく、個人的には今回の疑惑は現実世界の僕全否定みたいな感じなので、気分的にはひっくり返して勝った方がなお良いし。


「ごめんね、午後は置いて行っちゃって……ヴィートさんから、サロナちゃん抜きで話したいことがある、って言われて……」


「へえー、そうなんですかぁ。別に目の前で話せばいいのにねー」


 僕がとりあえずジト目でヴィートの方を見ると、ヴィートはなんだかナズナの方を見て焦った顔を見せ、こそこそ何か話しだした。


「おい、それだと俺のせいみたいに聞こえるだろ!」


「だって事実じゃないですか!」


 ふふふ、さっそく仲間割れかね。正直1対5だと絶対勝てないから足を引っ張り合ってくれると嬉しいです。しかし、いつの間にそんな提案を。きっと僕がちょっと、ほんのちょっとだけ配膳に夢中になってしまったわずかな隙をついたに違いない、卑劣なり。でも、話を街の外でどういう風に切り出したんだろう。ちょっと想像してみる。




(想像中)


「ヴィートさん、話って何ですか?」


 と街の外の原っぱでナズナが尋ねると、ヴィートは重々しい顔をしてうなずき、静かに話し始める。


「俺、実はサロナの奴が人間じゃないと思うんだ」


「じゃあ一体、何だっていうのよ!」


 ユウさんが名探偵の相棒的なポジションで続きを促す。ヴィートは後ろで手を組んでもったいぶったまま無駄にうろうろした後に、真剣な顔で、結論を一言でまとめ、吐き出した。


「俺は、あいつが妖精じゃないかと、思っている」


(想像終わり)





「……おい!また何か違うこと考えてるだろ!」


「へっぽこ探偵は早く病院に行ってください」


「はぁ!?」


 いかん、空想の中の真剣なヴィートの顔と台詞のアホさがシュールすぎて、つい現実の相手に通院を進めてしまった。でもヴィートの奴、どうやってその発想に至ったか、まさか昨日の出来事(ポエム祭り)をみんなに開示したの!?男らしすぎるだろ。僕ならそれをするくらいなら切腹するけど。……僕はとりあえず首を振って余裕を示した後、話の続きを始める。


「ふぅ、やれやれ。まず、私がNPCなんて、何故そう思ったのか知りたいものですね」


「その話し方が既に事実を突かれた犯人そのものだろ!」


「……そもそもさっきから一度も否定してないよね。私、サロナちゃんが何だって受け入れるよ。だから、話してほしいな」


 ……そういう情に訴えるような話運び禁止!卑怯だぞ!


「いえ、私、普通に(←嘘)プレイヤー(←大嘘)なんですけど……だから、なんでそんな発想になったのかなぁ、というのが気になるのです(←本当)」


 そういえばこいつ昨日そのへん濁さなかったっけ?なんでそんなこと言いだしたのか知らないままだ。じーっと僕はヴィートの顔を見て、はよ話せ、と訴えかける。と、つい、と目をそらされた。


「あの、なんでそんな話になったのかは……」


「えっとね、さっき言った通り。この世界に馴染みすぎだって、ヴィートさんがそう言いだしたのがきっかけ」


「へえー、そうなんですかー……」


 なんとこやつ、昨晩の出来事を伏せたまま疑惑だけ持ち上げたのか。卑劣様かよ。道理で目をそらすはずである。全然男らしくなかった。


「そもそも、ヴィートはプレイヤーですか?」


「そりゃ当たり前だ」


「証拠は?」


「そんなの……ああ、なるほどな……ログアウトできない今じゃ、証明のしようがないってことか」


「ええ、別に私が生まれてから今までの生い立ちを話してもいいんですけど、裏が取れないでしょうし、意味ありませんよね」


 すると、ナズナがはい、と大きく手を上げて発言を要求する。なんだろうかナズナ隊員。言ってみたまえ。


「私!聞きたい!その生い立ちからの話!!」


「ええー……はい、じゃあいつかしましょうね、今世紀中にでも。別に今ここでするとは言っていませんし」


「そんな……卑怯だよ!!」


「そもそも私のステータスをばっちり見ておきながら、プレイヤーじゃないなんて言い出すなんて……誰も私のことを、そうじゃない、あの子は人間だぞ、とか格好良く弁護してくれなかったんですか……?」


 この話、お互い決定打がないから引き分けに終わりそう。……あ。そういえばアルテアさんを召喚すれば、リアル知り合い、という証言くらいならしてくれるのではないだろうか。家族設定だし。ただ、その代わりに莫大な借りを作ることになるけど。ん?でも本人呼ばなくても主張してみようか。僕がはい!と手を上げて追加の発言を求めると、ナズナが、はいサロナちゃん、と指してくれた。さすが親友(仮)。


「私はリアル世界の姉が参加してるのに、NPCとして疑われるのがそもそもおかしいと思います!」


「そういえばお姉さんは超美人だったけど、現実にこんな姉妹いるわけないよ!!いたら不公平にも程がある!!」


 しまった。墓穴だったか。その後もわあわあお互いの主張をぶつけ合ったけど、結局結論は出ず。









 その夜、宿屋で男女に別れた女性部屋で。そろそろ寝ようかという雰囲気になったとき、不意にナズナがぽすん、と僕のベッドに座ったので、僕は布団から出てきて半分だけ起き上がる。


「ねえ、夕方の話なんだけど。もし、サロナちゃんがNPCじゃなくてプレイヤーだったら。このゲームが終わったら……現実の方でも、会いたいな。一緒にいろんなところに行きたいなって、思う。私の好きなお店を一緒に回ったり、逆にサロナちゃんの好きな場所を紹介してもらったり。……どう、かな」


 ……それは無理だ。現実にはサロナはどこにもいない。きっと僕が代わりに行っても、それはたぶん、意味がないと思うし。どう答えようかと迷っている僕の顔をのぞきこんで、ナズナはちょっと寂しそうに笑った。


「お昼のヴィートさんの話を聞いたときは、あんまり信じてなかったんだけど。今はちょっと、変わりそう。……そういうことなの?現実では会えない、ってそういう顔、してるよ」


 どんな顔だ、と返す余裕はなかった。どうしよう。


「えっとですね、現実で会えないというわけではないんですが……普通に現実世界にも、体ありますし。ただ、確かにいくつか不具合はあるというかなんというか」


 とりあえず今の状態を話せる部分は正直に話した。それがどう伝わったのかは分からないけど、ナズナは僕の表情を見て、そう、とだけ呟き、少しだけさっきとは違う感情のこもった笑いを見せる。それが何なのかはよくわからなかったけれど。

 ナズナは最後に僕に一言囁いて、自分のベッドへ戻った。すぐに向こうを向いてしまったから、もうどんな表情をしてるかは見えなくて。僕は明かりの消えた部屋で、天井を見ながら言われたことを心の中で繰り返す。


「……今世紀中じゃなくて、もう少しだけ早く、また生い立ちから聞かせてね」

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― 新着の感想 ―
どういった感じで伝わったのだろう……。
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