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ゲームの中で魔王から世界を救おうと思ったらジョブが魔王軍のスパイだった  作者: うちうち


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答え:類は友を呼ぶ

 宴会が滞りなく終わり、次の日の朝。僕たちは浜辺の街を後にし、次の街へと向かう。あんまり長くいると行事とやらに巻き込まれそうだったので、早めに出発しようとみんなの方針が一致したためだった。


「海で遊びたかったなー」


「海で遊びたかったよな」


 訂正、あんまり一致してなかった。だってしょうがないやん。あの副町長が怪しいのは、確定的に明らかだったし。でもなぜ怪しいのか、というのを聞かれると困る。あいつは僕の正体を明らかに知っていたり登場する魔物を変えたりと怪しさ満載というか運営側そのものなんだけど、それを詳しく説明すると僕の種族バレにかかわってくるし。ただ、理由は言えないけどあいつ怪しいから早く出ようぜ、っていうのはさすがに無理があったか。


「あまりこの子を困らせるな」


「あの……あなたはなんでついてきてるんですか……?」


 僕は振り向いて、真後ろにいる20代後半くらいの青年に尋ねる。昨日の宴会で話しかけてきた人。こいつ、いつの間にか街の出口で待ち構えてて、後ろをついてくるんだけど。なんだろ、ストーカーかな?


「私も魔法都市に向かう予定なんですが、できればそこまではご一緒したく!」


「……いや、一緒に行く理由がないので、困ります」


 ヘルプヘルプ、という顔で仲間を見るも、みんなは一律に何かを悟ったような顔をして僕の方を見るだけだった。え、これは僕のせいじゃないだろ……。






「また変なのを拾ってきたのね……」


 頬に手を添えてため息をつきながらユウさんがそう呟くが、またって何ですか。その会話の流れだと今の仲間の内に変なのの候補がいるんですけど、堂々とそんな発言していいんですかね。


「お前のその変なのを引き寄せるのって心底すごいと思うわ。もう才能の域だよな。全然羨ましくないけど。やっぱり類は友を呼ぶっていうがいや何でもない、気にしないでくれ」


 涼しい顔をして他人事のような表情をするヴィート。変なのが増えて困るのはお前だと思うんだけど。その他人事のような顔がどこまでできるかなぁ。


「私、サロナちゃんが昨日、この人に甘い言葉をかけて篭絡してるの、後ろで見てたよ。またそういうことしてるんだあ、って思っちゃった」


 明らかにあの時周りには仲間の姿はなかったはずなのに、ホラーな発言をするナズナ。笑いながら喋ってるけど、この子の純粋な笑顔を最近見てない気がする。


「そんなことより腹減ったな」


 なんか、そういう発言する人いたら安心するわ。ギャレスありがとう。これからも変わらないそのままのお前でいてほしい。とりあえず知的なことを言いだしたら病院に連れて行こう。






「あの、なんで一緒に行きたいんですか?」


「もっと強くなってあなたを守れるようになりたいと昨日話をしましたが、これからも無理をされるのではと思いまして……そんなあなたを放ってはおけませんでした。非礼であることは重々承知していますが、それでも」


「確か昨日は周りの人を守れるような強さが欲しいとおっしゃってたような……私を守りたいとは聞いてません……」


「あなたのような儚い女性を守らずして誰を守るというのですか。どうか、私の願いを聞き入れてください」


「あの、もうそろそろいいです……魔法都市までですよね……」


 これ以上聞くのが恥ずかしいので止めるために承諾しちゃったけど、守護ってくれるらしいからいいか。もう目線も合わせられなくて下を向いてしまう。聞いてるだけで恥ずかしいのに自分でそういう台詞を言ってて死にたくならないのだろうか、こいつは。すげえメンタルだ……言ってる台詞を録音してこっそりこいつの職場のパソコンの起動音とかにしてみたい、という気持ちがなんだか沸いてきて止まらない。実行はしないけど。






「サロナちゃんはやっぱり押しに弱い、と……なるほど。いつもは我が道を行く感じなのにああ言われて顔赤くして下向いてるっていいですよね。そんな姿をもっと見ていたいけど、それが私以外の他人によるものだというのが腹立たしい、なんでしょうこの気持ち。ヴィートさん、ちょっと落ち着くために何回か叩かせてもらっていいですか?」


「あの子って、考えるのが途中でめんどくさくなって適当に受け答えするけど後で苦労するタイプよね」


「それって単なる自業自得って言わねえ……?あとお前、いい訳ねえだろ。そもそもなんで複数回殴る前提なんだ」


「早く飯食いてえなあ……」


「お前はほんと、自由でいいなあ!やべえ、俺一人じゃ対応が間に合わないんだけど!超忙しい!」


「集団で動いている時に突然大声で叫ぶのはどうかと思うが。周りのことをもっと考えたらどうだ」


「正論だが!ストーカー野郎に言われるのだけは、納得いかねえ!!」




 ……ヴィートがすごく大変そう。さっき他人事っぽく振る舞ってた報いだね、きっと。……そういえばこの人の名前を聞いていなかった。


「お名前をお伺いしても?」


「はい、ユーリーと呼んでいただければ」


「あの、私にだけ敬語なの、やめてもらえませんか……」


「わかりました!これからは善処します」


 なんで、僕の周りって僕の話を聞かない人間が多いんだろう。そう、改めて思った。

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