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ゲームの中で魔王から世界を救おうと思ったらジョブが魔王軍のスパイだった  作者: うちうち


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運営への評価で手のひらを返しすぎて僕の手首はボロボロ

 朝食を終えた後、出発し、森の中から宗教都市に飛んだあと、海辺の街があるという方向に街道を通って向かう。しかし問題が1つ。その途中で何回か魔物と戦闘になったんだけど、僕は後ろで応援するだけで終わってしまった。うん、なんかね、だんだんと敵のすばやさの数値も上がってきてるみたいで、動きを視認するのが大変で正直ついていけない。遠くから見たらまだ何とかなるんだけど、能力発動できる間合いとの兼ね合いがなかなか難しい。これは早急に何とかせねば。




 そして、しばらく街道を歩いて、途中から丘に沿った坂道を上る。登り坂でも疲れないのってゲームのいいところだと思う。現実だと絶対途中であきらめてたね。そうして歩きながらふと後ろを振り向くと、気づかないうちに結構高いところまできているのが分かった。さっき通った道が下の方に見えてるし。丘っていうより、山かな。これ戻るの大変かも……





 そうして長い長い坂道をようやく頂上まで登り切ると、今まで斜面で遮られていた目の前の景色がいきなりぱあっと開けて、青く一面に広がっている海と空が僕らを迎えた。空には雲一つなく、海は空よりちょっとだけ濃い青で。ここから見下ろすと、海までの道は下り坂になっていて、きらきら日の光を反射している海のそばに街が広がっているのが見える。突然世界が広くなったように感じて、僕たちはしばらく峠の頂上に立ったまま、二つの青色がどこまでも広がっているその景色を眺めた。海の方から吹き抜けてくる潮風が髪を揺らすのが分かる。


「わあー……」


「ほんと、いい天気ねー!」


 そういえば、このゲーム内って雨降ったことないよね。しかし今はそれが素晴らしいことだと感じられる。目の前が開けた時にめっちゃテンション上がったし。いいね!そして、全員上がったテンションのまま、わーっと思い思いに走って海までの道を駆け下りた。たまにログアウト不可とかうっかりなこともしちゃうけど、運営様は僕らの求めていることをプレゼントしてくれる。ありがとう運営様、最高です!



 海が近くなるにつれて、波の打ち寄せる音がざざーん、と聞こえるようになり、余計にテンションが上がった。僕は隣にいたヴィートに向かってドヤ顔で自分の功績を主張する。


「どうです、私の言う通り、ここに来てよかったでしょう」


「お前が自慢できることじゃ全然ないんだけど、そうだな、いい感じだ」


「まずは海を見に行かない?」


「早く行こうぜ!」


 みんなわいわいとすごく嬉しそう。そうだ、海に行こう行こう!





 そうして道を急ぎ、たどり着いた砂浜には、でかいカニがたくさんうろついていた。何あれ。僕らの求めてたのと全然違う。巨大フナムシじゃないのが唯一の救い。もしそんなのが徘徊していたら泣いている自信があった。……え、ここってリゾートじゃなくて、カニ牧場か何かなの?







「……実は、魔物が砂浜を荒らしていて、漁が出来ないのです」


 街の大きな建物の中にいた副町長と名乗る年配のNPCは、そう深刻そうな顔で語った。砂浜と漁にどういう関係があるのかは今いち分かりかねたけど(普通船じゃないの?)、でもそういえば地引網とかあるもんね。小学校の臨海学校で引いたことある。その時はなんか毒を持ってると注意があったトゲトゲの魚数匹しか僕の手元に残らず、当時は悔しい思いをしたものだった。くそう、クラスのみんな駆け寄るの早すぎんよ~……。せめて、一匹でも食べられる魚を持って帰りたかった……






「ギルドに依頼を出しているのですが、退治していただけたら地引網で取れた新鮮な魚料理とお礼金を差し上げます」


「やりましょう!!」


「「!?」」


 突然大声を上げた僕に周りが驚いた顔を向けてくるが、気にしない。過去のリベンジを今やらずにいつやるというのか。そんな僕にヴィートが不思議そうに尋ねてきた。


「どうした、なんでそんな乗り気なの?お前がやる気を出すときってあんまりいいことなかった気がするんで、既にちょっと怖いぞ……」


「ふふ、昔残した忘れ物を取りに行くだけですよ」


 僕は笑顔とともに、勝手に動いた手の通り、口の前で人差し指を立ててポーズをとりながら理由を説明する。正直やばいくらいテンション上がってる。……僕こんなに感情的になりやすかったっけ?と一瞬不思議に思うけど、そんなこともすぐに気にならなくなった。


「……いいこと言ったって顔だけど、こいつが何言ってるのか全然分かんねえ……」


「まあ、あの砂浜をカニに占拠されてるのは気に食わないし、いいんじゃない?」


 頭を振って理解不能だというのを表現するヴィートと、とりなすユウさん。それを聞き、副町長とやらは嬉しそうな顔をして次の言葉を発した。


「ありがとうございます、このままだと予定されている行事が開催できなさそうで困っているんです」


 ……ん?行事……?


「……何の行事があるんですか?」


「ありがとうございます、このままだと予定されている行事が開催できなさそうで困っているんです」


「あの……何の……」


「ありがとうございます、このままだと予定されている行事が開催できなさそうで困ッテイルンデス」


 ……怖い……。なんか、急に聞いてはいけないことを聞いたような気がしてくる。それ以上聞くのも気が引けて、僕たちはギルドに出された依頼を確認するために副町長の前から退散した。正確に言うと、みんな怖くてそれ以上その場にいたくなかった、というのが正しい。


 行事って、絶対ろくなもんじゃないと思う。邪神像を海に沈めて村娘を生贄としてささげる儀式とかそういう系だよ。もし中断したりしたら不思議な力で死ぬ事になるやつ。これは話し合う必要があるかも。

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