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ゲームの中で魔王から世界を救おうと思ったらジョブが魔王軍のスパイだった  作者: うちうち


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現場対応もできる上司はだいたい有能

 僕は立ったまま何度もアルテアさんとナズナを交互に見た。他にどうすればいいのかわからなかったからだ。どうしよう。せめてあと30秒、開けるの待ってくれたらよかったのに。これでアルテアさんがナズナを斬ろうとか燃やそうとしたら止めないとなんだけど、実力的に無理。あとナズナ、アルテアさんを睨みつけるのやめて。どっかの伝説鳥ポケじゃないんだから。





 問題はアルテアさんがどう出るかにかかっているので、とりあえずアルテアさんの方をあわあわしながら見る。アルテアさんは睨んでくるナズナを見ながら顎に指をあててちょっと首を傾げた後、突然両手を合わせて満面の笑顔になった。え、何、その顔初めて見た。そしてその笑顔のまま朗らかな感じでナズナに話しかける。


「こんばんは、夜なのに急にお邪魔しちゃってごめんなさい!初めまして、私カロリッサっていいます。一応、この子の姉をやらせてもらってるんですけど、あなたは?」


 誰だこの明るい系のお姉さんは。キャラチェンジの素早さに聞いてて目まいがしたけど、さすがに一桁№は、誰とは言わないが30番台とは状況把握のレベルが違った。そうだよね、街中で話しかけてくる奴が異常だったんだよ。スパイの素性がわからないようにしてくれる上司、いいじゃん(いいじゃん)。




「あの、私はナズナっていいます。サロナちゃんとは同じパーティーの仲間で……え、お姉さん……?」


「あ、あなたがナズナさんだったんだ!よく話に出てくるからきっと仲いいんだろうなって思ってたんです。え、今日会えて嬉しい!」


 ……ごめん、なんかこれまでで一番この上司に申し訳ないと本気で感じた。そのままナズナの手を握ってぴょんぴょんはしゃいでいるアルテアさんを見ながら真剣にそう思う。ああ、他人が乱入してこない状況を作るのってこんなにも大事なことだったんだ。僕が間違ってた。この惨劇を一刻も早く終わらせなければ。僕は心の中で涙をぬぐって誓う。


「ごめんなさい、姉さんは今ちょうど出るところだったので、ちょっと席を外してもらえますか?もう少しだけ話しておきたいことがあるんです」


「えー、お義姉さんともっとお話ししたいんだけどな……」


「姉さんはこの後仕事があるんですよ」


 嘘は言ってない。ただ、その仕事って、魔王城に帰ってプレイヤーをどうやって滅ぼすかっていうのを考えること、なんだけど。そのまま無理やりナズナを部屋から押し出す。また今度ちゃんと紹介しますから!と言ったら、ナズナはこっちを振り返りながらも、しぶしぶ5人部屋に戻った。お前、結局何しに来たんだ。

 それを確認してから、ドアを閉め、振り返った僕は真顔に戻っているアルテアさんに即、体を120度曲げて謝罪した。


「まことに!申し訳ありませんでした!!」


「……別にあれぐらい構わないわ。……でも、勇者って初めて近くで見たけど、意外に弱いのね」


 あんたが勇者に紛れてるってことは理解したから、とアルテアさんは呟いた。その後の、「ちゃんと仕事してたのね」という小声での独り言は聞かなかったことにする。でも、あんまりさっきの演技は苦にしている様子がないので、意外にノリノリだったのかも。そんなことを考えていたら、こっちを睨まれたので、僕は目をそらす。それを見てアルテアさんはため息をついた。


「はあ……なんだか疲れたから帰るわ。また来るから。……勇者の近くにいるってことはそれだけぼろが出やすいんだから気をつけなさい。特にあんたはわかりやすいから」


 次は何か用意するって言うならせめてそれまでは生きてなさいよ、と言い残して、アルテアさんは姿を消した。あれ、どうやるんだろう。今度教えてもらおうか。






 そして、着替えて五人部屋に戻ると、姉について全員から質問攻めにされたけど、適当に頷いてお茶を濁す。今日やべーわ、さっきので精神的にめっちゃ疲れた。ベッドに横になってそのまま寝よう、としたところでユウさんから声がかかる。


「美人姉妹だってね、さっきからナズナちゃんがそればっかり。……そういえば、お姉さんとは同居してるの?」


「ええ、家族で暮らしています」


 この家族が何を指してるのかは今いち言ってる僕にもわからなかった。そのままもぞもぞと布団の中に潜り込む。


「そうなんだ、家族の中で2人もテストプレイに応募して採用されるって凄いわね。私はしばらく前に家を出ちゃって一人暮らしだから、そういうのって羨ましいわ」


「そういや、俺も実家に帰ってないな」


「私も大学に進学したのをきっかけに、一人暮らしを始めたんですよ!自炊って難しいですね」




 目をつぶってみんなの話を聞いていると、どうやらギャレスも含めて全員一人暮らし、みたいだった。僕もそうだ。……全員が?たまたま?……一人暮らしの方がこういうバイトにも参加しやすかった、っていうのはあるのかもしれない、けど。……これは、偶然?もし、選んでいるとすれば、きっとそこには理由がある。それはいったい何だろう。そんなことをぼんやり考えながら、いつの間にか僕は眠りについていた。

いつの間にかおかげさまで10万字超えました!


活動報告に現時点でのキャラ紹介を載せました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 蒸発しても違和感がないから 完全に黒
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