その一言が命取り
とりあえず話し合って方針を決めよう、ということで僕の部屋にみんなで移動する。周りがめっちゃ殺気立ってたから、あんまり人のいないところに行こう、となった結果。まあ嫌だよね。パーティーメンバーのみんなもすごい戸惑ってるし。
そして、僕の部屋に5人で入り、宿の人から椅子を借りてきて、座って話し合う。どうしようか。僕としては様子見するべきだと思うんだけど。まず、ヴィートが現状についてみんなに確認する。
「まず、ログアウトできないのは間違いないし、それは俺たちにはどうにもできない。ただ、このまますぐにゲーム攻略を進める気にあまりなれない、っていうのも確かだと思う。そこで、これからどうするか」
「そうなんですよね。システム障害と言われてしまえば、こっちで騒いでもなんとも……」
「でも、はいそうですかと納得できないわ!」
そりゃそうだ。それに、すぐに攻略に戻らなさそう、というのは都合がよかった。この状態で死んだらどうなるんだろう、というのを確認するためにも。……そういえば、今まではどうなってたんだろうか。聞いてみよう、時間はあるし。
「今まではゲーム内で死んだらどういう扱いになってたんですか?」
「相変わらずお前、唐突だよな……俺、最初のころ前に突っ込みすぎて死んだことがあるんだけどさ。その時は始まりの街の広場に戻されて、経験値と金とアイテムが減ってた」
なんかヴィートが突っ込みすぎて死んだって言うと、周りのおかしな言動に突っ込み疲れて過労死したって聞こえる。たぶん敵の方に行き過ぎたってことだよね。
「えーっと、とりあえずそれが変わっていないかを確認したいと思うんです」
「……なんで?」
「こういう流れだとゲームで死んだら現実でも死ぬ、という展開がお約束だからです。私、そういうの結構詳しいので」
「あ、そう……まあいいけどさ、時間はあるしな」
うわ、全然信用してない感じだ。こういう奴はたいてい早めに脱落するから、その態度は今のうちにあらためといたほうがいいと思うよ。横目でヴィートを見ながら、僕は続けた。
「でもどうやって確認するかなんですよね。そこらのプレイヤーを洗脳して谷底に何人かダイブさせてみる、というのもいいんですけど、ちょっと気が引けますし」
とりあえず指をたてて提案してみるも、あまり賛成は得られない案だろうなあ。たぶん止められるだろう、ということ前提で出した意見だし。ほらほら、これよりマシな意見をみんなではよ出すんだ。
「お前、可愛い顔してたまに真っ黒だよな……現実で死ぬかも、っていう話した後の第一声がそれ?あと、なんでそのえげつない提案するのに満面の笑みなんだよ……」
おっと、これでみんなが意見を出しやすいだろうな、と思っていたらつい笑ってたみたい。いかん、魔族と疑われてしまうかも。僕は不審を払しょくするためにきりりと真面目な顔をして、意味ありげに頷いてみた。
「いや、もうその顔しても今更遅いだろ……あと今何に同意したんだよ……」
「……なんかサロナちゃんがいつも通りなのを見てたら、ちょっと安心しちゃった」
「その安心法おかしいからな!お前も自慢げな顔をするな!」
相変わらずヴィートは忙しいなあ。
「とりあえず、本題に戻りましょう」
「お前が話さなかったらそもそもズレなかったんだけどな」
「戻りましょう!……とりあえず、さっきの話だと広場に戻ってくるんですよね。そこの窓から広場が見えるので、ここで広場を見ておいて、戻ってきたらしき人がいたら駆け寄って話を聞いてみる、というのはいかがでしょう」
「ここから?まあ様子は見えなくもないが、特徴を抑えるにはちょっと遠くないか?」
「はい、サロナちゃん、双眼鏡」
ナズナから渡された双眼鏡を使ってのぞくと、おお、凄いいい感じに見える!いいね!
「さすがナズナですね!双眼鏡を相棒と呼ぶだけはあります」
「お前さ、メガネと双眼鏡間違えてるんじゃないの?昨日壊したばっかりなのになんでもう次のがあるんだよ」
「失礼ですね、あれは勝手に壊れたんです。……あと。なんでサロナちゃんが昨日の私の発言を知ってるんですか?誰が吹き込んだんですかね?……ヴィートさん、何かご存じありません?」
ナズナの声が途中から完全に平坦になり、全然顔は怒ってないのに、ヴィートがすごい勢いでうろたえてる。これは返事をミスったら死ぬと思う。すまん。一瞬ヴィートはこっちに助けを求めるような目を向けたが、一瞬あと、何かに気づいたような表情をして絶望した。あ、今僕に助けを求めたら自爆されると思っただろう。伝わってるぞ。




