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ゲームの中で魔王から世界を救おうと思ったらジョブが魔王軍のスパイだった  作者: うちうち


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仲良くなるきっかけっていろんな形があると思う

 そのあとはなんだか三人ともぎこちない感じで、別の意味で気まずい時間を過ごすことになった。だって何言っていいかよくわからないし。ユウさんもどういう立ち位置で今私はここにいればいいんだろう、と悩んでいるような顔をしてベッドの上をゴロゴロしている。ナズナはさっきから布団に潜って出てこないし。さっきちらっと顔を出した時は真っ赤だった。目が合ったらすぐ引っ込んじゃったけど。たぶん今、布団の中はすごい暑そう。出てきたらきたでなんか顔を合わせるのがすごい恥ずかしいから、ありがたくはあるんだけど。……どうしよう。


「この宿の一階って食堂兼酒場みたいになってたので、ちょっと覗いてきます。いいですか?」


「……宿の外に出ないなら、いいよ」


 こもった声で布団の中から返事があった。ちょっとは個別行動を許されるくらいには信頼が回復したみたい。ただし、屋内限定で。







 二階から降りていくと、一階の食堂にはヴィートとギャレスがいた。おお、二人とも仲悪いイメージあったけど、そんなことないのか。二人ともこちらに背を向けているので、とりあえず近づいていく。


「だからさ、なんでお前は俺の言うことを聞かないの?」


「俺より弱えからだ」


 ……訂正、こいつら仲悪いわ。いや、直接言い合えるなら仲いいのか。もう少しだけ聞いてみよう。僕だって今日はつけたりされてたんだからそれくらいは、いいんじゃないかな。


「いや、それはおかしい。だってサロナの言うことは聞くじゃん、お前。だったら俺の方があいつよりは強いから、俺の言うことだって聞いていいよな?」


「お前は俺に勝てねえから聞く必要はねえ」


「なんか話が通じない……」


「お前は頭は良さそうだが、それだけで、大したことないからな」


 いやー、ヴィートがいないと大変だと思うよ、僕ら。でも、ギャレスってあんまり喋らないんだけど、着眼点は結構いいこと多いよね。鋭い質問がたまに飛んでくる。まあその後はお察しなんだけど。ヴィートは逆に今ある物事について合理的に考えるのが上手だから、お互い相手を補う、という意味ではいいコンビになりそうなんだけどな。


「あんたもそう思うだろ?」


 突然ギャレスが振り向いてこちらに同意を求めてきた。え、これってヴィートが大したことないっていう部分に対する同意?絶対言わない。





「いえ、ヴィートがいないと困ります。私たちの中で一番常識人だと思いますし。それってすごく貴重なことですよ」


「あ、お前も来てたのか。……やっぱり俺がパーティーの中で一番常識あるよな!そうだよな。今日は自分の中でその辺までちょっと怪しくなってきてたから、安心したわ。やっぱ人に言ってもらうと違うな。そうかそうか常識人一番手か!ありがとな」


「ちなみに二番手は私」


「……あれ、何だろう、急に嬉しくなくなった」


 複雑な顔をして、天を仰ぐヴィート。……これって僕、遠回しに馬鹿にされてるんじゃない?





「あんたはなんでこんな奴を評価してるんだよ」


 ギャレスの中ではヴィートはやたら低評価らしい。ここは僕がなんとかせねば。


「えー、だって今日も街の人に聞き込みしてたのヴィートじゃないですか。私は自分であれよりうまくできる自信、ないですよ。私は自分にできないことをできる人は、尊敬します。常識があるってことは、その分いろんな人とうまく付き合える可能性がある、ということかと」


「別にそんなのどうでもいいな」


「まあギャレスはそうですよねー。でも、街の人に聞き込みは誰かがしないといけなかったですよね?その結果を出したんだから、それは認められるべきなのでは?ギャレスが自分でやるよりたくさん情報が集まったでしょう?それをできるヴィートは偉いですよね、凄いところありますよね」


「……わかった」


 おお、わかってくれたか。隣で聞いているヴィートもちょっと嬉しそう。やたら左右に揺れている。ウキウキやん。なんだ、認めてほしかったのか。


「あんたが言うのは、こいつは便利だと、そういうことだよな」


 違う、そうじゃない。いや、さっきの言い方だとそうなるか。失敗しちゃった。ごめん。どうする、ヴィート。便利な道具扱いになっちゃう代わりに、前より評価自体は上がったけど。


 ヴィートはしばらく迷い、悩み、……そして渋い顔をしながら結論を出した。


「今はそれでいい。だけど、そのうち絶対お前に俺を認めさせてやるからな」


 すごいガッツだ。正直真似できない。僕はその言葉を出すことができた、という点で、これまでで一番ヴィートのことを凄いと思った。






「そういえば、ギャレスはなんでそんなに強さにこだわるんですか?」


「強い方がかっこいいからだ」


「あ、はい。なんか安心しました。でも、その理由だけでそんなにストイックになれるのも凄いと思います。鍛えれば強くなるって言っても、現実ではなかなかそんなに体づくりできませんしね」


 その後、ギャレスが強い方がかっこいいと思い始めたきっかけは子供のころ見た名作アニメだった、という話題で僕と話が盛り上がっていたところに。自分もその作品が大好きだと言って話に入ってきたヴィートは、結果、ギャレスとそこそこ仲良くなることに成功していた。僕はさっきナズナと距離を詰めるのにあんなにいろいろ大変だったのに。共通の趣味って、偉大。

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