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ゲームの中で魔王から世界を救おうと思ったらジョブが魔王軍のスパイだった  作者: うちうち


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そして当たり屋二世誕生の日

 僕が男と見合ったままでいると、後ろからばたばたと僕の仲間も追いかけてきた。増援到着!数の不利はなくなったね。これで勝つる!


「すみません、うちのが迷惑かけたみたいで」


 増援かと思ったらさっそくヴィートが前に出てきて相手に謝っている。なんたる裏切り。こいつ絶対そのうちジャンプとか習得すると思う。これは正当な怒りだから謝る必要ないんだぞ。「いきなり走り出してそのまま通行人に襲い掛かるなんて、どうしちゃったの?」というもっともな感想を言ってくるユウさんの方も、「いきなり相手に右ボディーなんか入れちゃ駄目だよ」と妙に具体的なことを言ってこちらを諭してくるナズナの方も見ないようにし、そのままヴィートの後ろから顔だけ出して、僕は相手をじーーっと見る。あ、目をそらした。


「この子が怒るのももっともなんです。こっちこそ、悪いことをしました」


「……というと?」






 男が状況を説明した後、ヴィートは難しい顔をしながら、話をまとめた。


「なるほど……こいつを助けた後、悪気はなかったけど、結果として掲示板で噂が広まるきっかけを作ってしまったと。確かにもうあの話題ずっと消えそうにないですしね……(小声)」


 うーん、でもよく考えたら別にいい気もしてきた。ウサギと戦って引き分けたのは事実だし。今もそうだったら傷つくけど、別にそうじゃないし。ふふふ、素人はいつまでも古い情報で踊るが良い。嘘は嘘であると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい。まあ、今回に関しては半分事実だけど。引き分けといったところかな。なかなかやるじゃないか。


「……なんだか、この子さっきからずっと下向いて、……え、まさか泣いてるの?」


「あ、こいつはたまにこうなるんで。たぶん今めちゃくちゃどうでもいいこと考えてると思います」


 ヴィートがなんだか僕についての偏見を相手に吹き込もうとしているのが聞こえたので、顔を上げて反論する。


「どうでもよくありません。情報のリテラシーという壮大なテーマについて思いを巡らせていただけです」


「お、おう、別にそれはいいけど。お前真面目な顔してるけど正直何言ってるか全然分からないからな。……それで、お前、この人にどうしてほしいの?」


 あんまり知的な印象は与えられなかったみたいで、普通にスルーされた。まあいいか。どうしたいか……うーん。口に手をあてて、ちょっと考えてみる。……別に今更噂は消えないんだろうから、さっき謝ってくれたしそれでいいかなあ。ついでに一発ぶん殴れたし。正直結構すっきりした。というか、いきなり殴りかかったのはさすがに常識がなかったね。ここは勢いに任せてセットで謝っておこう。台詞は視線を下に落としながら真面目な顔で言うことで反省の色を見せる、完璧。


「もう広まった噂はどう頑張っても消せないみたいなので……もう、何もしていただかなくて結構です。私の気は十分晴れましたから、大丈夫です。突然呼び止めて、ご迷惑をおかけしてすみませんでした」


 と言って、頭を下げる。ついでに顔を上げた後、営業スマイルでえへへと笑ってみる。これで殴られたことを向こうがチャラにしてくれるなら安いもんである。さすがにこの状態で仕返しに一発殴らせろ、というほどの原始人じゃないだろう。ギャレスじゃあるまいし。






 ……すると、それを見た向こうの仲間が集まって、なんだかよくわからないけど男が全員から責められていた。「あの子がかわいそう」という言葉が端々で聞こえる。いきなり呼び止められて殴られた挙句、仲間にそれが原因でリンチを受けているあいつの方がよっぽどかわいそうだと思うけど。でも正直ちょっとざまあとも思っちゃった。すまん。天誅がまさか仲間によって執行されるとは……


「お前のその相手の罪悪感を普通にえぐるのって、時々怖いんだけど。あんな言い方されていかにも無理してますって感じで微笑まれたら、かえって申し訳なくなるだろうに。あいつに同情するわ」


 僕の渾身の営業スマイルだったのに、なんだかひどい言われようをしている気がする……ふと、ついつい、と袖を引っ張られて振り向くと、ナズナが真面目な顔をして、尋ねてきた。


「サロナちゃん、私がその掲示板に書き込んでる人たちを全員粛正したらいいのかな」


「ごめんなさい、やめてください。ナズナのその友情は私には重すぎます」






 結局、またこちらで何か助力が欲しい時は連絡したら最優先で彼らが駆けつけてくれる、ということで話がまとまった。いいのかな。殴ってさらに対価を要求するとか、普通に強盗である。当たり屋ギャレスを責められない。ひょっとしたら、ギャレスも今回みたいになにか複雑な事情があったのかもしれないな……。ごめん、という視線を送ると、ギャレスも理解したのだろう、笑顔を見せて、その後ボディーブローを何発も素振りするリアクションで答えてくれた。……たぶん違う、そうじゃない。



 ……僕たちはどうも全体的に、意思疎通に問題があるようだった。まだパーティーを組んですぐだからだろうけど、これは改善していかなければならない気がする。んー……ぶっちゃけトーク大会でも、開催するべきかなあ。

毎日寝るまでに投稿する、という感じで、とりあえず行けるところまで頑張ります。

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