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ゲームの中で魔王から世界を救おうと思ったらジョブが魔王軍のスパイだった  作者: うちうち


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他人にした注意はたいてい自分に返ってくる

 台座に触れた瞬間、景色が切り替わり、僕はいつの間にか見知らぬ街の噴水のそばに立っていた。おお、最初の街では結局ログインしたら宿の部屋の中だったから、なんだか新鮮だ。なんだか嬉しくて、あたりをきょろきょろ見渡してしまう。……あ、他のみんながいた。小走りに駆け寄り、無事合流する。


「なんだか最初にログインしたときみたいだね!」


「……そうですねー」


 ナズナが話しかけてくるのに対して、棒読みでしか答えられなかったけど、しょうがないと思う。


「新しい街に来たからには、まずは情報収集からかな」


「ここがどんな場所かも気になるしね」


 とりあえず何があるかわからないので、全員で固まって動く。どうやらこの街は始まりの街より人が多いみたいで、すれ違う人数も多い。なんだか全体的に、法衣を着ている人が多い気がする。街の人を相手にした情報収集には主にヴィートがあたり、聞き込みを続けた結果。







「宗教都市か……」


 なんだかここはそういう都市らしい。でも、異教徒を迫害するとか、そういうヤバイ感じの場所ではなさそうなのが救いかな。魔族は多分迫害されるだろうけど。しょうがないね。


「僧侶ならここでクラスチェンジとか、いずれできるようになるんじゃない?そのあたりも確認しておいた方がよさそうね」


 ユウさんが顎に手をあてながらふむ、とうなずくと、ヴィートが続けた。


「街の中央に大聖堂があるらしいから、まずはそこに行ってみようか」


 大聖堂!ステンドグラスがありそうってイメージしかないけど、なんか厳しそう。ギャレスとか騒いでたらすぐ追い出されちゃうんじゃないかな。ギャレスの方を向いて指を立て、事前に注意しておく。


「大聖堂では、ギャレスは静かにしないと駄目ですよ。追い出されたら困ります。きちんとしましょう」


「なんで俺だけ……わかったよ、しょうがねえ、ちょっとの間だけ我慢してやるか」


「だからなんでそんなに従順なんだよ……あと、そんなに静かにするの難しい?……なあ、聞いてる?」







 とりあえずみんなでそのまま並んで歩きながら街の中心に向かうと、なんだか歴史のありそうな石造りの大きな建物が見えてきた。あれかな。尖った塔が併設されていて、たぶんそこからか、鐘の音がする。とってもキリスト教っぽい感じ。讃美歌とか中で歌ってそう。その音をみんなでしばらく聞いた後、正面の入り口をくぐり、中へ入る。中は広間になっていて、天井がとても高く、正面の壁にはめ込まれた一面のステンドグラスが外からの光を通して七色に煌いて、すごく綺麗だった。まさに清浄な場所って感じが……んん?なんか、違和感……


「ごふうっ!」


 急に胸のあたりが苦しくなり、その場にしゃがみ込む。なんだか体の中ですごくヤバい何かが起こっている気がする。異常事態を察知したらしく、仲間と教会の人が駆け寄ってくる。


「え、どうしたの……!?」


「どうしましたか!?」


 この大聖堂、魔族に優しくないんですけど。胸を押さえて、その場から退出しようとするもどうも体が上手く動かない。ダメージはないんだけど、多分僕のスキル「ボス特性(全状態異常無効)」とこの大聖堂の退魔力的な何かが相殺してるのか、体内の衝撃がやばい。何がかは分からないけど、破裂しちゃう。


「……ご気分がお悪いようですので、とりあえずこちらへ」


 教会の人に背負われて運ばれ、建物内の医務室的なところに寝かされる。……あ、なんか、あの広間から抜けたらだいぶ楽になった。魔族には教会に参拝することが許されないみたい。よく考えなくても当たり前だった。忘れてたけど、魔族って神の敵的な位置づけだっけ?誰かがそんなことを言っていたような。……教会に参拝に行った挙句そこの人に介抱されたことが魔族側にばれたら、なんだか怒られるんじゃないだろうか。アルテアさんには内緒にしておこう。



 とそこまで考えて、僕はようやくそばについてくれていたみんなの存在を思い出す。あれ、これって、僕、怪しくない?……教会に来た瞬間苦しみだす、他の誰も持っていない、誰も知らないスキルを駆使する女の子。導き出される結論は。


「あの、違うんです!」


「違わないわ。体調が悪いなら言ってくれたら良かったのに。無理しないで」


「……はい、違わないです、体調悪いです」


 危なく自白してしまうところだった。そうだね、僕、怪しくない。教会で苦しむ=魔族、というのをすぐ結び付けられるわけがなかった。


「でも、もう治りました。さすがに一緒に行くのはまだ難しそうですが、誰かについていてもらうほどでもないので、皆さんは行ってきてください。私はここで待ってますから」


 だって原因が明らかなんだもん。広間に寄らなければもう倒れようがない。僕が笑いながら手を振って元気をアピールしたところ、みんなはなんだか痛ましげな表情でこちらを見てきた。なんだ。朦朧としてる間に身体検査か何かで魔族ってことがバレてこのままここで火葬されるとかだったらどうしよう。……でも、結局そんなことはなく、ナズナが僕につくということで話がまとまり、みんなは大聖堂の奥へ向かった。そういえば、ここってなにしに来たんだっけ?


「サロナちゃんは無理そうだと思ったら、正直に言って欲しいな。私にだけでも」


「はあ……別に無理はしてませんけど」


 本当に無理してないのでそう言っただけなのに、ナズナはなんだかちょっと怒っているようだった。理不尽。

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