表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲームの中で魔王から世界を救おうと思ったらジョブが魔王軍のスパイだった  作者: うちうち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/113

できない子ほどかわいい、と言われた本人はちょっと複雑

 ギャレスさんが後ろについているだけで、その後一度もナンパされることなくギルドにたどり着くことができた。なんかそれだけでちょっと高評価。そのまま入口の扉をくぐる。






 ギルドの中は相変わらずちょっぴり薄暗かった。夕暮れ時ってせいもあるだろうけど、もっと照明とかたくさんつけたらいいのに。雰囲気づくりだろうか。周りを見渡すと、視線は感じるのに、目が合うと全員とさっとそらされる。んん?前はこんなことなかった気がするから、原因は……後ろを振り向くと、ギャレスさんが周りをじろじろ睨みつけているのが見えた。やめて!


「ギャレスさん、ストップ!あの、今、さっそく迷惑かけてます。周りを睨むの禁止で」


「別に睨んでるわけじゃねえけど、あっちが見てくるから……わかった、わかったよ」


 うーん、確かに目つき悪い、ガタイいい、喧嘩っ早そう。見ちゃう気持ちも、目をそらす気持ちもわかるかなあ。これで髪の毛がなかったらもっとやばかったね。世紀末に出てきてもおかしくない。職質不可避。いや、外見だけなので全部本人のせいって訳じゃないんだけど。


「ギャレスさん、くれぐれも毛根は大切にしてください」


「……はあ?何だいきなり?あと、さん付けはいらねえ、ギャレスでいい」


 カウンターに並びながらたわいもない話をしていると、いつの間にか順番が来たので、受付のお姉さんに目的を告げる。


「……ここで習得できる魔法って、どんなのがありますか?」







 カウンターのお姉さんの説明によると、魔法は基本的には地水火風の4種類。そこからさらに発展形があるらしいけど、ここでは習得できないとのこと。火が攻撃に、土が防御に優れる。また、スキルで範囲拡大や威力増幅などが可能。スタンダードな感じだよね。それを期待して来たので、まずはよかった。



 そして、このギルドで習得できるのは、それぞれの魔法の下級の2種類だけ。合計8種類なのでその中身も含めてすぐ目を通せる。ファイアーボール、違う、ウインドカッター、違う、ウォーターバレット、違う、……アースウォール、あった。説明に目を通す。……土の壁を作って、相手の攻撃を防ぐ。これなら。……これを、習得したい。浮遊魔法があればそれが一番良かったけど、それでもこれで十分。




 受付のお姉さんに申し込んだところ、別棟の訓練場で魔法は習得できるとのことであり、そのまま僕はお姉さんに奥に案内される。後ろを何も言わずについてくるギャレス。そして、廊下を抜け、扉を開けた先は外につながっていて、運動場のような広場が広がっていた。その端っこで道具を片付けている教官らしき人にお姉さんが声をかけると、その人がこちらにやってきて笑顔を見せた。


「今日は立て続けによく来るな。いちおうもうすぐ終了の時間だから、あまりたくさんの魔法は今日中には習得できないと思うけど、いいかな?」


「ええ、一つだけでいいんです。……『アースウォール』を使えるようになれれば、それで」


 そしてそのあと教官が見せてくれた魔法のお手本は、想像通りで、まさに僕が欲しいと思っていたものだった。呪文を唱えると、硬そうな土の壁がどーんと地面から飛び出してくる。縦3メートル、横2メートル、厚み50センチくらいの大きな壁が。壁っていうか板かな、ちょっと想定よりでかいけど。


 ……さっき、幻影を塀の上に座らせたときに思ったんだけど、高いところに登って相手の攻撃をかわすって、別に木じゃなくてもいいよね。魔法で高いところを作ればそれでいい。この魔法も、自分の前に出して攻撃を防ぐためのものかもしれないけど、別にこの壁の上に登っちゃいけないって訳でもないはず。


「……この土の壁って、自分の前にしか出せないんですか?」


「いや、場所は正面じゃなくても大丈夫だよ。背後からの攻撃を防ぐため、後ろに出すっていうのもできる。いちいち振り向いてると間に合わないこともあるからね」


「自分の立っている場所に壁を作ってその上に立ちたいんですが、それもできますかね?自分の立ってる地面がそのまま上にせりあがるような感じがいいんですけど」


「はっ?……うーん、今までそんなことしたことないからはっきりとはわからないけど、できないことはないと思うよ……え、なに、君、目立ちたがり屋?」


「いえ、高いところが好きなんです」


 説明するのが面倒なのでそう告げる。こちらを眺める教官の目に一瞬「なるほど馬鹿と煙は高いところへ上るって言うもんなあ」という感想がよぎったような気がしたけど、多分被害妄想だよね。教官はそんなこと言わない。







 教官が懐から石板を取り出した。何でも、そこに手を乗せて登録すれば、それだけで基本的な魔法は取得できるんだって。ただ、それだけだとうまく使えないから、そのあとそれを使いこなす練習をして、終了と。そう言われてとりあえず、石板に手をのせる。…………あれ?反応なし?押し付け方が足りないのかな?手をそのままぐいぐい押し込んでいると、教官がひきつった顔で教えてくれた。


「これは別に石板を押し込む強さで、習得できるかどうかが決まるんじゃないんだよ。適性があるかないか、それだけ。でも君、見るからに魔法系だよね?これは最低ランクの魔法だからよっぽどじゃないと適性がないなんてことは……あっ!反応が……ある、すごく薄いけどある!なんとかいけそうだよ!ただ、これだとこれより上のランクの土魔法は難しいかな」


 さっきこれ最低ランクの魔法って言わなかった?これより上って、ほぼ全部やん。まあいいか。これさえ習得できれば、他の土魔法には用がないし。そのまま習得が終わり、呪文を唱える。


「アースウォール!」


 目の前の地面が板の形にどーん、と飛び出す。教官のより一回り小さいけど、十分。えっ、これって才能あるんじゃない?いや、ある!もう一回!


「アースウォール!」


 ……?何も飛び出さない。これって確率で失敗したりするの?助けて教官!教官にヘルプの視線を送るも、教官も首をかしげている。


「おかしいな……別にさっきのを見る限り発動しないってことはなさそうだが……何も起こらないっていうのは……?あ、ひょっとして君、どこかでMP使ってから来たんじゃない?今のはおそらくMP切れだよ」


 なんと。急いで自分のステータスを確認したところ、MPは3/8となっていた。


「ちなみにアースウォールの消費MPっていくつですか?今、残り3しかありません」


「3しかないの!?君、もう少し普通の状態のときに来なよ!さっきの石板での魔法習得で消費1、アースウォールは消費4だよ」


 つまり2回使ったらMPが完全に0か……うーん、使い時が難しいね。鑑定も消費MP1で、それしか使ってないから、今まであんまりMPのこと気にしたことなかったなあ。……そして、僕はギルドに備え付けのMP回復薬を売ってもらい、そのまま練習を続ける。回復を待っているといつ習得できるかわからないから、多少ならお金がかかってもいい。あと1とかならさすがに待つけど。……そして。






「……うん、これなら大丈夫だ。アースウォールについては十分合格と言っていい。いやあ、さっきの子が物覚えが良すぎたから、その次に君みたいな教えがいがある子が来てくれて、よかったよ」


 MP回復薬6つ(3000ゴールド)を使い切り、終了時間を大幅にぶっちぎった一時間にわたる指導の末、無事目的の魔法を思った通りの形で習得することに、僕は成功した。代償は大きかったが、それでも一歩前進したと言えるだろう。お金は、まあ、うん。ちょっとムキになりすぎました。今は反省している。

なんだかブックマークが100件いきそうです。皆さん本当にありがとうございます。

ブックマークが増えていたり、評価を入れていただいたり、感想をもらえたりというのを見たら嬉しくて、頑張ろうっていうモチベにすごくなりました。これからもどうかよろしくお願いします。


100目前記念に、書き溜めがあったらもう一回更新しようと思ったのですが、書き溜めが何度見てもないので今から書きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ