表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲームの中で魔王から世界を救おうと思ったらジョブが魔王軍のスパイだった  作者: うちうち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/113

戦後処理と、これから

 熊を倒したことで、僕のレベルが4から9に上がった。やったね!あとでゆっくりステータスを見よう。あとはドロップは……?あれ、ない……と思ったら、熊のいたあたりに何か落ちている。毛皮?っぽい。上級魔族は死んだら皮を剥がされる可能性があるのか……絶対死ねない。


「ありがとう。助かったよ。掲示板には吠えてくるなんて載ってなかったもんで……」


 剣士(男)がユウさんに握手を求めてきた。確かに先行組三人だと初手で全滅してた可能性もあるもんね。とにかく倒せてめでたいけど、あの熊と再戦したときに自分が生き残る自信はまったくなかった。


 ……それにしても、掲示板か。きっと攻略組が最初に熊と戦った時も開幕直後にあの咆哮はあった可能性は高い。開幕タイダルウェイブみたいなもんだろうし。その情報を攻略組が載せなかった気持ちはわかるので、むしろ仲間を呼ぶことを書いてくれただけでも親切な方だと思おう。……そう僕が思っていると、ユウさんが僕の方へ手を向けながら堂々と怪情報を彼らに吹き込んでいるのが聞こえてきた。


「この子があなたたちを助けようって一番に駆け寄ったから、お礼ならこの子に言って。ボスを操ってたのもこの子だし」


 なんかその表現だと僕がボスの後ろにいた黒幕みたいに聞こえるからやめてほしい。あと、間違ってる部分を訂正したい。僕をそんな博愛精神の権化みたいに言われると今後やりにくくてしょうがないし、何より気持ち悪いのですごい嫌。素直に事実をありのままに伝えよう。


「いえ、駆け寄ったのは弱いボスを横取りして倒そうとしたからで、実際見たら強そうだったので、そのあとはあなたたち三人がやられてる間に逃げようと思ってました。魔物を操ったのは、……そう言えなくもないかな、くらいです。ほとんど何もしてません」


 実際3回しか操れてないしね。それを聞いて剣士(男)はどちらを信じたものかとユウさんと僕を何度か交互に見て、大きくうなずいた。わかってくれたか。


「わかった、そういうことにしておこう。でも結果として助けられたのは事実だし、三人を代表してお礼を言わせてくれ。ありがとう」


 そう言って剣士は僕に頭を下げた。全然わかってなかった。今、明らかに僕よりユウさんの方を信頼しただろう。お前いつか偽物の油絵とか買わされるから気をつけた方がいいと思う。





 そして、ドロップ品である熊の毛皮について。なんだか満場一致で僕に譲っていただけるらしい。くれるものならもらおうかな、と思ったけど次の瞬間すごくまずい絵面が僕の脳裏に浮かんだ。僕の部屋に飾ってある上級魔族№50の熊の毛皮の敷物。ふかふかなその上に僕が寝転んでいると、そこに報告を求めて現れる上司アルテアさん。敷物にされた元同僚とその上でくつろぐ僕を見て、アルテアさんは何て言うだろうか。「あら、おしゃれな敷物ね」とはたぶん言ってくれないだろうし、「うっかりしてました、次から気をつけます」で済まされる場面ではさすがにない気がする。まさしく修羅場、というのが正しい。


「そんなものいただいては死んでしまいますので、結構です!!私もらいませんよ、絶対!」


 自分でした想像ながらそれは非常に恐ろしく、僕は大声で拒否し、首をぶんぶん左右に振りながら両手を前に出してNOの意思表示をする。リアルにやばいから。というか討伐したパーティーに僕の名前入ってたりしないよね。公表されたりするの?入ってたら認識阻害で無理やり改ざんする必要がある。これがバレた瞬間に上級魔族はもう1名減るだろう。プレイヤーに討伐されることなく。


 そこで渡そうとする僕以外のメンバーに対して断固拒否の姿勢を崩さない僕の間でしばしやり取りはあったものの、最終的にはユウさんに毛皮は譲られることとなった。僕は魔術師のお姉さんも活躍っぷりではひけをとっていないと思ったんだけど、まあ自分に来なければもうなんだってよかった。一件落着。






 そして、全員で固まって、森の出口へ向かう。できればトカゲとカマキリは倒してほしくないな、戦友みたいなもんだし。その祈りが通じたのか、何度か犬の集団と戦闘にはなったものの、それ以外とは戦うことなく森の外へ出ることができた。きっと、あの広場に森のトカゲとカマキリは多数が集結していたのだろう。僕は森を振り返り、共闘して散っていった彼らに哀悼の意をささげた。僕が彼らに交じってそうなっていても、決しておかしくなかったから。


「おい、そろそろ行くぞ」


 ヴィートがこちらを呼んでいるのに振り向き、始まりの街へと帰る道を小走りに追いかけた。一人になったら死んでしまう。……そういえば、レベルアップしてたっけ。どうなったのかな。確認!



〈ステータス〉(偽装中)

名前:サロナ

種族:人族

レベル:9

ジョブ:催眠術師

攻撃力:13(3+10)

防御力:16(2+14)

すばやさ:12

魔力:7

運:3

HP:5

MP:8



 ……うーん、微増。防御力とかまったく増えてないし。誤差の範囲内と言っていい。これから、どうしよう。それだけを始まりの街まで、ずっと考える。……今日も、生き残れた。ただ、それはたまたま。このままだと恐らく近いうちに僕は死ぬだろう。HPが少ないこと、防御力が上がらないこと、回避し続けるだけのすばやさもないこと。安全地帯だと思っていた木も絶対でないことが証明され、これから平地で戦うことの方が多くなるだろうこと。そして、自分がこれから死なないだけの注意力を常に発揮して行動できるような気もしないし。だから、きっと、これは違う手段をとる必要がある。レベルアップ以外で死なないための方法を探す必要が。街でみんなと別れ、自分の宿に帰るときまで、そのことがいつまでも頭を離れなかった。うーん、どうしたものかなぁ。まあゆっくり考えよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ステータスが1以上上がっていて感激です
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ