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ゲームの中で魔王から世界を救おうと思ったらジョブが魔王軍のスパイだった  作者: うちうち


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エピローグ(2)

本日2話目です。

すみません、(2)で終わりませんでした。

もう終わりです。本当です。最後まで入れると視点が変わりすぎて読みにくいので、ラスト1話だけ!と言いつつ内容は書いてないので今から書きますけど。

ご都合主義と言われる気はしても、こういうラストにしたかった。

 胸の痛みは軽くなったものの、MRIでの診断結果ではあまり良くなっておらず。それでも段々と歩くことに違和感を覚えなくなってきた、そんなある日。僕は運営から呼び出された。


「あなたにいくつかお願いと、お伝えすることがあります」


「はい、何でしょう」


「実は……」


 一応全員が目覚めることはできた。前触れもなく昏睡者全員が目覚め、また、彼らの負っていた体の損傷も治っていたという。それは『まるで魔法のようだった』と、運営は話した。それを聞いてちょっと複雑になる。結局、あいつの台詞何やってん。


 ……そして、一個気になることがあるんだけど。僕の肺、めっちゃ傷残ってるみたいなんですけど。月2の通院生活決定らしいんですけど。……何これ、嫌がらせかな?ひょっとして、ナース服で人望下げる作戦のこと、根に持ってるのか。意外に器の狭い奴である。……まあこういう台詞はやった側が口に出すもんじゃないので言わないけど。




「そして、お願いというのは、今回の件についてなんですが……」


 ……そこでされた「お願い」を簡単にまとめると、こう。元々のゲームが、こういうシナリオだったということにしてほしい。プレイヤーに裏切った魔族が協力したりもするよ、閉じ込められる、っていうのも演出でした!皆で頑張ろう!みたいな。……うん、駄目だと思う。それで納得する人なんて存在するの?


「いえ、幸い誰も亡くなられてはいませんし、全員意識を取り戻しておられます。テストプレイヤーに負傷者もいませんしね」


「ここに!一人いますけどねえっ!」


 僕はバンバン!と机をたたいて不満を述べる。いやいやおかしいだろ。本人の目の前でよく言えたよね。


「すみません、言葉足らずでした。あなたが運営の一人だったと、そういう形にしていただきたいのです。ゲームの管理者として演出側で参加していた、ということに。細かい説明は私どもに任せていただけたら」


「……正直、メリットがありません。嫌です」


「こちらからその見返りとして、あなたに管理者として実際これから関わっていただきたい、とそう思っています。AI側の管理者的存在も、あなたなら、という意思を示しているようですし。製作者が消えた今、私達だけでは制御しきれない部分もありまして……。……私たちも、この構築された世界を、消したくありません。都合のいい要望だとは承知の上で、それでも、お手伝いをどうかお願いします」


 ……その言葉は、嘘じゃないと思う。心の中でもサロナがその判断に同意する。……もう一度、あの世界へ。思ってもみなかった、選択肢だった。でも、すぐには決められない。説明がうまくいくともあんまり思えないし。



「今の話については、即答していただかなくても結構です。……あと一つ別件として、あなたに伝言を頼まれています。四名のテストプレイヤーの方から」








 ……テストプレイが終了してから、既に2週間。僕は夏真っ盛りの外の景色を見ながら、コンビニの窓越しに街の一角を眺めていた。だって、外、すごい暑そうだし。……退院して外に出た瞬間、思い出したよ。今ってそういえば夏だったんだって。


「あなたに、会いたいと。……もしそれがすぐには難しいなら。2週間後に、パーティーのメンバー全員で集まるから、よかったら顔を見せて欲しい。そう、伝言を承っています。四人とも、ほぼ同じ内容のメッセージです」


 僕は様子を見ながら、その伝言内容を思い出す。……正直、顔を出す資格ってないんじゃないかなぁ。ならなんで来たんだよ、ってなるけどさ。みんなが元気な姿を見たいし。それだけで、いいかな。うん。それに、僕だよ僕僕、って言って近づいていっても、信用してもらえる気がしない。


 ……それとなんだろ、段階をすっ飛ばしてるというか。サロナの姿の時に「実は現実では違う姿なんです……」って言うのと。僕が今いきなり行って、おっす、って言うの。やっぱり罪深さが違わない?唐突度の差っていうか。……え、おかしいかな?この価値観。大丈夫だよね。






 そうしてしばらく眺めていると、まずナズナが現れ、そのまま立ってあたりを見回しているのが見えた。日傘をさして、そのままじっと立っている。なぜ集合時間の二時間前なのに既に来ているのか。不思議である。……なんだか、ゲームとほとんど一緒な顔が現実世界に溶け込んでると違和感がすごい。いや、こっちが本当なんだけどさ。



 そこから30分くらい経ち、ヴィートらしき青年が現れた。うむ、チャラい。でも中身はちゃんとしているのを僕は知っていたので、別に気にしない。そのまま二人は何事かを話している。ナズナが首を振り、二人で話しながらそれでも立って、待ってる。……近所の喫茶店とかに座って時間まで待つ、とかしないのか。いいけど。



 そして30分前にユウさんが現れ、時間ちょうどにギャレスが来る。4人とも元気そうだった。……これで全員揃ったから、どこかに行って、いろんなことを話すだろう。僕は既に運営を通じて、「行けない」という返事は出してあったから。……僕がそこにいないのはちょっと寂しいけど、自業自得なので、我慢。でも、なかなか4人は出発しようとしなかった。よし、いなくなったら僕も帰ろう。




 ……信じがたいことに、一時間経っても彼らは出発しようとしなかった。なぜだ。でも何となく、分かるような気がした。来るまで待つつもりだ。来ないって言ってるのに。もう全然この人たち僕の話聞かない。……でも、それは自分自身もそうなので、お互い様だった。


 ……え、これどうするの!?だってもうナズナとか3時間立ちっぱなしなんだけど!……どうしよう……。








「暑くないか」


「いえ、全く」


 『ヴィート』はそう尋ねるが、『ナズナ』には一言で返される。疲れていない訳がないと思うが、それ以上はもう何も言わない。気持ちは同じだった。……ここで、来ないまま行ってしまうと、彼女には二度と会えない気がした。



 来ないと言いつつ、ひょっこり顔を出すのではないかと、そう思ってしまう。……「来ないって言ったのにもう忘れたんですか?」とか。そう想像して、『ヴィート』はちょっと笑った。それを『ナズナ』に見とがめられる。


「私のサロナちゃんで妄想しないでください」


「妄想はしてねぇ!」


「どうだか。分かってるんですよ、サロナちゃんのこと大好きでしょう。渡しませんからね」


 じろりとこちらを睨んでくるその目は、三時間立っている人間の目とは思えないほど力があった。『ヴィート』はそう言われても、と肩をすくませる。


「ああ、大好きだぞ。でも、あいつには、ちゃんと面倒見てやれる奴の方が合ってるんじゃないか?」


 そう返すと、『ナズナ』はちょっと目を丸くした。まさか認めるとは……という呟きが漏れる。それに対してちょっと勝ったような気になり、『ヴィート』は残りの二人に対しても、尋ねる。


「二人は大丈夫か?」


「今の話を聞いて大丈夫になったわ!一晩頑張れそう!……若いわぁ。青春ねえ……」


「なら俺はあと3日は立てるぜ」


「そうか……あとそんなに年変わらないだろ!」


 そう話しながらだと、まだまだ待てると、そう思った。そんな時、声がかけられた。


「あのー……」




 『ヴィート』が顔を上げると、そこには一人の青年が立っていた。優しそうだが目立たない、けれどどこか不思議な雰囲気を持って、まだおそらく20歳にはなっていないだろうと感じさせる見た目。そして、『ヴィート』は、どこか彼に対して懐かしさを覚えた。初めて会うはずなのに、と内心で首を傾げる。とりあえず、返事をしよう。


「俺たちに、何か用かな?」








「俺たちに、何か用かな?」


 と『ヴィート』が僕の呼びかけに答える。うん、用、ある。早く行ったらいいのにって、そう言いたい。ほっとけなくってつい来ちゃったけど、ここからどうしよう。なんかこのままだと一晩立ってそうだし。……いや、それはさすがにないか。


 一瞬、サロナです、って言おうと思ったけど、皆の「誰これ?」っていう視線に耐え切れず、その意思はすぐに消えた。ごめん。……よし、やっぱり適当なことを言おう。『サロナ』がみんなだけで行って、と言えばそれでいいんだろう。OKOK。


「実はですね。さっき、『サロナ』って名乗る可愛い女の子に呼び止められて、皆さんに伝言を頼む、と言われました」


 そう伝えると、皆はすぐに反応した。それにちょっと罪悪感を覚えながら、僕は続ける。


「『みなさん元気そうで何よりです。今日も誘ってもらってとても嬉しかったんですけど、行けません。まだちょっと体調が悪くって、長時間外に出られないんです。だから今日は皆さんだけで、楽しんできてください。またいつかちゃんと話せると嬉しいです』って」


 体調が悪いのは本当。胸がそろそろ痛んできた。物理的な意味で。


 そう伝えると、皆はすごく喜んでいた。コメントの内容は100%僕本人の言葉なので、それで納得していただきたい。ほな、また……。僕は皆に伝わったことを確認し、その場を離れようと背を向ける。





 すると、ガシャン、とどこかから音がした。……ん?なんかこの音、聞き覚えある。なんだろ?

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