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探求者の記録簿(メモリーログ)  作者: Liis
守護者の鍵継承
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怪鳥

 雄叫びを前にハックは振り返ざるを得なかった。

 そこには、鳥が禍々しさの漂う凶暴性極まりない存在へと変貌を遂げていた。


「馬鹿な、何て大きさだ。少なく見積もっても8メートルは余裕で超えている。

 お前、一体何をした」


 ハックは少女の襟元を掴み尋問をした。


「私はただ、彼を解き放っただけ。私はもうなにもしない。なにも出来ない。ただ、エネルギーが切れるまであなたを遅い続ける。

 私はあなたから森を守らないといけない」


「待ってくれ。一体いつ俺が森に危害を加えた?」


「火起こした。ここにはもう世界ではほとんど残されていない貴重な植物が多くある。もし火事になったら種そのものが絶滅してしまう」


「成る程、ここでは火を起こす事が禁断の事だったのか。無知ですまなかった」


「あなたみたいな人初めて見た。いつもは、彼でやめさせようとするけど、外からくるひと皆警告無視する。逆に襲いかかる。

 だから、力をリリースした。

 でも、私やってしまった。彼は私の事が見えていない。あなた倒す。それしか考えてない。

 手がつけられない」


「聞いてもいいか」


「後少しで彼が暴走する早く言って」


「彼に怪我をさせてしまうが大丈夫か?」


「彼、殺されても祠から帰ってくる。依代そこにある」


「それじゃあ遠慮なく行かせてもらう」


 ハックは落ちている統括者のペンを拾いまだ完全に動き出していない怪鳥に近づきライセンスナイフを首元に突きつけた。


「鳥はまず首を切り落とす。鶏程度であればこれで切り落とせるのだが、首が太すぎて刺すので精一杯だ」


 この攻撃は微塵もダメージを与えられずにハックは吹き飛ばされた。


「なんて威力だ。俺じゃなかったら一撃で逝けるぞ」


 瞬時に受け身をとったので無傷ですんだ。

 怪鳥は足で周囲に生えている樹木を抜き取りハックに投げつける。


「しまった。流石に回避も防御もとれない」


 絶体絶命かと思われたが‥‥。


 運良く、枝と枝の間に当たる場所に入り込めていたので無事でいれた。


「困ったことに身動きがとれない。ナイフ程度では木を切るのに時間がかかる。

 それに、ヤツが木と俺の上に乗りやがった。このままでは圧死してしまう」


 一難去ってまた一難。まるで何もかも計算されていたかのような攻撃にハックは苦しめられている。


「仕方がない。うまく使えるかどうかは知らないが、やってみるしかない。

 ペンは剣よりも強し、統括者の名の下に"統括者の業"の運用方法を改変する。

 ただいまをもって、"統括者の業"は攻撃兵器へと運用方法を変化するとする」


 統括者のペンは"統括者の業"のコントローラの役目を担っている為指示さえすれば大抵の事ができる。

 ただし、これがペンであるため何かに書かなければならない。

 今の現状懐から紙を出すことはかなわないし、インクも同様に持ってはいるが使う事はかなわない。

 だから、血をインクの一滴とし、手の甲を紙として書き込んだ。

 すると、ゴゴゴゴゴと大きな音をあげながら空中からなにやら接近してくる。

 "統括者の業"だ。だが、その姿は普段の姿とは一変したものであった。


「あれ、鋼鉄の巨人。逸話で聞いたことがある。今まで何人として動かすことが叶わぬ兵器。

 その力、強大ゆえ、人の身で操ること叶わず。

 その身、意識と共に飲み込まれる。

 されど、その力。人知を越える。

 危険、絶対撤回希望」


「撤回? 冗談言わないでくれ。これが最善の方法だ。俺なら出来る。やってみせる。やれて当然なんだ」


 ハックが瞼を瞑りながらペンを握ると、"統括者の業"は斜めに急降下して怪鳥に蹴りをかました。

 あまりに強大な力を前に怪鳥は体を支えきれず横に飛ばされた。


「ヤツが動けないうちに、俺に乗っている無残な木材を退かすんだ」


 巨人は、巨大な手のひらで巨木を掴み怪鳥めがけて投げつけた。


「これはすごい。こいつさえいれば大抵の事は出来そうだ。だが、何かがおかしい。俺は、あくまで木材を退かせと命令しただけだ。まさか、暴走しているのか?」


 ハックは、"統括者の業"の動作音に耳を傾けた。


「"統括者の業"の動作クロックが落ちている。どうやら、エネルギー切れの兆候が現れているようだ。

 そうか、ここにはエネルギーの供給者が居ないんだ。おおよその見積りで後3分が精一杯か。

 仕方がない、3分で決着をつけてやる!」


 察したと同時に、巨人に怪鳥の首元を掴ませようとした。

 しかし、奴はそれをものの見事にかわして見せた。

 そして仕返しとばかりに怪鳥は羽ばたき口から何かを巨人に向け発射させる。だが、それはコンッと軽くぶつかり地面に落ちる。


「あれは、地底遺跡で見たことがある。聖霊の力の宿っている種子だったが‥‥。何故あいつが持っているんだ?」


 巨人の足元に巻かれた種は急激に発芽し足にまとわりついた。


「クソッ完全に身動きがとれない。残り2分を切った。策を考えなくては、いけない。

 確か、以前にアルスが自分流の解決策の見つけ方を聞いたな。それにならってみるか。

 今回の目的は怪鳥の殺害だ。ナイフではリーチが短くて切断どころか大動脈の切断すら出来なかった。

 その為、"統括者の業"を用いて撲殺を試みた。しかし、種子によって身動きがとれなくなった。

 現状使用できる武具はライセンスナイフとロープしかない。ロープでは首を絞める事はかなわない。

 結局のところライセンスナイフしかないわけだが、それは無理に等しい。

 ここで、考え方を変えてみるとするか。

 ライセンスナイフでは切れ味が足りず刺すことしか出来ない。

 切れ味を良くすることは現状不可能に等しい。

 だから、逆の視点で考えよう。

 首を切れないなら、他の部位はどうだろうか?

 外見を見るからに、切断できる部位は存在しない。

 待てよ‥‥。あるじゃないか。どれ程頑丈な生き物であれ柔らかいところは存在する。

 今はちょうど巨人が囮となっているからできるはずだ」


 身動きのとれない巨人は怪鳥に教われている。

 ハックは、ロープを使い付近の樹木に登り怪鳥めがけて飛び込んだ。

 ハックは怪鳥の口に飲み込まれた。

 そして直ぐ、怪鳥は苦しみながら息を引き取った。 

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