謎の鳥
アルスが地下都市に向かってから幾時間が経過して太陽が隠れ辺りは闇に閉ざされていた。
この状況下で過ごすのは、獣に襲われる可能性が非常に高い。その為、薪をくべようとした。
残念ながら、火打石を持ち合わせていない為、摩擦によって火種を作る原始的な方法を取らざるをえなかった。
仮にも調査員のカーストを持っているハックには容易な事の為、ものの数秒で煙があがった。後は、薪に火を移させるだけだと思っていたその時、空からバサバサっという羽根音が聞こえた。
「珍しいこともあるものだ。鳥が自ら近づいてくるなんて」
その鳥は鷲のように大きな翼を広げ大きく風を起こす。規格外な強風に火種は消えてしまった。
そして、鋭利な爪を向けてハックに襲いかかった。ハックは、油断していたので回避が遅れ頬から血を流すことになった。
「鳥は夜になると目が見えないと聞いたことがあるが、あれは嘘だったのか!
仕方がない。理由は知らないが、襲われた以上はこちらもそれなりの対応をしなくてはならない」
ハックはこの暗闇では目が見えないので瞼を閉じて五感いや、四感を研ぎ澄ましてその存在の有りかを探った。
「何だ? この鳥は見たことがない。実際には見えてはいないのだが、まるでキメラのような体構成になっている。遺伝子組み換えの獣は人間に害を与えられないように調整されているはずだ」
ハックは現状を認識出来ていなかった。今までの常識が全く通じないものがそこに存在していることに。ここ数日に起きた大抵の非常識なことは、受け入れる事が出来たが、これに関してはどうしようもない。何せ言葉が通じないのである。人間で有ろうとなかろうと会話の出来ないものを受け入れるのは容易ではない。
「全く持って訳がわからない。こうなったら論理的思考をしよう。
鳥が人を襲う‥‥、違う鳥が狩りをするのには理由があるはずだ」
もう一度鳥が襲いかかった。ハックはライセンスナイフを鞘から抜き取り鳥を切りつけようとした。
だが、何か硬いものにぶつかりナイフは跳ね返されられた。
「この鳥、何かを首からぶら下げているぞ。この音は自然由来の物の音ではないな。まるで合金のような音であった。自らこのようなものをつけるわけがない。
この鳥、飼われているな。この動きも訓練されたものに違いない。
ならば、主が近くにいるはずだ。主さえ人質にすれば鳥は襲うことが出来なくなる。その為には場所を特定しなくては。俺の反撃見て鳥が胸飾りに攻撃を当てた。この事実から考え出すと自然的と位置が割り出せるはずだ。
鳥と俺そしてナイフを同時に見える場所はここしかない」
ハックは統括者のペンを主に向けて真っ直ぐダーツのように投げつけた。
「きゃっ!?」
幼い少女のような声が聞こえた後、ボトと落下する音が聞こえた。
それと同時に、鳥は狩りをするのをやめて高枝に掴まった。
また指示を送られる前に操るすべを使えなくしなくては、そう思いながら主のもとへ向かった。
「まさか、こんな小さな子だったとは」
ハックを襲った正体は年はテクノ位のブロンドヘア少女だった。ハックを睨みながら右手に隠し持ったバードホイッスルを咥える隙をうかがっている。
「それで鳥を操っていたのか。お前は何者だ?
何故俺を襲った?」
威圧するようにハックが問いかけると、天敵に補食される前の獣のようにびくびくと体を震わせた。
少女はあまりの怖さに、バードホイッスルを持つ手をあげることが出来ない。
「また襲われたらたまらないからな、それは預からさせてもらう」
強引にそれを奪い取った。
「もう一度聞こう。狙いはなんだ?」
「リ、リリーース」
少女は力を振り絞り叫んだ。すると、あの鳥が雄叫びを上げた。