オペレーションHATE(エリック視点) パート2
私は五点着地法で怪我をすることなくしたまで着いた。
「どうかなされましたかな」
近所のご老人だ。
なぜだか治安維持装置が働かなかったのでこの老人に助けを求めよう。
「実は……」
「ぶちのめすぞ糞爺」
私が言いかけた瞬間、誰かが私の声を書き消した。俺と同じ声で。
「ひぇぇぇぇー」
老人が走って逃げ出した。
「ち、違う。私ではない」
老人に声は届かなかった。
そして衛兵が現れた。
「エリックよ、ソナタには脅迫をした容疑がかけられている。ちょっと関所までご同行いただけますかな」
周囲に人だかりが出来始めた。法を破らなければここから離れることができない。私は札を1枚取り出した。
「これを見よ! 王族にのみ発行されている免罪符だ。ここを退いて貰おうか」
「ははぁ」
衛兵に渡すと道が開いた。
とにかくフリントかミストと合流しなくてはならない。何か乗り物はないかと周囲を見渡すと自動車があった。
「これやるから車をくれ」
強引に車を奪った。
もちろん免罪符も渡した。
枚数は残り8枚だ。
この車は自動運転だから私のような人にでも動かせる。
街を走り出した。目的地はエンジニア実験地区だ。
これで一安心だ。
そのはずだが胸騒ぎがする。
ハンドルを見ているとおかしな挙動をしている。まさかと思い正面を見ると行き止まりの方向に進んでいた。
私はドアを乱暴に開けて身を投げ出した。この判断が項を奏し、車は衝突して爆発したが、私は無傷でいられた。
騒ぎを聞きつけて衛兵がまた現れた。免罪符を2枚渡した。自動車の破損と、建築物の破損で2枚だ。残り、6枚。
「治安維持装置が働かないぞ。どう言うことだ?」
私は衛兵に問いただした。
「治安維持装置は法に従って正常に動作しております。ご覧下さい」
衛兵は治安維持装置に小石を投げつけた。すると、石がぶつかる前に治安維持装置が動き、ショックガンから火花が飛んだ。
「正常に動作していますよ」
そんな馬鹿な!? 正常に動作しているだと……。私はこの地区の法は全て把握している。だというのに、私に不利になる法ばかり正常に働き、有利な法のみ働かない。何故だ。何故なんだ。
「エリックさんが取り乱すなんて随分と珍しい事も有るもんですな」
「その声はフリントじゃないか。ちょうどいい。力を貸してくれ」
私は事情を全て話した。
「承知した。そやつらを倒せばいいんだな。エリックさんは廃棄区画に逃げ込むとよいですな」
廃棄区画は、要はスラムの事だ。スラムは特別処置として無法地帯になっている。一見すると危険極まりない場所であるが、今の状況だとスラムのほうが安全だ。
フリントが指を鳴らすと地区の中央上空当たりで何かが爆発した。
周囲にいる人は皆爆発の方に気が行っているうちにこっそりとスラムに移動した。