オペレーションHATE(エリック視点) パート1
私の名前はエリック。王族の一員にして保守協会のリーダーだ。最も、王なんてものは飾りに過ぎない。このセンターパークという地は、4つに別れていて、それぞれに独立した自治政府が存在している。
自治政府だから、国ではない。
例えるならばアメリカ合衆国のようなものだろう。
この地は王政では無いため権力はない。ただ、末裔だと表すものでしかない。その末裔だって大勢いるために、末裔なんてものはありふれている。
そんな私は、ある日ミストと名乗る人に「王政を取り戻さないか」と誘われた。初めはただの冷やかしだと思っていたが、彼はこの地にかつて保守協会と言うものがあり、大陸を支配する事で守っていた事を私に教えてくれた。後日、先代の記録を調べると彼の言っていたことがそのまんま書いてあった。私達王族の復興をこれほどまでに望む者がいるとは今まで考えもしなかった。それから若者を3人仲間にした。
自分の思い通りにいかなくて路地裏で乱闘を起こしていたならず者リーグ。
脅威の視力そして遠距離武器では必ず当てる程の才能を持っているが、平和な世の中では意味を持たずに才能を腐らせていたプランジャー。
人に見た目の事で産まれながら責められ続けて人間不信に陥ったテクスチャ。
まだ体が小さい子どもながら呟くだけで人の注目を集めてしまい声を出せなくなるほどに精神が疲れきってしまったフリント。
皆、はぐれものだった。
しかし、ミストの手助けのお陰で皆自分を取り戻した。そして優秀な部下になった。
ミストの言う通りにしていくと段々と人が集まり、地区を制圧出きるほどになっていった。
地区を全て制圧してセンターパークの実質的な王に私はなった。
しかし、私達にとって唯一の敵がいた。私の先祖の双子の弟ハテノの子孫達だ。ミストが言うには、ハテノは元は保守協会の一員であったが、途中で脱退して協会に敵対していたそうだ。
それも、未知なる力を使ってだ。
対抗策としてリーグに念導エンジンを託したが、リーグは再起不能になったらしい。テクスチャが昨夜に私に伝えた。詳しくは知らないが、惨い事になっているらしい。
私は仲間の仇を取らなくてはならない。
コンコン
扉を叩く音が聞こえる。
「誰だ?」
「アタイからの連絡だよ。エンジニア実験地区でプランジャーがミチュールの狙撃に成功」
「それは良かった」
「しかし、プランジャーは爆発四散してお亡くなりになりました」
「なん……だと」
「ミチュールも息を吹き替えし、ハンター育成地区全体に逃げ帰りました」
ハンター育成地区は、ハックという若者の私物と化していて我々は立ち入る事ができない。
「ハンター育成地区のハックが面会を希望しています」
あっちから乗り込むとは命知らずな奴らだ。
「いいだろう。連れてこい」
「御意」
しばらくすると部屋に1人の若者がやって来た。その後ろに執事が2人立っている。
「初めまして保守協会のエリックさん、私はハンター育成地区の統括者のハック・イノセントと申します。以後お見知りおきを」
ハックと名乗る者は万年筆を服に引っ掛けている。統括者のペンを持っている以上、本物だろう。
「これはこれはハックさん、本日はどういったご用件で来られましたのかな」
今すぐにでも手を出したいがこの地の法のせいで手を出せない。
「前任者のリーグがハンター育成地区の税金から、保守協会に多額の資金を横流ししていた事について説明をしてもらえるでしょうか?」
資金の横流しだと、私は初めて聞いた。
「その件につきましては調査をして後日ご報告します」
「では、一筆いただけますか?」
ハックは私に統括者のペンを渡した。
このペンはハンター育成地区にある巨大な念導エンジンに命令を入力するデバイスとなっている。最も、ここではただのペンでしかないが、いったい何を企んでいるんだコイツは?
私はペンを受け取った。
「次の通りに書いていただきたい。私ことエリックは、保守協会の会長であり、リーグは私の部下にあたる人である。私はリーグが横流ししていたかどうかを第三者機関による調査を行い、事実確認ができしだいそれに応じる事をここに書き記します。
これを書いていただけますか?」
書くことは容易い。しかし、書き終えたら最後、それを取り消すことはできない。それがこの地の法なのだ。
虚実を書くことも許されない。
なので、やることは1つ。
「書面は私が考えます。私はリーグにハンター育成地区の制圧の任を与えました。ハンター育成地区では統括者のペンを所持している者が独自に法を施行する事ができ、その法に従い資金の横流しをしていたと考えられるため保守協会はその事に対して責任を負いません。そのため、統括者の行動に対しての責任は当人に求める事とする。
内容は違うがこれで良いでしょうか?」
「大丈夫です。では、綴っていただきます」
何なんだいったい? 交渉にきたと思っていたが、内容を思いっきり変えられても全く動じていない。
目的がまるで読めない。
綴ると承諾したので私は紙に綴った。
「有難う御座います。では、ここで"私は"おいとまさせていただきます」
ハックは強調して言った後部屋を去っていった。
「テクスチャここにいるか?」
呼び掛けると特殊スーツの電源を切り、姿を表した。
「アタイに何のようだい?」
「目の前にいる黒服どもを追い出してくれ」
部屋にはハックの執事が直立不動で居座っている。
「私達は先祖代々王家に仕えるものでございます。自己紹介がまだでしたので、ここで紹介させていただきます。
私の名前はキャップと申します」
「同じく、インクと申し上げます。以後お見知りおきを」
執事は自己紹介をした。
今の保守協会とは違い、正式な王家の支援者のようだ。
「さっきの命令は取り消す」
「御意」
テクスチャは再び姿を消した。
「つまりは、私の僕でもあるんだな」
「その通りでございます」
「ならば、保守協会の会長として命ずる。保守協会に抗う者を根絶やしにしろ」
「承りました」
執事のキャップが私に切りかかった。紙一重でそれをかわした。
「突然何をするだー!! テクスチャ捕縛しろ」
「御意」
テクスチャがワイヤーロープを投げるとクルクルとキャップの周囲を回り、彼を捕縛した。
「見えた。すまないが、眠ってもらおう」
テクスチャが油断した一瞬の隙を突き、インクが彼女の背後に回り込み、首の後ろをトンッと叩き、気絶させた。
「「All green」」
キャップは縄脱けのようにワイヤーロープをほどいた。
「衛兵はいないのか!?
明らかに犯罪行動をしているぞ!!
彼らを地下送りの刑に処してくれ」
私は部屋の窓を突き破って外に脱出した。
「「Mission complete」」