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探求者の記録簿(メモリーログ)  作者: Liis
保守協会の謀略
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汚れなき本心

アルスたちを空間の間に送り込んだあと、俺ことハックは一つ問題を抱えていた。


「ねえ、アルスは無事なのよね」


クリスタが俺の襟元を掴んで言う。


「早く姉さんに謝ったほうが身のためです。アルスの事になると姉さんは手がつけられなくなるです」


テクノは警告を俺にした。俺は正直にいってクリスタの事を全く知らない。そんな俺にクリスタと一緒に住んでいたテクノが脅えながら伝えてきた。

この場から逃げ出すことは容易い。だけど、俺の引き起こしたことから責任をとらないわけにはいけない。

ここは、潔く謝ろう。


「すまないクリスタ。俺はお前に何も話さずに行動してしまったばっかりに不安がらせてしまった。お前の気持ちはよく分かる」


「あなたに私の何がわかるの! アルスは私にとってかけがえのないひとなのに、いきなりどこかに飛ばすなんて酷い。あまりにも酷すぎる。冷徹野郎。ゴミ、カス、人間のクズ」


クリスタが罵声を浴びせてきた。彼女からしたら愛する人をどこかわからない所に送ってしまった(かたき)の人だろうな。だが、俺だって言いたいことはある。


「お前がアルスのことが好きなのは知っている。like じゃなくてlove だと言うこともな。だからアルスのことが心配で心配でたまらないんだろう。当然だ。

俺だってアリウムの事が心配なんだ。俺だって恋をしているんだ。だからこそ、アルス達を巫子様の所に送ったんだ。元々の二人に戻って早くアリウムに会いたいからだ。

お前だってアルスに会いたいだろ? あの姿のままだと俺とお前が1人を奪い合う三角関係になるだろうな。

そんな事は誰も望んじゃいない」


俺の言葉を聞いたクリスタは、襟元から手を放した。


「ごめんなさい。私とんでもない勘違いをしていたみたい。それにアルスの事ばかりに目がいってアリウムの事には気が回らずに私って酷い人」


「俺はそうとは思わないな。愛する人の為に何も気にせずに行動できるなんて素敵じゃないか」


クリスタは顔を赤く染めてにこにこしながらこういった。


「そ、そうかなー。そう言われると照れちゃうな。ははは。なんかハックにときめいちゃいそうだよ。ははは天……」


「これ以上姉さんを口説くのは止めるです。別の意味で手がつけられなくなるです」


会話にテクノが割って入った。


「ハックは知らないと思うけど、クリスタはこう見えて誰かに褒められると嬉しくて堪らなくなる子どもみたいな所があるんだよね」


ミチュールさんはこんなことを教えてくれた。

クリスタが生まれ育ったハテノ村は、酷すぎる過疎具合で、アルスとテクノを守るためにお姉さんにならなくてはならなかった。そんな責任感から子どもでいることを、子どものうちにやめて無理に大人になろうとした。さっきのように感情が暴動したのも、子どもであることができなかったからこそ、根の子どもらしさが出てしまうのだ。 なぜか知らんがそんなことが察せれた。


「子どもじゃないもん。プンプン」


クリスタはほっぺたを膨らませて言った。

やっぱり女の子なんだなクリスタも。


「姉さんのこんな顔初めて見たですです」

「私が村にいた頃のクリスタはこんな感じだったかなー」


こんな会話をしていると部屋の入り口を叩かれた。


「誰だ!」


「私達は、ハンター育成地区統合センターから来ました職員の者です。新統括者の方にお伝えしたい事がございます。入ってもよろしいでしょうか?」


「入れ」


部屋には2人の男性職員が入ってきた。


「じっくりお伝えしたい事がございますが、お忙しいようですので、こちらの方から話をします。

私達の一族は大昔にとある王子からこの城の管理を任されたものです。その王子の名前はハテノ・イン・バーター。あなた方には馴染みの名前だと思います。

彼は王子でありながら、権力にはいっさい興味がなく、自ら王位を放棄して王になりたい者がこの地を治めるという事柄をあの巨大な念導エンジンまたの名を統括者の業によって決められました。

それからと言うもの、王は変わり続けて気がついた頃には、力が支配する独裁的な象徴になっていたのです。

私達は独裁的な事には何も言いませんが、権力の暴動を防ぐ為に、私達は政治に関わってきました。

しかし、前任の王の暴動を防げなかったのには理由がございます。彼の所属する組織は、旧文明時代にハテノ王子の双子の兄のエヴォル王子がこの大陸を守るために結成された保守協会と呼ばれる組織の為、王と同じ権力を持っており、私達の力では干渉することすらできずにこのような醜態を晒してしまいました。

そんな私達のもとにハテノ王子の直属の子孫の方々が来ていただき、権力に立ち向かっていただき誠に有難うございます。

前話はこれぐらいにしまして、改めてご挨拶をします。私達は、代々城の主にお仕えしております。キャップと申します」


「同じくインクと申します」


「「私達は主に使える従者でございます。主に頼まれた事は出来る限り成し遂げます。どのようなご用件でもどうぞ」」


二人は、しゃがんだ姿勢で片腕を胸の前に掲げた。

いきなり要件を言えと言われても正直困る。

俺は人に頼みたいこと等は無いからだ。

何でも言う事を聞いてもらえるとは聞こえは良いが……


「今なんでもって言ったですか?」


「いや、思っただけで言ってはいない」


テクノに考えを読まれた。

いや、まてよ。人の思考に割り込んだ以上何か考えがあるのだろう。


「封印したリーグを誰かに封印を破られるとまずいです。人が触れられない所まで運ぶです」


確かにそうだ。闘いは後始末までが大切だからな。


「じゃあ、それを頼もうか」


「「Yes,my lord.」」


俺たちは二人に場所を伝える為に案内をした。

すると、封印されたリーグの前に一人の赤髪の女性がいた。しばらく眺めた後に歌い出した。


「凍結された魂。

そのうちなる魂の煌めきを再び、燃えよ魂。

甦り、今再び我らに力与えたまえ。

汝の姿は私が覚えている。私が貴女を甦らせる。

私が思う故に貴女は存在し続ける。

最誕の時、再び現れよ私の主 」


女性は地面に掌を当てるとボロボロになった念導エンジンが地面から這い出た。こいつ何者だ。


「昨日地下で私達を閉じ込めた人です。名前はテクスチャ」


「昨日とはだいぶ違う姿だと言うのによくぞアタイを見破った。お初にお目にかかる方には自己紹介を、アタイは保守協会 潜入調査部のテクスチャだよ」


俺はナイフを構えた。


「怖い怖い、アタイは別に仲間の敵討ちに来た訳じゃない。リーグはアタイらの中では所詮したっぱに過ぎない。本当の目的は、ケムリ様の回収だ」


「ケムリはアリウム達によって封印されたはずだ。今さら何をしたところで」


「アタイにはそんな事は関係ないね。ただ、頼まれたからやってるだけさ。ここいらでアタイはおいとまさせてもらうよ」


テクスチャは地面に細長い筒状の何かを投げると辺りが閃光に包まれた。

閃光が消えたときには彼女はそこから消えていた。


「私達の主彼女を探しますか?」


「いや、やめておこう」


キャップの提案を俺は断った。

ふと元リーグの残骸をみてみるとなにやらきらめくものがあった。手で拾ってみると、これはアリウムの水晶だ。戻ってきたら彼女に返そう。それともう一つクリスタの水晶もあったので彼女にそれを伝えた。

それにしても、アリウム達はまだ戻ってこないな。


「俺達は城に戻っているから終わったら伝えてくれ」


キャップとインクに言い残して部屋に戻った。

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