火のないところに煙は立たない
数ヶ月ぶりの投稿です。
気が乗った時にだけ執筆していたので、前後で表現が違う場合があります。
「んんーん。男の子の体ってしっくりこないですわ。代理品としては、まずまずの出来前で、ミストお兄様からはリーグの手助けを任されたけど、手段は指定されていないはずですわ。確か今はそこのリーグとかいう青年に決闘を申し込まれていたはずですわ。決闘と言うのはどちらかが完全に戦闘不能になるまで続けるというものだというのは暗黙のルール。でも、私は既に死んでいるから、もう死ぬことはありません。
本当に決闘をなさるつもりですか?」
ハックとの付き合いはさほど長くは無いが、彼が自分の言ったことを破った事はない。発言したことは絶対に実行させて成功させる。
「問題ない。さっさと始めようか」
リーグの体を奪ったケムリとリーグは互いに刃物を握りしめて1メートルほど近づいた。
「誰も決闘に横槍を入れるなよ」
二人の間に沈黙が走る。
「‥‥決闘!」
「‥‥決闘!」
まず先にハックがナイフをリーグの心臓目掛けて繰り出した。
カキィン
「私は煙を自在に操ることができる。そして、煙を知ることができる。
煙とは何かが起きた痕跡、あなたの攻撃にも煙が発生する。音と同じように消すことができないもの。煙がでている限り私に攻撃は当たらない」
どのような攻撃でも、煙には手に取るようにわかる。そんな強敵にハックはどのように挑むのか?
「なる程、動きの前兆を見ることでいかなる攻撃でさえも防げるのか。でもな、守ってばっかりでは俺を倒せないぞ」
挑発的にハックはケムリに言った。
それに対してケムリは余裕の表情でこう応えた。
「ぷぷ、失礼。あまりにも珍しいことを仰るので笑いを押さえれませんでした。
私には挑発は効きません。なにせ長生きをしてるものですから。私があなたに勝つ方法は二つあります。一つはこの剣でその腕を切り落とすこと。もう一つは私の煙を一定以上吸い込むこと。私の煙は不完全燃焼によって発生する一酸化炭素ですので、酸素だと赤血球が誤認識して取り込み、炭素の効果で離れることができなくなり、酸欠で意識を失うでしょう。
つまりは、5分で決着をつけることができなかったら、あなたの敗北となります」
今度はハックが余裕の表情を浮かべてこのように言った。
「戦わずして勝利できると言うわけだな。どちら側にも被害がなく、理想的な勝ち方だな。
なら、こちらからも一言言おう。
俺は女性には怪我を絶対に負わせない。男性の体を奪っているお前のような奴でも例外ではない」
「プースクスクスク、決闘という名の殺し合いをしてるというのに怪我をさせないなんて、勝ちを捨てるようなものですわ」
「怪我をさせないからといって戦えない訳ではない。本当はお前と戦う気なんてものはなかったが、お前は昔のアリウムを何かひどい目に遭わしたのだろう。何も言わずともわかる。アリウムのあんな顔を初めて見たからな。
俺が戦う理由はたった一つ、アリウムを傷つけた事が許せないからだ」
「フーン、そこまであの女のことが好きなんだ。‥‥気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。あんな私たちの邪魔ばかりしてきた性悪女の為だなんて‥‥。
穢らわしい、穢らわしい、穢らわしい。
教会の民の名にかけてあなたの命を奪い、ペンを奪還させてもらいます」
ケムリは人が変わったかのように発狂した。
そして二人の周囲を黒煙が覆い尽くした。
「なる程、これがお前の本当の戦い方か。随分と個性的ではないか」
「浮かれていられるのはあと数秒だけですわ。この煙は私の一部ですの。少しでも吸引すると忽ち身体が動かせなくなり、そして魂すらも私の支配下に置かれてそれ以降はただの傀儡となりますの」
「フッ」
ハックはケムリの話を聞き終えてから鼻で笑った。
「何がおかしいのかしら。降参でもしたいのでしょうか? 残念ながらその申し出は聞き入れることはできません。あと3つ程数えたらあなたの身体を支配できます。このリーグとかいう人の身体よりもあなたの身体のほうが丈夫で、怪我もなく、筋肉をそこそこついている。まあ、なんて素晴らしい身体なのでしょうか」
「身体にしか興味がないとは、昔聞いたことある言葉で言うと、腐れビッチといっても差し支えないだろう」
ケムリは唇を噛み締めた。
「この私がビッチですって、そんなはずはありません。あるわけがないですのです。私の純潔はミストお兄様のもの、今すぐに言葉を撤回しなさい。私だけではなくミストお兄様の事も侮辱するとは命知らずにもほどがあります。もう謝られましても許しません!」
ハックが先ほどからケムリを逆撫でしている。
普段のハックはそのようなことは言わない。
やはり、アリウムの為なのか。
ハックは、ハテノ村に来てからいつもアリウムのそばに居て常に彼女の為に行動してきた。
彼女に惚れていて彼女の為に尽くしたいというのが彼の思想だ。アリウムの魅了の力を受けずに純粋な気持ちがあったから純水の心を持つアリウムもまた彼に好意を抱いている。
惚れた女のために自分自身の命すら投げ出す事のできるほど愛が強いのだろう。
ハックは今まさにケムリのメンタルを攻撃している。メンタルに対する攻撃は感情を変化させることができる。正気を失った人は猛獣と大差がない。
「さあ、かかってこい! このどヘンタイめ!」
ハックがケムリに向けて中指を突き立てた。
この行動がケムリという爆弾に火を着けることになった。
「性質変化、煙から炭素を取り出してカーボンナノチューブに変化。8本の剣を生成」
周囲の黒煙がケムリの手元に集まり、固まり、黒剣となりて、刃先が2人の周囲を囲うように浮遊した。
「私の怒りを受けなさい。全段発射」
ハックの体を串刺しにするかのように、剣が周囲からハックにめがけて放たれた。
東西南北全ての方角からの攻撃をハックは避けることができない。
「だいぶ歪んできたな」
ハックが串刺しにされる一瞬前にしゃがんで回避した。
そして、ケムリの背後まで駆け抜けた。
「どうして………。どうして今の攻撃が避けることが出来たのかしら?
煙を吸ってもう動けなくなっているはずなのにどうして?」
「単純な話だ。息を吸っていないからだ。吸わなければ影響を受けない。
これはお前が言ったからこそ知ることができた情報だ。俺がお前に話しかけたのも情報を聞き出すためだ。人は自分が優勢であるほど気を抜きやすい。それは昔から変わっていない。旧文明人のお前と戦うには古来より使われるこの戦術こそが一番ふさわしいのだ」
ケムリの背後からハックは、ケムリの念導エンジンの剣を奪い、自前のナイフで水晶部分に一撃入れた。
そして、ピキピキと大きなひびがはいった。
「これで妙な力は使えない。俺の勝ちだ」
煙が晴れて2人の姿がよく見えるようになった。
どうやら決闘はハックの勝利という形で終わったようだ。ケムリは完全に沈黙して、ただ呆然とその場に立ち続ける人形と化している。
あの念導エンジンはケムリの複製魂が中に入ることで起動していたから、当然破壊されれば念導エンジンは起動することはない。念導エンジンが動かなければ、リーグの体を操ることができない。
だから、決闘どころか、指一つすら動かすことができない。
だが、アリウムが勝利をたたえるようなことはせずに、石のように動かないリーグを見ていた。
「これはまずいことになりそうだね」
完全勝利して、もうこのハンター育成地区には敵と見なす者はいない。リーグももう動かなくなっているはずだというのになぜだ?
「もしかして踏み外しているかなー」
「かろうじて踏みとどまっている」
「戻せそう?」
「あんだけこの世のことわりに触れたんだから後は堕ちるだけだよ」
昔聞いたことがある。この世のことわりとは世界の法則や現象の事を言う。例えば、高い場所から物体を落とすと加速しながら落下する。その物体を上昇させるには逆方向から力を加えればいい。そうすると、物体は宙に浮かんだ状態となる。更に加えると上昇する。ただし、物体にもよるが上昇時に形状が崩壊する事がある。これを道を踏み外すという。
物理的ではこのようなことを表す。
社会的な意味合いでは、例えばAという人がBという人を殺した場合は殺人者となり、更にCという人を殺したら、殺人鬼となり、Aは人ではなく鬼となる。
要は、タブーを犯すととんでもないことになると言う当たり前な事だ。
リーグが犯したタブーは2つある。
自身の肉体を煙にして再構成するという現実的に不可能なことを念導エンジンを使うことで、無理やり行ったこと。
もう一つは、ケムリがリーグの肉体に乗り移り聖霊の力を使ったことだ。
1回目は自身を変化させて、自身で戻したから、影響は自身の弱体化だけで済んだが、2回目はケムリが乗り移っている間は巫女のケムリが自身の力で相殺していたが、ハックが念導エンジンを破損させることでケムリの力を受けることができなくなり、結果として道を踏み外す事となった。
それにしても、何故俺はこの知らないはずの事を知っているんだ?
あの錠剤をまだ飲み込んでいないのにどうやって知ったんだ。
俺が色々考えているうちにリーグの様子が変化しだした。
「ウゴゴ、グゴゴゴゴ、グルルルル」
呻き声を上げると同時に、リーグの肉体から黒煙が噴出して彼自身を包み込む。
すぐそばにいたハックは本能で危険を感じたようでとっさに距離を取った。
やがて煙は晴れると何やら見たことのない生き物がそこにいた。
全身が硬い鱗で覆われて、鱗の隙間からマグマが流れるかのように高温に熱せられたの粘着質な液体がデロデロと流れ、地面を赤く染めている。
鋭く尖った口からも同様の液体を垂らしている。
理性なんていう概念すら持ち合わせていない野獣のようだ。
例えるなら火の魔獣のようだ。
「またあれが創り出されたようだね。強い力は身を滅ぼす。滅ぶほうがましだよ。力の方に呑み込まれるぐらいならね」
アリウムはそう言いながら右手を魔獣に向けて、唱えた。
「今から、あれを封印する。皆手伝ってくれる?」
ファンタジー作品においての人以外との戦いがやっと描けます。
いまだで対人戦闘しか描いていなかったので自分でもどうなるのかが分かりませんが、自分なりに描いてみます。




