汚れなき鎮圧
アルス「農場だというのに人気を感じなかった」
ハック「この時間はトレーニングに出ていて農場には人はいない。見張りなんて必要ない。あの鳥がいるから手入れも殆どいらない。昔の時代にも同じ方法で作物を育てていたそうだ。確か合鴨農法といったはずだ。そこまで住民を見てみたいのか」
アルス「人々の営みを見てみたい。ハテノ村では人数が少なすぎた。シェルター内は日常生活を見ているとは思えなかった。でもここは太陽の届く地上でなら人と人が普通に過ごしている日常が見れるはずだ」
ハック「なら案内しよう。日常を見ようと思うのは構わないが、階級というものがある。明らかにキラキラとした服装の奴とは関わるなよ」
俺のわがままで寄り道をさせてしまった。
ミチュール「僻地のハテノ村に住んでいたから交流の仕方もだいぶ違うから勉強する必要があるからいいと思うかなー」
ミチュールさんがこういっていたぐらいなのだから昔の言葉の「郷に入りしは郷に従え」と言うことなのだろう。
少しばかり歩いた先に市場があった。
皆、身体の見える場所に手頃な武器を必ず一つ以上身につけていた。
ハンターA「あれあるか?」
店員「ねえよ。諦めな!」
ハンターAはナイフを鞘に刺したまま店員に見せつけた。
店員「物を出しな」
店員の手に小袋が渡された。
店員「上出来だ。持ってけ」
違う小袋を受け取ってハンターAは去っていった。
アルス「解説を頼めるか?」
ハック「あれはこの地で伝わる取引法だ。ハンターはいたる地域で獣を狩ったり、貴重な薬草などを採取している。この市場を使えるのは特殊な武器を持った奴だけだ。これを見てくれ」
ハックは常に持ち歩いているナイフを俺たちに見せた。
アリウム「特に変わっている部分はないように見えるかな」
クリスタ「私も見てわからないよ」
テクノ「ちょっと渡すです」
小さい手のひらにナイフが置かれた。
テクノ「随分と古いナイフですね。誰かから渡されたもので、これが一人前の証のようです。特定の構えをすると物理的に証が浮き上がるようです」
ミチュール「私は実物を見たことがないなー。見せてくれるかなー」
ハック「あまり人に見せるものじゃないがいいだろう。ただし他言無用だ」
ナイフを刃を下にして鞘を少し捻るように力を入れると鞘に溝がいくつか生まれていくつかの穴が開いた。その状態でナイフを少しだけ抜くと証となる模様が浮かび上がった。
ハック「この証はハンター階級を表すものだ。俺の階級は上位の調査員だ」
アルス「ちなみに、それはどれぐらいの階級なんだ」
ハック「一般よりも自身の状況判断だけで過酷な環境に対応できるか、道具をなるべく痛ませない技術を持っている人に与えられるもので、ハンターの多くはこれを目指す。なれる限界の階級だ。
もっとも、ハンター育成地区での階級だからここ以外では意味を持たない。
特権は、市場の物をある程度タダで貰えるとか、この地区の好きな場所に自由に住むことが許されるぐらいか」
今度はハックの本来の家の特殊青年育成場と呼ばれる場所にやってきた。
練習場と思われる場所で数人が木製のナイフを振り回して闘っていた。
ハック「あまり変わっていないな」
大きく振り回していたナイフがこちらに飛んできた。
それをハックが持っているナイフで弾き飛ばした。
見習いA「誰だ!」
見習いB「軽く弾き返すなんて、きっと高階級武術場の奴らに違いない」
見習いC「あのナイフを奪えば楽な生活が出来るはずだ。やれ!」
彼らが襲ってきた。
どうする。どうする。どうする。
考えるんだ。人を傷つけずに止めるには、返り討ちにしてはダメだ。もっと優しく止めさせるには最低でもナイフを奪わなければいけない。
これができる術が一つだけ存在した。
俺はポーチからfirstlibraryを取り出して術を彼らに向けて発動した。
アルス「ウィンドパージ!!!」
今回の定義はナイフだけにした。
ピュー
ナイフが巻き上げられて彼らは目を疑ってよそ見した。その隙をついてハックは彼らに素早く近づいて俺にした攻撃と同じものをヒットさせた。
見習いABC「参った………こうさんだ。許してくれ」
次回はなぜアルス達に襲いかかったのか、階級の違いによってどのような扱いを受けてきたのかが描かれます。