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探求者の記録簿(メモリーログ)  作者: Liis
保守協会の謀略
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汚れなき思想

今回は前話の続きと、前々話の続きです。

ハックの思想とそれの無力さと、ミチュールの夫のことが語られます。

 俺こと、ハック・イノセントには家族は居ない。

 居たはずなのだが、気がついた頃には居なくなっていた。または初めから居ないのかもしれない。

 俺がハテノ村に行く時まではセンターパークで暮らしていた。

 俺が暮らしていたのはセンターパークの南方のハンター育成地区の特殊青年育成場だ。

 要は身寄りの居ない青年を専門に面倒を見る支援施設のことだ。

 施設では信頼のできる人はいなかった。

 誰とも関わりを持っていなかった。

 そこで、保守協会のリーグと名のる男にハテノ村の調査を依頼されて、俺はセンターパークを出た。

 外は自然で溢れていた。

 植物が所狭しと並び、一切の法則性もなく、乱立していた。

 当たり前すぎる事ですら俺は知らなかった。

 今の文明は旧文明時代と比べて人がかなり少なくなっている。食料が足りないなんて事は有り得ないのだ。

 ハック「生きていくためには、家族との決別も必要だ。甘えているのは、逃げている事と同じなんだ!」

 俺の声に幼い子ども達は泣きだしてしまった。

 俺なりの考えを伝えたのだが、本心を伝えることができなかったようだ。どうも、俺の行動は裏目にでることがよくある。アリウムと一緒に暮らしている時もそうだった。好意で身の回りの世話をしていたのだけど、かえって嫌われてしまうことが日常的にあった。

 自分から人間関係を絶っていた人だから、あまりうまくたち振る舞う事ができていない。

 青年20歳「本当に厳しいことを言うんだね。結局のところ、金を出すのか、出さないのか、どっちなんだ?」

 ハック「答えは、NOだ。第一に俺は貨幣に該当するものを持ち合わせていない。

 次に、お前の言論が胡散臭い。子ども達がお金を欲しがっているのはわかる。しかし、お前がお金を要求しているのがおかしい。子ども達は華奢な身体なのに、お前は肉付きが良すぎる。まるで子ども達を食い物にしているようだ。

 俺は知っている。俺は今までに見たことがある。そのビジネスの名前を。

 名は、乞食こじきビジネス。

 太古の昔より伝わるこのビジネスは奴隷制度に改良を重ねたもので、人の心理的感情でお金を絞り出す。最低のビジネスだ」

 男は溜め息を吐いた。

 青年20歳「これだから、自分で考える人は駄目なんだ。一体何がいけないのかなー。ハックさんよう。」

 ハック「性根が腐ったクズめ」

 青年20歳「酷い言いっぷりではないか、これでも善意でやっているんだよ」

 ハック「中抜きをどうせしているんだろ」

 問い詰めようとすると、子ども達は鳴きながらこう言った。

 ロリ10歳「お兄ちゃんを虐めないで」

 ショタ8歳「僕達が好きでやってんだもん」

 青年20歳「おやおや、子ども達の意識を踏みにじってまで、私の下から離したいのかい?

 結構だ。おまえに養うことが出来るものなら」

 ロリ10歳「早くどっかに行ってよ!」

 ショタ8歳「文無しが邪魔しないでよ!」

 その言葉が突き刺さった。

 綺麗事なら言うのは容易いが、実際にそれができるかどうかの保証なんてものは存在しない。今の生活を根本的にひっくり返すことを、赤の他人には不可能なのだ。

 俺は若者たちのいる場所を去った。


 一方アルス達はレストランで食事を取ろうとしていた。

 バイブル「全くお前の連れはお前のようにろくでもない奴等だな。俺を置いてどこかに行きやがるからな」

 ミチュール「ごめんごめん。私がしくじらなければ、あんな事にはならなかったかなー」

 バイブル「俺はこんな高いレストランで食事のできるほどの金は持ち合わせていない。アルスがオーダーを出すせいで、危うくは、地底まで連れて行かれるかと思ったぞ」

 アルス「旅立つ前に見えたイメージにだいぶ近い事が起きたから、つい飛び出してしまった」

 バイブル「あの薬を使ったのか。イメージというか、記録というべきか、非常に微妙な物だなあれは」

 ミチュール「私自身がそのイメージを見ることが出来るのならば、きっと起こることがなかったかなー」

 少しだけ疑問がわいた。

 アルス「ミチュールさんに聞きたいことがあるのだが良いか?」

 ミチュール「いいよ、甥に聞かれたことなら、何でも答えれるかなー」

 アルス「ミチュールさんはドクターのお姉さんなんだよな」

 ミチュール「そうだよー。アランは私の弟だよー。前にも言ったけど、実の家族だよー」

 アルス「ならば、A・レコードを使えたはずだ。俺があの薬を使って見えたように」

 ミチュール「昔は使えたけど、今は使うことが出来なくなったかなー。その代わりに、ヒューズの名ならつかえるかなー。

 真実の名は大切な物だけど、ミチュール・ヒューズのヒューズは、私の夫の名で、テクノのお父さんの名前だからこの名前は持ち続けるよ」

 テクノ「お父さんってどんな人ですか?」

 ミチュール「ヒューズさんは、人に厳しく接する人かな。誰がなんと言っても、間違いや、不正を許さない。勿論、自分自身にも、厳しいひとだったかなー。

 彼が人に厳しくするのには理由があって、彼にはこの先に起こる不幸や、人の末路が見えてしまう超能力を持っていて、あまりにも酷い末路ばっかり見えてしまう。目の前の人が数時間後に不幸になることをそのまま見過ごすことが彼にはできずに手や口を出してしまう。まさしくヒューズそのもの。

 人の不幸を自分が嫌われ、傷つくことで、阻止する。

 私はそんな姿を見て、彼と暮らすことにした。こんなもんかなー」

 会話をしていると料理が運ばれてきた。

 店員「お待たせいたしました。本日は中華スタイルでのお召し上がり頂きますので、お客様ご自身で料理をお運び頂きます」

 取り皿が7枚運ばれた。

 アルス「1枚足りない」

 店員「椅子にご着席いただいておりますかたは、7名だけしかいらっしゃっておりません」

 アルス「後からもう一人来る。椅子と食器を用意してくれ」

序盤と終盤の温度差が極端になっています。

これは、ハックとアルス達の育った環境の違いからくるもので、この差を埋めることは容易ではなく、人と人には間違いなく隔たりが存在していることを表現するために、こんな構成にしました。

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