皆は一人の為に
この話は今までの話を読まない限り、意味不明なので、読むことをお勧めします。
特に、復活の舞とaccesssoulsとイノセントと消えていく水と保守協会の謀略全てを読むと意味が分かると思います。
辿り着いた先には大きなハンドルの付いた鋼鉄の分厚い扉があった。
きっとここに居るに違いない。
俺はハンドルを回した。
クルクルクルクル
一切の重さを感じなかった。中で空転しているようだ。
クリスタ「アルスこれみて」
ハンドルの下には小さな穴が空いていた。どうやら鍵穴のようだ。
鍵穴と言っても、種類がある。
鍵の種類だって世の中にごまんとある。
その中から正しい物を探すのは不可能だ。だから別の手段を考えよう。
鍵は持っていない。そう、鍵はないのだ。だが、開けれるかもしれない。
古い文献によると、昔は鍵が無くても開けることができる職人が居たそうだ。その技術の事をピッキングと言うらしい。
だけど、その技術は一般に出回っていないために俺は知らない。
鍵の仕組みを知れば開けれるはず。
考えるんだ。考えるんだ。この部屋にミチュールさんとテクノが閉じ込められているんだ。この部屋には通気口は存在しない。それとここは地下にある建造物だから空気が少ない。だから、部屋の酸素もきっと限りがあるはずだ。時間が少ない。限られている。
俺が冷や汗をかいていたら、クリスタが何かを思いついたようだ。
クリスタ「鍵穴に鍵を挿したいけど、鍵はない。似たようなものもない。せめて金属製の細い棒でもあれば」
今所持している金属製のものは腰に巻いてあるベルトぐらいだ。太すぎて鍵穴には入らない。俺は使えるものを所持していない。ポーチを使おうにも、取り出す物のイメージがつかない。
いや、いけるかもしれない。クリスタの持っているあれを使えば扉を開ける。
アルス「クリスタ、リュックを渡してくれ」
クリスタ「中には白銀の板しか入ってないよ」
アルス「その板を使うんだ」
クリスタのリュックの中から汎用型地上武装を取り出すと、それ自身が変形した。以前クリスタが手に取った時は銀の弓だったが、俺が持ったら銀の剣となった。
剣の分厚さは3センチメートルほど。
アルス「この形状ではダメだ。もっと薄く、もっと鍵穴に入る形状で、鍵の代わりになるものを」
どこからか音声が聞こえた。
(汎用型地上武装起動しました。これより、ユーザー登録を始めます)
あの時と同じだ。この銀色の塊から聞こえる。
(ユーザーネームを教えてください)
嘘は言わない。ありのままの名前を言おう。
アルス「アルス・A・レコード Aはアカシックの名」
(承認しました。システムを45%アンロックして起動します。ご用件はなにでしょうか?)
ガイダンスの対応が変化した。
アルス「この扉を開けてくれ。大事な家族が居るんだ」
(認識 シリンダー錠 形状の更新をします)
今度は赤色の光を放って形状を変化させた。先端から非常に細い棒が4本ぐらい飛び出して、鍵穴の中に潜りだした。
(アカシックとの同期完了)
カチッ
キュルキュル
ゴゴゴ
扉が開いた。
(システムをシャットダウン)
銀の剣が元の板の形状に戻った。
部屋の中には、ミチュールさんとテクノが倒れていた。
アルス「大丈夫か!?」
俺はミチュールさんの肩を掴み揺らした。
クリスタはテクノの意識を確認するために手を握った。
テクノ「やっときたですか?アルスと姉さん」
クリスタ「心配したよ~」
クリスタはテクノにホッペスリスリをした。
テクノ「やめえるです。今はミチュールの体調を見るです」
ミチュールさんの顔色がすごく悪い。
そして、何やら蚊の泣くような声で呟いていた。
ミチュール「ワタシハナニモデキナイ
タッタヒトリノムスメスラ マモルコトガデキナイ
コンナコトデハ ハハオヤシッカクカナ
ゴメンナサイ サキダッタ オットノヒューズ
ミットモナクテ ゴメンナサイ アラン
ナサケナクテ ゴメンナサイ ハロルド
イキテイテ ゴメンナサイ ゴメンナサイ ゴメンナサイ………」
手を近づけても反応が一切なかった。
まるで何も見えていないようだ。
この光景は旅立つ前のイメージで見た覚えがある。その時とは場所と状態が全く違うが、あのときに見たイメージが実際に起こっているのだ。
イメージは旅を続けられるかを知りたいときに見えたものだ。
ミチュールさんの正気を取り戻さない限りここを移動できない。旅を続けられない。
ミチュールさんは、旅立つ前に正気を失ったら、放置していいといっていた。
だけど、それは駄目だ。1人も欠けてはいけない。最も俺が欠けていく所を見たくない。出発をしたら帰還するときも一緒でなくてはならない。仲間が欠けての旅なんて悲しいだけだ。
アルス「状況を整理しよう。先ずは、どうしてこうなったのか」
テクノ「保守協会の潜入調査部のテクスチャに薬を盛られてこうなったです」
聞いたことがある。ごく一部の植物には感情や神経や精神に悪影響のある物があるそうだ。本来の使用法は、痛覚を麻痺させたり、精神を安定させたりするものらしい。つまりは、医療用に使われるものなのだ。
こういう薬は太古の昔に封印されたもので、禁断の麻の力が込められた薬として、一切の情報を検閲して今の時代に現存しないはずのものだ。
この一般人が知らない秘技を使うのだ。間違いなく保守協会の人だろう。
アルス「このミチュールさんの症状を改善するにはどうすればいい。治療術を使える人でも居れば改善するのに」
クリスタ「もしかしたらアリウムなら治療術を使えるかもしてない」
アルス「どこにいるか分かるか?」
クリスタは首飾りを取り出した。
クリスタ「ダウジングクリスタル起動。
アリウムの居場所はどこ?」
水晶がある向きを指し示した。
クリスタ「だいぶ遠い場所にいるみたい」
早くどうにかしたいのにアリウムに連絡がつかない。せめてここにいることを伝えたい。どうする。どうする。
思考を巡らせた。
アリウムは俺達から連絡をとることが出来ない。アリウムが所持しているものは、身体に取り込まれているaccesssoulsとクリスタがデザインした服とクリスタの術によって作り上げられた水晶の飾り7つ。飾りは全てエネルギーをコントロールするものだ。詳しく言うと、2つは触れたもののエネルギーを吸収して、残り5つはそのエネルギーを蓄えるものだ。蓄えられたエネルギーはアリウムとアルカミクスチャーに流れ込むようになってる。この飾りがないとアリウムは実在する事ができない。
待てよ、エネルギーを吸収できる飾りを俺にも渡されている。今でも首に掛けている。
アルス「クリスタちょっと聞いてもいいか?」
クリスタ「どうかしたの?」
アルス「この首飾りは自分で吸収したいと思ったエネルギーを吸収できるんだな」
クリスタ「そうだよ。でも、吸収したエネルギーは全てアリウムに送り込まれるからアルスが使うことができないよ。そこまでして送りたいエネルギーがあるの?」
アルス「俺が送りたいものは感情エネルギーと思考エネルギー」
クリスタ「送ることが出来なくは無いけど、それを理解出来るかどうかはわからないよ。電波で言うところの搬送波と信号波を変調してそこから検波回路で復調すると言うことだよ。アリウムにそれが出来るかどうか」
アルス「いけるはず。なんだか知らないけど出来るはず」
根拠のない自信がこみ上げてきた。
俺は首飾りを握った。
(伝えることはミチュールさんが謎の薬の影響を受けたから、ここまで来て治療術を施してくれ)
力強く水晶を握った。
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神殿
私は自らナイフで腕に切り込みをいれたフロルの治療をしていた。
アリウム「何もここまで供物を捧げなくてもよかったのに」
ハック「俺も驚いたよ。こんな事をするのならばナイフなんて貸すんじゃなかった」
フロル「できるだけオリジナルの彼に近い聖霊獣に会いたかったんだもの。
私がこの神殿の壁画を見て、一目惚れしたの。だから神殿を調査したの。彼の事をよく知りたて古文書や生体資料を探していたの。だから、彼に会うためになら何だってする。お気に入りの後ろ髪も、無くなりすぎると困る血液も、そして巫女になることにだって一切の躊躇はなかったよ。
流石に彼と融合する事はしなかったけど、そんな事したら彼に会えなくなってしまうから」
私が手のひらから治療の水を垂らすとみるみるうちにフロルの身体に吸収されていった。これはフロルの特異体質故に起こる現象かな。
フロル「ほんとすごいね聖霊の力は、私にもうまく使えるかな?」
(我が一から教えよう)
ナチュルハードクレイ
アリウム「随分と仲良くなったみたいだね。」
神殿でしばしの時間を過ごしていると何やら強いエネルギーを感じた。冷や汗が出てきた。
アリウム「ねえ、アルカミクスチャー。この感じはいったい何なの胸の中がもやもやするこの感じ。胸の中で自分のではない感情が渦巻く感じはいったい何なの」
(これは、アルス・A・レコードの感情だ。とても大変なことが起きているようだ)
あのアルスが困っている。
私はいつもアルスに助けられている。半分脅迫してアルスによって復活する事ができて、私が消えそうになったときも助けてくれた。
アリウム「今すぐアルスの元にいかないと、そこまで連れて行って」
(承知した。我に任せるがよい)
私の身体をアルカミクスチャーに預けた。
すると猛スピードを走り出した。
フロル「私をアリウムのもとまで連れて行って」
(我の背中に乗るがよい)
私はアリウムを追った。
ハック「俺だけおいていかれた」