鉱石と水と獣との対話
クリスタ「中に入っていいよ」
ドアの向こうには新しく服を着たアリウムが鏡で自分自身を眺めていた。
新しく服を着たアリウムはなんだかしおらしく見えた。
アリウム「どうかな。似合っているかな?」
少し声が震えていた。
ハック「ああ、似合っている。お前らしさを全面に押し出している所が実にいい」
ハックはアリウムを褒めた。
俺は正直に言って、ファッションというものに凄く疎い。
なにがよくて何がよくないのかさっぱりわからない。
ハックはセンターパークからきたのでファッションについて詳しいのだろう。
アルス「なかなか個性的な服だな。アクセサリーを付けても隠れることのない素晴らしい服だ」
大事な事なので表現を変えて2回言った。
クリスタ「アルスにも、この服の良さがわかるんだね」
アリウム「では、このエネルギーを取り出す水晶を使ってみよう。使う場所として推奨されるのはどこかな?」
クリスタ「アリウムの場合は水のあるところ、極端に言うとHとOがある場所。
ただそこにあるだけでいい」
アリウム「私の生きていた時代にはそんなものなかったなー」
クリスタ「でも力を使える人は居たでしょ」
アリウム「それがいないんだなー。今みたいに少し口を開だけで力を使える人は、昔はいちいち儀式をしないと使えなかったなー。私とハックを除いた村人の共通の先祖のレコード一族は一体何者何だろうね」
ハック「そもそも、術というものを使う奴をここに来るまで見たことないぞ。それに、ハテノ村出身の人自体センターパークにいないぞ」
クリスタ「それはおかしいな。この村の住民が減った理由はセンターパークに移住したからなのにどうして?」
ハック「それは知らない。だが、センターパークではハテノ村は忌まわしい地として知れ渡っている」
アルス「センターパークに向かった人が、そこに居ない。考えられる理由は2つある。
1つ目はセンターパークに入ることができなかった。
2つ目は入ったがいいがそこで何かがあったせいで、表には出てこれない。
これらの内の1つだろう。
ついでに、ハテノ村の人がセンターパークに入ることは可能なのか?」
ハック「条件を満たせば入れる。条件は法的に市民になってるまたは来客として招かれるのいずれかを満たせば入れる」
アルス「ミチュールさんもハテノ村出身だけど、センターパークの住んでいた。
恐らくは夫がセンターパーク出身なのだろう」
テクノ「アルス 今ミチュールといったですか?」
アルス「ああ、俺のおばさんだ。今この村にいる」
テクノ「そうですか。少し家を出て行くです」
テクノは必死そうな顔をして家を飛び出した。その姿に俺と同じ思いがあるように感じた。
クリスタ「テクノはいったいどこに行ったのだろうね?」
アルス「ミチュールさんに会いに行ったと思う」
クリスタ「ミチュール……。思い出した。テクノのお母さんだ!」
アルス「なる程理解した」
俺がテクノを見て同じ思いを持ってると感じたのは、母親を探しているためだ。
村を出ようと思った、ことの始まりは夢で母親の面影のある少女を見たからだ。
アルス「突然だが聞いてくれ」
アリウム「なに藪から棒に口を開いて」
クリスタ「この物言いだととても大事なことなんだね。ちゃんと聞くよ。最後まで」
アルス「ミチュールさんから聞いたことなんだが、センターパークで保守協会の奴らが新しく物を生み出せる人を捕まえて高台から突き落としているそうだ。ただ都合が悪いからといって人を殺める保守協会の脅威から人々を守りたい。護りたい。救いたい。そのために旅に出たいんだ」
クリスタ「いつもならどんなことをしてでも止めるけど、アルスのおばさんが言い出したみたいだから認めざるを得ない。それに、アリウムとこの村に危害を与えたんだから他の村も危ない」
アリウム「別に私の為に動かなくても、こうして今もこの世界に存在していることだし」
アルス「君の大切な彼だって保守協会のせいで一度別れることになったんじゃないか」
アリウム「確かに脅させれてやったことだけど、結局は自分でやったことだから」
ハック「大丈夫だ。俺がついている。絶対にお前を守ってやる」
アリウム「まったく、村の中で唯一これといった特技も術も使えないと言うのに。そこまでいうなら仕方がないなー。
アルカミクスチャーはどう思う?」
アリウムの身体から水が染み出してそれが小さな獣のような形となった。
アルカミクスチャー「我はアリウムがそうしたいと言うならばそれに従おう。それとそこのハックと名乗る青年よ。アリウムを守るのは我の役目だ。つけあがるな若人」
ハック「あなたが水の聖霊獣こと、アルカミクスチャーですか。お初にお目にかかります。ハック・イノセントと申します。是非、あなた様のお手伝いをさせてください」
アルカミクスチャー「面白いことをほざく。いいだろう。アリウムを任せた」
2人+1匹の説得を終えた。
後はテクノを説得するだけだ。