記憶の迷宮
この話では、アルスが巫女に初めて会う話です。
追及2016/2/20
修正しました。
目が覚めたら俺は知らない森の中にいた。
「俺は一体どこにいるんだ?」
一体なぜこんな場所にいるんだ?
確かハテノ村にいたはずだ。
村にこのような場所は存在しない。
場所がどこなのかはわからないが、頭の中のイメージにかなり近い世界に見えた。
もしかしたらイメージで見た世界そのものなのかもしれない。
本当にあの声の主がいるのではないかそう思えた。
ここにいてもなにも始まらない。
そう思い、俺は森を抜けようとした。
しばらく歩いていると古い建造物を発見した。
ここに人がいるとは思えないけど中に進んだ。中には灯りはなく、暗闇を進んだ。
トンッ トンッ トンッ
建造物の壁面が足音を跳ね返している。
「誰?」
声が反響していてどこから喋ったのかがわからない。
「もしかして、アルスなの?」
何故俺の名前を知っている。
村人以外と会ったことのないから知っている人は全て知り合いのはずだ。
訪ねれば多分何かを知っているはずだ。
例えば、何故俺がここにいるのか。
「誰か居るのか」
俺はそう叫んだ。
「ここにいるの」
壁面の燈台に火が着いて奥の方まで照らした。
しばらくすると近くの柱の影から一人の少女が現れた。
その少女は長袖の見慣れない服を着て、背が小さく、透き通るような薄い色の金髪、綺麗なマリンブルーの瞳。ドールのような雰囲気を出している少女だった。
何よりも驚いた事は幼い頃のクリスタの顔に瓜二つ、まるでコピーしたかのようだ。
「アルス久しぶり、いや初めましてなの」
非常に礼儀正しい少女だ。
だけど俺はこの子には会ったことはない。
「どうも、こちらこそ初めまして」
社交辞令的に挨拶をこちらもした。
なにもわからないこの状況においては誰の話でも聞きたい。敬意を払うと人の口が軽くなるとたしかに昔本で読んだな。
「突然だけど君はどうして俺の名前を知っていたのかな」
敬意を払おうしたがうまくいかなかった。意外に難しい。
「名前なんて一回顔を見れば分かる物じゃないの?」
「そんなこといわれてもな」
どうやら俺の中の常識では話が通じないようだ。
幼い子がここにいるならきっと他に人がいるに違いない。他を当たろう。
「お父さんかお母さんはどこにいるのかな?」
「親はいないけど、お手伝いさんはいるの」
お手伝いさんがいると言うことはこの子はただ者ではないような気がする。お嬢様か、なにかなのか?
「どこにいるのかな?」
「今は図書館の整理をしているの」
「ここには図書館があるんだ。その場所まで案内してくれるとありがたいな」
「それは教えられないの」
断られてしまった。理由を聞けば何かわかるかもしれない。
「どうしてかな?」
「歴史を守るためなの」
「歴史を守る?」
聞いたことのないフレーズだ。歴史とは今の出来事を何かしらの方法で記録して、後世に残すものだ。現代の人に何をされようと奪われたり無くなったりするもののではない。
「そう正しい記録を未来に残すためなの」
「歴史というのは、ここの場所のか?」
「そうなの。昔起きた悲劇をまた起こさないようにするためなの」
「どんな悲劇が起きたのかな?」
うっかり好奇心で聞いてしまった。
知らない場所で起きた悲劇なんか知ってもどうしようもないのに。
「それは‥‥」
少女が言いかけたその時に通路から女の人の声が響いて聞こえた。
「巫女様、図書館の整理が、終わりました」
お手伝いさんがここにきたようだ。これで今の現状を把握出来そうだ。