オーダーメイド
「姉さん、なに作っているですか?」
幼いテクノは、机に肘を引っ掛けてクリスタの作っているものをさりげなく聞いた。
机の上には、大きな紙がおいてあり何かのパーツを黒鉛筆で描いていた。
「これは、ね。最近気がついた事だけど、この村にアリウムに似合う服がないなと気がついて、なら作ろうと思っているの。アリウムは前と姿が変わったからどんな服を着ても、その服は人間仕様だから、聖霊人のアリウムにとって非常に動きにくい服だと思ったの、だけどなかなかうまくいかないなー。」
クリスタは服を作るための型紙を作っているのだが、なかなか作るのが難しいようだ。
人間と聖霊人の違いは色々ある。
1番の問題は、体の変化である。
聖霊人は人間と聖霊獣の合わさった人だ。基本は人間と同じ姿なのだが、聖霊人は体の互いのバランスによって体が変わることがある。
今のアリウムのバランスは、人6:聖霊獣4のバランスだ。
「いくら考えたって無駄です。私達は人間だから聖霊人のことはわかる訳ないです。こういうことは本人を呼んでやるです。本人より詳しい人はいないです」
数分間、アリウムとハックが家にやってきた。
「クリスタが私を呼ぶなんて珍しいねー」
少し破けている儀式衣装を着たアリウムと、なぜかついてきたハックがいた。
「どうして、ハックもきたの」
クリスタはハックを目を細めて睨みつけた。
「それは、ですね……」
~~回想~~
旧練習場 現アリウムの家
「アリウムいるですか?」
「何のようだ」
テクノの呼びかけにハックが現れた。
「ハックですか、ここでなにしているですか」
「俺はアリウムのお世話をしている。また倒れられても困るからな。
あいつは俺が守る。どこに行ったって」
「まるで君はストーカーみたいじゃないか」
地下神殿の方からアリウムが現れた。
「最近は、ハックがいろんなことをしてくれる。○○が欲しいと言うと持ってきてくれているんだ。それ自体はありがたいことなんだけど、四六時中周りにいるんだ。正直に言うとしつこいと思っているんだー」
「俺は断じてストーカーなどではない。あえていうのならば、執事だ」
「執事かなんか知らないですけど、ちょっと家までくるです。クリスタがアリウムにしたいことがあるそうです。」
~~回想終わり~~
「……というわけです」
「ハックちょっといいかな」
「なんだ」
「ここにいていいのは女性だけ。男はとっとと出て行きなさい」
「何もそんな言い方しなくてもいいだろう。俺はアリウムの執事、いつも隣にいるものだ」
「そう、じゃあこれをハックに頼んでおいて」
クリスタはアリウムに1枚の紙切れを渡した。
「なるほど、ハックこれ持ってきてね」
例の紙をハックに渡すと少し驚いた。
「流石にこれはちょっと」
「ハックは、私の執事だよね。執事というものは主の頼みは断らないものだよね。たとえどんなものでも」
アリウムはハック試すようなことを言った。
「わかった。無理かも知れないが努力しよう」
ハックが家を出た。
「じゃあ始めようか。まず服を脱いでくれるかな」
アリウムの頭に?が浮かんだ。
「聞こえなかったかな。もう一度いうよ、服を脱いでくれるかな」
「私に服を脱げなんて、君もケダモノな変態だねー。まさかピンクな意味のほうかな」
「姉さんは変態ですか、これじゃまるで、服を脱がせたいだけの危ない人です」
クリスタは自分の言ったことの意味を察して顔を赤く染めた。
「姉さんはアリウムに服を作ってあげたいそうです。」
「私のために服を作ってくれるんだね。そうならそうとはじめからいってくれればいいのに。クリスタには大事なことを教えてあげる。話をする時は順序を守って話をしてね。今みたいな恥ずかしいことにならないためにも」
クリスタはいろんな意味で悶えていた。
自分の気が先走ってしまってこんな事になってしまうとは思いもしなかった。
「と、とにかく体の大きさを計るだけだから、少し脱いでくれるかな」
動揺しながらも、自分のしたいことを伝えた。
「じゃあ始めるです」
「アリウムの体をじっくり見たのは初めてだけど、意外と細いんだ」
「ある程度なら痩せたり、太ったり自由に変えれるよ。」
「じゃあ、マッチョになってみてほしいです」
「変わった注文だね。こんなこと頼まれたのは初めてだよ。もしかして君もたくましい体が好きなのかい」
「少し興味があるです」
「じゃあやってみるよ……これでいいかな」
「わお、綺麗な筋肉です」
「筋肉を褒められたのも初めてだよ。
でも、これも聖霊獣のアルカミクスチャーのおかげだよ」
「こらこら、いきなり体型を変えないの。それにしても聖霊獣の名前ってそんなんだったんだ」
「そんなんとかいわないで、聖霊獣は私の育ての親なの。私の名前だって、ミクスチャーなんだから」
「ごめんごめん、お詫びにどんな服が欲しいか聞いてあげる」
「全然お詫びになっていないけどまあいいや。そうだねー、まず腕が隠せるといいな。でも、肩まで隠さなくてもいいな。脇が出る感じでお願い」
「たしか、東洋の巫女衣装がそんな感じだったね。」
「2つ目は、伸縮性のある素材でなおかつ薄く軽く丈夫な素材つくって欲しいな。
なければどんな素材でもいいけど」
「大丈夫、私が作ると言い出したのだからどのようなものでも作り上げるよ」
「凄い意気込みだねー。もしかして創作意欲が止まらないのかな。最後の注文は風通しの良く、水通りの良い形がいいな」
「なかなか難しいけど努力して作り上げるよ。計り終えたから、服着ていいよ」
「実は、この身体になってからあまり儀式衣装を着たくないんだよね。
動く度にふっかっふっかの服が引っかかって破けちゃうんだ。これ以上破きたくないから服貸してくれるかな」
「アリウムの身体に合う服は残念ながらないけど、変わりにこんな服ならあるよ。どこか別の国の民族衣装らしいけどどうかな?」
「ぷぷ、これが民族衣装だって笑えるね。今は使われていないと思うけど、これは太古の昔につくられた水遊び用の水着と呼ばれる。でもこれいったい誰の趣味なんだろうね」
「どういうこと?」
「水着というものは男性の目を向けさせるための服だといわれてるんだ。クリスタは水着着たことないのかな?
テクノも多分ないよね」
「着ようと思ったことないよ。こんな寒い服」
「同じくです」
「もし気になる男性がいるならこの服を着てみるといいよ。私の魅了とはまた違う自然な感じでドキドキさせられるよ」
「今度着てみよう。そして、アルスに見せよう」
「姉さん、チャレンジしてみるですか。応援するです」
「そんなんじゃないから、今から型紙描くから出て行って」
クリスタはハテノ村の住民の服をすべて手作りしています。いろいろ作れるドクターでも、服だけは作ることができません。