樹木の復元
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「依頼したあの青年が帰ってこない。」
「もしかして、聖霊獣にやられたのか。」
「だとしたら、聖霊獣を倒しに行かなければならない。
奴を倒すには正攻法ではダメだ。
水の聖霊獣は水がなくては存在することができない。
あの村には、川が流れている。
川をせき止めれば、聖霊獣は消滅する。」
「だが、それをすると村人に危害が及ぶ。」
「知ったことか、聖霊獣がいるのに村人がいるわけないだろ。」
「承知した。保守協会の名にかけて、聖霊獣を消滅し世の中に安泰を。」
「ドクターちょっといいか。」
「どうしたアルス。」
「いい加減樹木を元に戻してくれよ。
いつまでも村長の家に居候しているわけには、いけない。」
「忘れていたよ。こっちでの生活が懐かしくてな。
樹木を元に戻すには、管理者権限が必要だ。
D^2デバイスを返してくれ。」
D^2デバイスを返した。
「では、元に戻すとするか。
樹木は生きている。
急激な変化をさせると、朽ち果ててしまう。
前回の変化から数週間がたった。
時間はおいたから大丈夫だろう。」
樹木の前
「アルスせっかくだから一緒に元に戻そう。手を繋ごう。」
「男同士で手を繋ぐのか。」
「久しぶりの唯一の家族からの頼み事だ。」
「仕方がないなー。」
「本当は、MPが足りないからなんだけどな。」
「MPってなんだ。いろんな人から聞く言葉だが。」
「MPというのは、様々な生命体が持ってる未知の力だ。
MPが少なくなると、生存本能が働くか気を失うか正気ではいられなくなる。
決して、魔力の事ではない。
話はこれぐらいにして、始めようか。」
ドクターと手を繋いだ。
「幾億もの歳月を共に過ごした樹木よ、今あなたをあるべき姿に戻す。」
ドクターから合図が送られた。
「真実の名の下に。」
樹木からすごい音が聞こえた。
いや樹木からではない。
大地から音が聞こえる。
ゴゴゴ
パキパキパキ
地中から大きな根が飛び出してきた。
その根は樹木を何周も蔓が伸びるように巻きついた。
その姿は、生きているようだった。
「アルスこの樹木の中は時間の流れが違うことを知っているか?
樹木の枝で箱を作ると、中に入るものが痛まない。
枝を隙間なく噛み合わせると、どのようなものでも、後世に残せるタイムカプセルというものが作れる。
昔はタイムカプセルを作る事を生業としてきたが、保守協会の連中が村を変えてしまってから作り出すことが出来なくなった。
現存しているタイムカプセルは、練習場にある衣装棚だけだ。
自分なりに、再現してた物は2つ。
樹木の中と侵入者対策の家どちらも、時間を止めることが出来なかった。
樹木の祠もタイムカプセルの一つだ。
あれは普通の物じゃない。
夢世界で作られたものだ。
実際のところ、全て祠のレプリカなんだ。
祠の中には鍵が入っている。
鍵を手に入れたら、それを持ってきてくれ。一族の秘密を教える。
ヒントは、リンゴだ。
祠の近くにだけ、リンゴがなる。
もうすぐ樹木の形状が元に戻る。」
根に段差ができて階段となり、樹木にくぼみが現れた。
「上の部屋にいるから、何かあったらポーチに入っている機械を使ってくれ。」
「ドクターちょっといいか。」
「どうした?」
「何で、この階段は樹木を囲う螺旋階段なんだ?
樹木と別につくったほうが移動距離がかなり減るのに。」
「それは、あの根が階段以外の役目を担っているからだ。
樹木の中にいると、外の情報が分からない。
あれは情報を知るためのアンテナだ。
アンテナで受信した情報はこのD^2デバイスで確認できる。」
ディスプレイには村に根をはやしている樹木の情報が記されていた。
「昔の5km外の情報ならわかる。
侵入者もこれで探知した。」
「植物と機械を融合させるなんて、頭おかしいんじゃないか。」
「発明というものは作られてすぐ受け入れられるものじゃない。
時間をかけて、浸透していくものなんだ。」
「作ったと言っても、数十年前何だろ。」
「勿論、本来なら死にかけの老人だ。
もうこんな時間か、上に戻る。」
ドクターは家に帰った。
自宅
「久しぶりの我が家だ。
ゲーム機で遊んで居たときのままだ。
友人たちの帰った後、1人で部屋の掃除をするのは今も昔も切ないのだろう。」
ゲームも見て、あることを思い出した。
「俺まだゲームマスターをやってない。」
次話は、敵が村に何かをしている時なのにのんきにゲームをします。
アルスのわがままで。