侵入者
「ここが、忌まわしいハテノ村か、村を囲むように壁がそびえ立っている。
昔本で読んだベルリンの壁または万里の長城のようだ。」
私の名前はハック・イノセント。
保守協会から視察に来た。
昨日本部の計測器に揺れが生じた。
聖霊獣が復活したためだ。
もし、聖霊獣が暴れて村人が居なくなったら本部に報告しなくてはならない。
元々いない場合も同じだ。
この村には貴重な資源や、記録が大量にある。
誰もいないのであれば使わせてもらう。
幸いにも、村には壁がある。
聖霊獣も外には出てきまい。
前置きは、ここまでにして村に入ろう。
大きな門があった。
「鍵が掛かっている。鍵の種類は、ICロックだ。よくもまあ残っている物だ。一番故障してほしくないものだ。
カードはない。
壁を登るか。」
頑丈な壁だ、傷1つつかない。
待てよ、この壁には植物がまとわりついている。引っ張っても切れない。」
私は壁を登った。
ゴーンゴーンゴーン
大きな音が鳴り響いた。
「あの村だからと甘くみていた。
セキュリティーまでついているとは、だがちょうどいいこれで村人がくるはずだ。」
目の前には森と荒廃した村の残骸があった。
「恐らく、ここには誰も住んでいない。デコイだ。ここまでして隠したいことがあるのなら解き明かさない訳にはいかない。」
住居の様子を見た。
中には生活感がなかった。
そして光が差す方向とは逆に窓がついていた。
「窓が不自然な向きを向いている。
全て、壁の方を向いている。
なるほど、侵入者排除の為の家なのか。
だれもいないのなら意味がない。」
1つの家の煙突から煙が出ていることに気がついた。
ふと、自然に体がその家の方に向いた。
「この家なら村人がいるかもしれない。」
家入ると、本が一冊おいてあった。
内容は、ハテノ村にようこそ。客人ならご自由に家をお使いください。
しばらくはこの家を拠点にしよう。
次のページには、まもなく使いの者が来ます。
「来るわけがない。」
コンコンコン
ドアから音が鳴った。
「いまのは嘘だ。」
ドアが開いた。
「これはこれはお客さんではないか、クリス。」
「何年ぶりだろうね、アル。」
「はじめまして、私が当ペンションのオーナーのアルと申します。」
「私が料理担当のクリスと申します。以後お見知り置きを。」
2人組に挨拶をされた。
「こちらこそはじめまして、ハックと言います。この村に観光に来ました。」
誤魔化す為にこう言った。
「このような寂れた村には、見るものなどがあるとは思えないと思いますが。」
ここで下手なこと言えば、何が起きるか分からない。
「都会から来た者としては、こういったありのままの自然と共存している事を見るのが楽しいです。」
「では、当ペンションは料金先払い式となっておりますがこの村には貨幣制度がありません。
なので、所持品の1つをしばらくの間預からさせてもらいます。
勿論、預かり品には傷一つもつけません。」
所持品を渡せだと、仕方がない鞄の中のロープを取り出した。
「これでいいか?」
「はい、大丈夫です。」
男は、ロープを女に渡した。
「これを()に置いておいてくれ。」
「それでいいの?」
「大丈夫だ。」
何か隠れるように会話をしていた。
「ハック様外が暗くなってきましたので、観光は明日なさった方がいいと思います。」
このペンションに入ったときは、まだ昼頃だったはずだが、太陽が見つからなかった。
「そんなにいたはずがない。」
「おそらくそれは、時差ボケでしょう。こんな辺境では体感時間が違うのだと思います。」
言いくるめられたような気がした。
「上の階のお部屋をお使いください。
あと深夜の徘徊はおやめください。
私は明日の朝食の食材を探してまいります。」
男は部屋を出た。
次は視点が戻ります。