時空の飛脚
あれからなんとか遺跡にたどり着こうと色々調べてみたが、今だに道が見つからずにいる。
「場所が分かっているのにたどり着く手段が見つからないとはもどかしいものだな」
「あんたがアランの息子か?」
謎の声が背後から聞こえる。振り返ってみるとそこには見たことのないおっさんがたたずんでいた。
「誰だ?」
「わしの事を知りたいのか?知らないのも無理はない。
わしの名は飛雄。出身はCの世界。年齢は45歳。趣味は、異次元の文献の解読。職業は運送業を営んでいる。商号は時空の飛脚。
早速だが、アランからこれを渡すように頼まれた。受け取ってくれ」
飛雄と名乗るおっさんは自身の背負うリュックから見覚えのある黒い塊を取り出した。そして、ポケットから端末を取り出し操作すると、パカッと塊が開き何かが見えた。
「これはあれだよな?」
「見てわかるようにそいつはD^2デバイスだ。とりあえず起動してみな」
アランが操作するとこは何度も見たことがあるが、実際に触ってみたことは一度もない。うろ覚えの知識が合っていることを願いながら側面のボタンを押してみた。
「(汎用型OS LINNE起動中です。
起動しました。ユーザー認証を開始します。
画面に指をのせてください)」
恐る恐る指をのせた。
「(認証中です。指を動かさないでください。
認証成功しました。
こんにちは、私はアランの記憶情報から産み出された人工知能 LINNEです。以後お見知りおきをお願いします。
私の全機能を紹介するのには途方のない時間がかかってしまいますので、今現状で必要になる最低限の機能の紹介をさせていただきます。
機能その1 "特異能力の拡張"
アルスが今まで見たことのある限りですと、ハックが初めてハテノ村に訪れた時に、ロープからハックの個人情報を表示させたのがこの機能です。
機能その2 "時空間座標の計測"
この機能は、当端末が開発される際に元になった機械式時計であるクロノクロック final edition"dimension driver"にも搭載されていた機能で、この機能は危険性を秘めている為修正版には搭載されていない機能です。詳しく知りたい場合はクロノクロック社リコール騒動を参照してください。
機能その3 "転移"
この機能だけでは説明できない箇所があったため先程別機能を紹介しました。
時空座標を入力しますと転移ができます。アルスが使える転移能力とは異なり、実際に行ったことがない場所でも、転移する事ができます。
しかし、時空座標は1ピコセコンド毎に変化しており、調べた数値の有効期限は同じく1ピコセコンドしかありません。
なので、調べた時空間座標から"16次元方程式"を導きだした式を直接打ち込むこともできます)」
専門用語が多く殆ど理解出来ていないが、少なくとも、場所の座標だけは知っているのでこれで遺跡にたどり着く事ができる。
「説明が終わったようだから早く受け取ってくれ」
箱からデバイスを取り出して唱えた。
「転移 時空座標は脳内参照」
「(エラー、転移できません)」
「あれ、何が間違っていたのか?」
「安全装置が働いたんだ。お前さん転移先の状況わかっているか? 例えば、そこに地面があるとか、何かしらの物がおいてあったりすると、間違いなく人は死ぬ。
だからポータルと呼ばれる安全地帯を作るのだが、今回は特別だ。それも用意してやろう」
飛雄はリュックから幾つかの鉄の管と部品を取り出した。
「それはなんだ」
「こいつは、ポータルジェネレータと言って、名前の通りポータルを作る装置だ。組み立て終わるまで待て」
パーツを組み合わせるとライフルのような形状の装置が完成した。
「危ないからわしの背中の後ろにまわれ」
俺が飛雄の背中に隠れると、即座に引き金を引いた。
何かが発射されたようだが、土壁には穴が空いていない。
「これでポータルは完成した。仕事が押しているからわしにできるのはここまでだ」