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平安京エイリアン!

今日は、待ちに待った、平安京イベントの1日目だ。


連れて行く配下は、相馬と八野。今回、元太は留守番に残した。

八野は『狩人』のスキルもあるし、武力もそこそこあるので潰しが効く。

相馬の知力は、罠や不意の状況変化を見極めるのに必要だ。

それに、どうせ俺がいると戦力不足は否めないので、いっそ戦闘を捨てたのだ。

ん?俺が留守番ってのが一番いいような気がしてきたぞ……


持ち物を再確認。

まず、武器だ。投網と補修用の麻糸をたくさん。

いちおう、刀と砥石も持っていく。

そして、簡単な調理道具一式。

イベント中は、アユ食べ放題に期待する。現実世界では高いんだよ。

調理スキルは無いけど、塩焼きくらいなら何とかなるだろ。

RPGなら、ポーションとかの治療薬があるんだろうけど、SLGではそんなもん無い。

HPという数字はあるけど、生命力というより、体力の意味合いが強い。

食事してゆっくり休めば治るんだ。


イベント開始まで、あと小一時間。

しばらく帰ってこれないので、施設建設には長めのものをセット。

そのちゃんと別れの挨拶。体に気を付けるんだよ。

領地に病院がある ってのは心強いな。

元太に後を頼み、いざ出陣。

転移札を使って、鴨川の橋の上に転移。

待ってろ、アユども。イベントが始まり次第、俺が食ってやる。

決意を新たに、平安京エリアに入った。



超、混んでる…………

「すみませーん、混んでるんで、どんどん前に詰めて~」

エリアシャウトが聞こえてくる。満員電車みたいだな。


【予定時刻になりました。イベントを開始します】

【1分後に、イベントエリアに転送します】

システムメッセージが流れたあと、きっかり1分後、転送特有の浮遊感に襲われる。


【第1467サーバ 平安京エリア】

イベントでの混雑を避けるため、イベントエリアはたくさん用意されている。

その中のひとつに、プレイヤは、ランダム分配される。

1エリアにつき、数百人程度の割合なので、いきなり閑散とした感じだ。


ピーンポン

佐野からのコール。

「佐久間~。何サーバだった?」

「1467」

「俺は1329だった。お互いがんばろうな」

「おう」


【催しの説明をします】

【突如飛来した宇宙人により、平安京は現実と切り離された異世界になった!

異世界から帰還するため、過去の陰陽師が遺した風水陣を復元しろ!】

【平安京の各所に、帰還用のからくりを用意いたしました。

豪族の皆様は、平安京で自給生活をしながら、元の世界に帰還する方法を模索してください】

【早く帰還されたサーバの皆様には豪華な賞品をご用意しております】

【なお、このイベント間に限り、配下武将のPT参加数を最大5名とします】


「1467部隊、頑張るぞ!」

「おー!」「よろ!」「乙~」

ときの声ならぬ、エリアシャウトがあちらこちらから聞こえる。

1467?そういえば、応仁の乱じゃねぇか。場所も平安京だし、幸先悪いなぁ。


周りのプレイヤー達は、早速どこかに行く人や、地図を広げて考え込んでいるやつもいる。

あたりかまわず、PTの誘いをしているやつもいる。


まぁ、まずは、現状把握だ。

イベント開始時に配られた地図を取り出す。

平安京は碁盤目状に道が通っているからわかりやすい。

「平安京で、風水陣かぁ。相馬、何かわからんか?」

「陣というなら、普通は五芒星ですね。寺とか、神社とかを繋いだ」


ブラウザを呼び出して、風水陣の画像を探す。その図を平安京の地図に重ねてみる。

あまりいい感じにマッチしなかったが、そろそろ動くか。

「よし、アユ食いに行こう」

「おしゃ~行きましょう。お館さま」頭脳労働に飽きていた八郎が喜ぶ。

都を歩くと、予想はしていたが、店売りNPCが消えている。

システムメッセージでは、宇宙人とか、陰陽師とか怪しげなことを言っていたが、

本質はクローズドエリアでのサバイバルとみた。

食料は自給しなければならない。となると行くのは桂川だ。


交差点を曲がると、そこには体高1mほどの大イノシシがいた。

「お館さま、お先!」八野が逃げだした。

あわてて、俺と相馬も八野を追いかける。

そして、イノシシも俺たちを追いかける。

直線ではイノシシが速いが、曲がり角を利用して引き離し、また直線で追いつかれる繰り返し。

「八野、おまえ狩人あがりだろ!なんとかしろ~」

「無理ッスよ~。あんなデカいイノシシ」

まぁ、それなりにデカイ。

「よし、次の角を曲がった後、散開するぞ!」「おう!」「了解」


次の角を曲がると、そこで誰かが穴を掘っていた。

「そこを、どけ~~~~~」「うわぁぁ~~」

とっさに跳躍し、穴を飛び越す。だが、イノシシは穴に蹴躓いて転倒し派手に転がる。

「いくぞ、八野!」「承知!」

『投網』*2。イノシシは動きを封じられた後、八野の弓でとどめを刺された。

イノシシが倒れると、アイテム「大きなイノシシの肉」*2と「イノシシの剛毛」が残る。

「大物っスね。さっそく郊外に持って行って焼きますか」

「その前に、アイツ、介抱しとこう」

俺が指差す先には、イノシシの突進に巻き込まれた穴掘り侍が転がっていた。


「酷い目にあったでござる」

「いやぁ、すまない。イノシシに絡まれちゃってな」

「いやいや、自然の摂理ならしょうがないでござる」

こいつはNPCだ。イベント用のキャラなのかな。筋肉ムキムキの大男。

土まみれの直垂と鳥烏帽子姿が、あまり似あっていない。

こっそりステータスを確認。

『武:80超 知:60超 政:20超 魅:20超 技:20超』

「何で穴を掘ってたんだ?」

「えいりあんを埋めるためでござるよ。拙者、検非違使少志 中原忠右衛門と申す」

出る時代間違えてるな。

時代はもう、戦国時代(バーチャル・リアリティ)だ。平安時代(マイコン)はとっくに過去だよ。

「俺は、佐久間織部祐。こっちは、配下の、相馬と八野。

じゃ、俺たち急ぐから。イノシシ食べたいし」

「待たれよ!拙者にもイノシシの分け前はあってしかるべき と愚考するが、いかが?」

ぐぅぅ~と、彼の腹の音が鳴った。

「わかった、わかった。じゃ、イノシシ肉を運ぶのを手伝ってくれ」


八野と中原にイノシシを運ばせ、平安京の郊外に出る。

取り出すのは、調理器具から「鍋」。

そして、先日作った「栗味噌」を入れる。ぼたん鍋にするのだ。

「拙者、葱を持っているでござるよ。これも入れましょう」

中原がどこからか葱を出す。

「よく持ってたな。よしよし」

八野が肉を薄切りにし、葱と一緒に入れていく。

ことことと程よく煮えて、うまそうな匂いが漂ってきた。

「いただきます」「馳走になるでござる」

ゲーム内とはいえ、VRは味覚も再現する。

味付けは味噌だけの素朴な味だが、青空の下、わいわい囲むと楽しい。

あれ、そういえばみんなAIだから、実は俺ボッチ?……考えないことにしよう。

「中原殿、どうして葱を持ち歩いておられたのか?」相馬が尋ねる。

たしかに、検非違使の標準装備の訳ないよな。

「あぁ、さっき埋めたえいりあんが、持っていたでござるよ」

ネギ好きなエイリアンなんて居るんだな。


飯を食ったところで、そろそろリアルの時間も遅くなってきたので、ログアウトした。

ログアウトしても、キャラは不自然で無いくらいに「なんかしてた」という設定になってるんだよな。

このゲーム。


寝る前に、ネットを覗くと、少しづつ、情報が上がってきていた。

特定の場所に行くと、魔法陣のようなものが見つかるらしい。

羅生門のそばで、朱雀が二重円の中に書かれた図柄が見つかったそうだ。

きっと他の3種もあるんだろうな。


次回「陰陽師 ~おんみょうじ~!」

平安京に記された魔法陣の謎を解け!


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