KIYOSU会議 壱の宴
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今日から一週間、「俺様の野望」システムのハードウェアメンテナンスが行われる。
VRは人間の意識を持っていくため、監査官立会いの下、細かなチェックを行うことが法令で定められている。
毎年恒例のハード総点検もその一つ。
電源設備から始まって、ネットワーク関連まで全て点検が行われるので、
しばらくの間、ゲームが完全停止しAIたちは時間を停止される。
だが、そんなことでゲーム会社は止まらない。
予備の設備を使用して、臨時イベントが行われる。
それが「KIYOSU会議」
現実の清州会議は、織田家宿老による合議で織田家の行く末が話し合われた。
だが、ここは仮想のエンターテイメント世界。
どうなるのが面白いかは、プレイヤが決める。
本能寺イベントの終了後、イベントに参加したプレイヤには、織田家に関するアンケートが配布された。
その集計結果によって、織田家の行く末が決まる。
ここ数日間は、メンテ中にログインしたユーザは特設エリアにだけ入れる。
そこは、清州城を模した場所。
各所に巨大なディスプレイが設置され、今は何も映っていないが、会議の様子が映し出される。
プレイヤが集うこの機会に、スポンサー契約している各企業も「試食品」展開に余念が無い。
名古屋名物みそかつが、あげたてで無料配布される。
KIYOSU会議の内容は、動画サイトにも生放送でアップされ、ゲームの宣伝にもなる。
そして、開催時間が迫ると城の各所のディスプレイが点灯し、カウントダウンが行われた。
■CM
カウントダウンが終わった時、画面では二人の男が相対していた。
そこは、広大な板敷の場所。
周囲は閉め切られた障子で覆われている。
第一回目公式イベント「永禄の変」での、足利義輝とほえもんさんの一騎打ちシーンだ。
足利義輝は、このゲームの著名NPCの例にもれず、有名俳優を起用して表情や動作のキャプチャーがされている。
ほえもんさんも30前半の武術家らしい引きしまった体つきのイケメン。
その2人の剣戟は、大河ドラマにも引けを取らない。
画面の中では、息つく暇も無い激戦が繰り広げられる。
撃ち合う刀が火花を散らし、観客は手に汗を握る。
そして、激戦は終わった。
将軍は刀を腕で強引に受け止めているが、将軍の刀はほえもんさんの腹を貫いている。
ほえもんさんの体が崩れ落ちた。
将軍足利義輝がゆっくりと画面を向いて、大音声で叫ぶ。
「かかってこい!」
彼が、見えを切ったところで「俺様の野望」のタイトルが表示され、CMが終わった。




