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戦国時代風VRMMOSLG 「俺様の野望」!!  作者: めへめへさん
公式イベント 「歴史の変わる日」
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歴史の変わる日 黄昏時

「本能寺の変」イベントも、早4日目。


そろそろ中だるみがしてくる頃だ。

今までの家探しの成果として、金3枚、銀8000枚、業物文化財(茶器)をいくつか手に入れた。

茶器は、配下武将に与えると、忠誠を上げることのできるアイテムである。

この手のアイテムはいくらあっても足りなくなるので、きちんと売らずに確保している。

配下の兵士たちは、増えたり手に入れたりの繰り返しで、今は50人程度。

流石に全員率いていると邪魔なので、大半の兵士は「待機所」で待機中。

疲労した兵士と元気な兵士と入れ替わらせて、家探しを続ける毎日。

もはや、引っ越し業者と化している気がしないでも無い。



「今日はどうすっかなぁ~」

「大将、今度は大物の屋敷に行きましょうよ」

「いえいえ、大物公家の屋敷は、既に野盗が入り込んでいます。

逆に、まだ手の付けられていない所が良いかと」

どう見ても、俺たちの方が野盗団だ。

そんな俺たちとは関係なく、本能寺ではプレイヤ達と明智勢の激戦が行われている。

明智勢の武将を倒すと、信長等の武将に会えるイベントの「鍵」が出ることは確認された。

一般兵士でも稀に落とす。

眼を血走らせたファンとゲーマーの前に、明智勢の兵士たちはPOPしたそばから狩られている。

まるで、落ち武者狩りの如くに無数のプレイヤに囲まれ、

全身に刀や槍を刺されて倒れる明智兵。

取った取られたの絶叫がうっとうしい。


コール音がして、鷹目からの連絡が入る。

「佐久間、佐久間、イベントバトルしない?」

「俺は、武力に振って無いぞ」

鷹目の説明によると、妙覚寺から狙撃で敵を倒しまくっていたところ、「鍵」を手に入れたらしい。

「鍵」にはいくつか種類があり、鷹目の手に入れた鍵は多対多バトルエリアへの入場用。

プレイヤは、3名までが参加可能。それに伴って、配下武将も合計9人まで参加できる。

そして、このバトルの特色が、配下兵士の上限が無いこと。

とはいえ、平安京外部から兵士を連れ込めないので、兵士はスキル『勧誘』などで現地調達するしかない。

試しに入ってみた人の報告では、拠点防衛型のイベントバトルであったが、

多数のモブ兵士が突撃してきて、配下武将含め数人だけでは支えきれず、防衛戦を突破されたそうだ。

魅力極の俺向きともいえるイベントバトルである。

「それなら行ってみるか。あともう一人は波野か?」

「愛香は今日はお休み。

代わりに、本能寺に佐野が居たから、狙撃しておいたよ」

「……(狙撃?)わかった。今から妙覚寺に行く」

待機所に居るすべての兵士を率いて、妙覚寺まで行った。

そこには、佐野と鷹目が既に待っていた。

彼らは、背後に控える兵士50人に目を丸くする。

「すげぇな、流石は魅力極」

「確認しておくけど、鍵の所有権は愛香にもあるから、

バトル報酬を彼女にも分けていい?」

「良いぞ。参加できるだけでも御の字だ」

イベントバトルに参加すると、働きによって、AI武将の覚えが良くなる。

そして、最終的なイベント報酬につながる。

「じゃ、作戦だな」

こういうときは、バトル経験の多い佐野や鷹目がうまく仕切る。

佐野が前線に立ち、鷹目は、積極的に敵の武将を倒す。

俺は兵士を指揮して、周囲の防衛網の構築。

そういった手筈が決めてから、イベントバトル空間へと転移した。



空は黒々とした雲が渦を巻き、まるで異空間のような世界。

場所は二条城。

破壊された表門の前に、俺たちは転移された。

背後に織田信忠が現れる。

「ここを死地と心得よ!一兵たりとも明智勢を通すな!」

その言葉が消えないうちに、道の彼方に明智桔梗を掲げた無数の兵士たちが出現する。

【二条城を死守せよ! 制限時間 30:00】

「いくぞっ!」「おう!」

佐野の雄たけびを合図に、戦闘が始まった。


このゲームでは、プレイヤや武将には士気というパラメタは存在しない。

その代り、スタミナという要素があり、スタミナを削る「疲労ダメージ」がある。

近接戦闘のような、激しい行動を続けると疲労が蓄積していき、疲弊(能力値半減)、疲労困憊(能力値十分の一)といった具合にペナルティを受ける。

今回のように幾重にも敵兵に囲まれた乱戦だと、10分程度で疲弊に入る。

武力極であっても、数の暴力の前には、無敵というわけではないのだ。

ファンタジー世界では無いので、

ポーション飲んだらスタミナ回復 なんて事は無い。


戦闘から離れ、水を飲む、休憩するなどの行為で、スタミナはゆっくりと回復する。

そのため、長期戦闘では、如何にしてスタミナを「回す」かが、武力極の腕の見せ所になる。


一方で、遠隔戦を行う技術極。

こちらは、攻撃一辺倒ということもあって、スタミナの減少は少ない。

だが、銃器の過熱による精度低下や、暴発率増加、残弾の把握に加え、乱戦に打ち込む場合の誤射といった、いくつもの要素が絡み合う。

時代背景上、速射の効く近代兵器では無いので、一発一発が貴重であり、的確に武将を撃ち抜くことが要求される。



佐野は、武力極の配下武将を2人連れた3人体制。

2人が戦闘し、1人が休憩する スタンダードスタイルで戦闘を行う。

武力系スキル『名乗り』で敵兵のターゲットを自分に集め、兵士を一体一体、確実に落としていく。

数分ごとに、タイミング良く休憩していた武将がカバーに入り、一人が下がって休憩を始める。

休憩に入った佐野は、「暑い暑い」と笑いながら、兜を脱いで水筒の水を飲み始めた。

こうしてみると、自分の配下を信頼している、度量のある大将に見える。


鷹目の方は、配下武将2人に銃の弾こめをさせていた。

彼女は次々と渡される銃を構えると、間髪いれずに射撃する。

銃声が響くと、敵陣で鎧首の武者が倒れる。

どういう弾道を描いているのか、敵味方の兵が入り組んでいる肉壁の向こうを狙撃している。

敵兵は、兜首が倒れるとしばらく動揺状態になるようで、前線に立つ佐野達が一息つける。


うちの相馬は兵士たちを率いて、防衛網の構築。

相馬のスキル『陣形』で防御陣を構築し、兵士を防御に専念させる。

佐野たちが取りこぼした兵士をここで押しとどめている。

俺と八野は『投網』スキルを使って、苦戦している所や防衛網を突破した兵士対策。

一般兵の武力は10前後。

武力40の俺でも、取りこぼしの1人2人くらいなら排除できる。



「あと10分!」

戦い始めて20分が経過したところで、佐野のほえ声が聞えた。

順調ではあるが、長く激戦を繰り広げているうちに配下兵士の肉壁も崩れてきた。

倒し切れない敵兵がだんだんと溜まっていく。

そのとき、敵陣に派手な兜を被り、朱槍を持った騎馬武者が現れた。

そいつは、朱槍を大きく振り回したかと思うと、大声で名乗りを上げる。

「我こそは、ぶへっ」

だが、最後まで言わないうちに、鷹目に眉間を撃ち抜かれて落馬した。

「佐久間、お願い!」「頼むぜ」

鷹目と佐野が叫ぶ。

言われなくても、そんなチャンスは逃さない。

俺は動揺状態で動きを止めた敵兵にむけて『勧誘』スキルを使用。

目の前にいる100人程度の敵兵のうち、半数が寝返った。

そして、『鼓舞』。

寝返ったばかりの元明智兵は、活気づいて槍の方向を変え、以前の味方に襲いかかっていく。

疲れ果てていた配下兵士たちも生気を取り戻す。

「ここが踏ん張りどころだ!」

「わかった」

鷹目も、加熱しきった銃器を捨てて予備武器の弓に持ち替え、前線に走り出てくる。

俺もめったに使わない刀を抜いて突撃していく。


勢いに任せて明智勢を押し、二条城門前の橋から排除した時、システムメッセージが流れた。

【イベントバトル 残り3分です。斎藤利三が現れました!】

敵陣の中央に、大鎧で全身を包んだ武者が現れる。

「げっ、ここで名前付きの武将が出るか!?」

既に、佐野と配下武将は疲労ダメージの蓄積で疲弊状態。

なんとか数合は持ちこたえたものの、敵将に倒されていく。

プレイヤや配下武将は倒されると、イベントバトルエリアから排除されてしまう。

「すまん、後は頼む」

佐野は最後の言葉を残すと姿が薄れていき、消えた。

斎藤利三の隙を見て、八野が『投網』をかける。

だが、投網は弱体化されたことによって、多少のペナルティを与えるに過ぎない。

八野は利三となんとか切り結ぶが、徐々に押されていく。

「兵士たち、援護だ!」

一般兵を援護に向かわせるが、所詮は武力10の雑魚。

利三の槍の前に、次々とやられていく。


鷹目が弓矢を放つが、彼女のスキルの大半は銃器専用。

弓矢には適用されない。

能力値頼みの力無い矢は、利三に斬り落とされる。

そこに、相馬が何かを持って走ってきた。

「鷹目様!」

相馬が、装填準備された火縄銃を鷹目に渡す。

失念していたが、相馬もスキル『銃器取扱』があるので、銃の所持や運用が出来た。

「任せなさい!」

鷹目が弓を放り出して、相馬の投げた銃を受け取り、くるりと一回転する。

そのまま大鎧の武者に狙いを定め、引き金を引いた。

銃弾は、真っ直ぐに大鎧のど真ん中を撃ち抜き、彼を地面に引き倒す。

その時、システムメッセージが流れる。

【おめでとうございます。イベントバトル勝利です!】


いつの間にか、背後に織田信忠が現れ、俺たちに賛辞をくれる。

「汝らの働き、見事なり!褒美を遣わす」

その言葉が終わった時、俺たちはイベントバトルエリアから追い出された。



「おかえり~。どうだった?」

佐野が、肩で息をしながら迎えてくれる。

その問いに答える前に、俺たちの目の前に、報酬の大きなつづらが現れた。

俺たちは、無言でニヤリと笑いあう。

「さ~て、お宝はっと」

鷹目がつづらのふたに手をかける。

「これ、小さなつづらが中にあるとか言わないよな」

佐野の心配をよそに、つづらの中には、いくつものアイテムが入っていた。


・業物「当世具足一式」

・レシピ「備前長船一門銘刀目録」

・業物「二連装銃」

・金30枚

・銀5万枚

・称号「二条城の守護神」


破格の報酬に、俺たちは、しばらく笑いが止まらなかった。

「じゃ、レシピを波野に渡して、俺が金を多めにもらっていいかな?」

「良い良い」

鷹目は、この時代には珍しい連装銃を手に持ってご満悦。

「似合うか?」

佐野は早速、具足の兜をかぶっている。

銀は、武器弾薬の補修や補充としての実費分を除いた後に等分した。


今回、信忠くんに接触できた。

これだけ難易度が高いイベントバトルだと、十分好感度が得られたはずだ。

心地よい疲労感に包まれながら、ログアウトした。



次回は、イベント最終回です。


ランカーの野望、動く。

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