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戦国時代風VRMMOSLG 「俺様の野望」!!  作者: めへめへさん
公式イベント 「歴史の変わる日」
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歴史の変わる前夜祭

前回の鬼が島イベントから3か月が経過した。

久しぶりの公式イベントが行われる。


題して「歴史の変わる日」。

日本人ならば、誰もが知る歴史的事件「本能寺の変」をモチーフとしている。

この事件は、1582年に発生している。

現在のステージである、1570年代の事件では無い。

βテスターを多く擁し、ゲーム進行の先頭を駆け抜ける第一サーバでも、まだ先に行われる予定であった。

だが、第一サーバでは、運営の予想以上に織田家が強くなりすぎてしまった。

そのため、前倒しでイベントが行われることになったのだ。

恒例の、公式イベント後のバージョンアップについての内容が発表される。

細かなバランス調整は毎度のこととして、大きいところでは3点あった。


一つ目は、大名家へのテコ入れ。

大名家ごとの固有技能が実装される。

武田家には『風林火山』、伊達家は『飛竜』。

他にも『三矢訓』『捨がまり』『毘沙門天』他、

スキル名しか公開されていないが、中二心をくすぐる要素が盛りだくさん。

取得条件さえ満たせば、プレイヤが覚えることも出来るらしい。


二つ目は、引っ越しの解禁。

個人領地の出入り口を、別の場所に移動させることができるようになった。

フリーエリアに領地を確保しているプレイヤが増えてきたこともあり、

場所によっては動きにくい情勢にある。

そのための救済策でもある。


三つ目は、鉱山。

各国に、高純度の鉱石が取れやすくなる「上級鉱山」が見つかるようになる。

生産プレイヤたちは、何処に引っ越そうか、悩んでいるらしい。



一方で、公式イベント関連。

公開された情報によると、平安京に明智光秀の部隊が攻め込んだ所からイベントが始まる。

関連する武将は、織田信長、織田信忠を始めとする織田家の諸将。

無事に平安京を脱出させることができれば、働きに応じた報酬がもらえる。

もちろん、場合によっては配下や客将になってくれるというのだ。

逆に、織田家の武将を倒して明智方に引き渡しても良い。

織田VS明智の下剋上に参加できるのだ。

この平安京での戦闘の結果によって、これから先の歴史が変わる。

さらに、今回の平安京は、二条城、本能寺を始め、全ての家屋や建造物が「城郭」としてカウントされる。

そのため、知力系武将の持つ「籠城戦」「攻城戦」系の策や罠が解禁される。

上月城でぽえるがやらかした、派手な火攻めが使えるわけだ。

武力極の武将と言えど、罠に連続でかかれば、命が危ない。

帝をはじめとする非戦闘員は既に平安京から退去した という設定なので、建造物破壊に遠慮をする必要は無い。

兵士は『勧誘』や「雇用」で、平安京に侵入した山賊海賊野盗から現地調達することになる。


そして今回から、戦闘重視に割り振っていないプレイヤ向けに、他の遊び方も用意されている。

そのうちの一つが、退去した人々が残した名品珍品を「保護」する仕事。

速い話、家探ししてお宝を略奪するのだが、某ゲームの「卵運び」と同じように、お宝を壊れないよう運ぶ必要がある。

お宝は、発見当初はアイテム袋に入れる事の出来ない嵩張るガラクタだが、平安京の各所に配置された「文化財保存会」が鑑定して使用可能にしてくれる。

運が良ければ、国宝級の業物が手に入るし、不要なものは「文化保存会」が買い取ってくれる。

どういう理屈なのか、「政治」極だと、お宝の事前鑑定ができるので無駄足を踏まずに済むそうだ。


ちなみに、俺の次の「狙い」は、織田信忠。

本能寺の変で、父親とともに死んだ悲劇の御曹司。

本能寺の変に備えて、平安京の下見に来ていた。


言うまでもないことだが、事件の舞台は京都の、平安京。

その中心部にある、本能寺から事件が始まる(予定)。

平安京は碁盤目 とは表向きの話で、実際は細道が入り組んでいる。

土地勘をつけるために、平安京のそこかしこを歩き回る。

同じ考えの人が居るのか、いつにも増して平安京は混雑していた。


せっかく平安京に来たので、手土産をもって、そのちゃんの親父殿、野々村卿に会いにいく。

ほぼ一国の主となったので、もう一声、箔をつけようという下心もあったり。

運悪く、彼は留守にしていたが、家宰から気になる事を聞いた。

ランカープレイヤの一人「楠木難波介」が、最近、公卿に対し、半ば強引な取り込み工作を行っているそうだ。

彼は野々村卿のところにも大枚の「金」を侍参して来たらしい。

SLGで天皇だの帝に金をまくのは良くあること とすぐに忘れることにした。


マップに目星かわりのしるしをつけながらぷらぷらと歩いていると、佐野からコールがかかってきた。

「お~い、佐久間、ヒマか?」

「ヒマだぞ」

「ちょっと、相談に乗ってくれ」

いつも能天気な佐野が相談とは珍しい。

俺は平安京の探索を切り上げて、佐野の領地に転移した。


佐野の領地は、攻撃特化。

良馬を算出する上級馬場や、兵士維持のための侍所、長屋などの施設が立ち並ぶ。

だが、その一部が無残にも破壊されていた。

「よう、佐久間」

佐野が暗い顔で迎えてくれる。

「攻め込まれたか~」

「あぁ、負けちまったよ」

このゲームでは、最大にまで拡張した領地は、他者に攻め込まれることがある。

とはいえ、攻め込まれて、ある程度以上の数の施設が破壊されると、フリーエリアと自領地を繋ぐ道が切れるので、一時的な保護期間を得られる。

佐野の領地は、そんな状態になっていた。

「ここの地域、思ってたよりもプレイヤ同士の小競り合いが酷くてな~」

佐野の領地は飛騨の東側。

このあたりでは、武田、上杉、織田の武闘派3家が激しくやりあっている。

プレイヤも、その3家に別れて争いあっているらしい。

フリーエリア上の城は、取ったり取られたりの繰り返し。

「俺が所属してた連合がさぁ、内部分裂して壊れちゃったんだよ。

それで、どうしようか迷ってるんだ」

「じゃ、うちんとこ来てくれよ。

連合メンバが2人しか居ないのに、デカくなってきて困ってたんだ」

「おぉ、マジで!?こっちから頼もうと思ってたんだよ~。よろしくな」

「即戦力は大歓迎だ。引っ越し先は美作南部で頼む」

「わかったわかった」

早速、佐野から連合への入団申請が届き、即座に許可をする。

【佐野健介が、連合に入団を許可されました】

「あれ、佐野さん?」

ぽえるが、連合全体に流れたシステムメッセージに反応する。

確か、上月城のときに佐野とぽえるは会っているはず。

「よろしくな~。引っ越し出来るようになったら、美作に移るわ」

「やった!これで、もう宇喜多さんに頼らずに済むんですね。

本当にうれしいです」

心底うれしそうなぽえるの声が、連合チャットに流れる。

「いや、彼も、あれで悪い人じゃないんだよ?」

「悪人ですよ」「悪人だな」

俺の精いっぱいのフォローも、彼らに一蹴される。

「そういえば、『悪人』って大名スキルが出るみたいです。

何処の大名家かまでは知りませんけど」

トドメを刺すようなぽえるの情報に、佐野が可哀そうな子を見るような眼で、俺の方を見る。

「大名スキルって、プレイヤも取得できたよな」

脳裏に浮かぶのは、宇喜多直家の極道さんな笑い顔。

まだ1歳の娘が、彼になついているのが理解できない。

スキル名からして、後ろ暗い交渉事や、放火や暗殺といったえげつない行為に対するボーナスなんだろうな……

「ま、まぁ、宇喜多家スキルって決まったわけじゃないし」

(彼以外にはありえない)

否定はしたものの、内心の声がいつまでも消えてくれないのであった。



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